「河伯洞」故郷と河童を愛した作家・火野葦平の旧居【北九州市若松区】 

(アイキャッチ画像:「河伯洞」書斎)

JR若松駅から徒歩約6分の場所にある「河伯洞」。

若松出身の芥川賞作家・火野葦平(本名:玉井勝則)が昭和15(1940)年からその生涯を終えた昭和35(1960)年までの大半を過ごした旧居です。

現在は市の指定文化財となっており、一般公開されています。

葦平の暮らしぶりを知ることができる

若松で石炭荷役業の玉井組を営む玉井金五郎と妻マンの長男として生まれた葦平。

この「河伯洞」は出征中の息子のためを思い、金五郎が葦平の「兵隊三部作」の印税を使い、建てたものなんだそう。

しかし葦平は、戦地での戦友達の苦労への思いから、後々もこのことを負担に感じていたといわれています。

庭園には葦平が朝夕語りかけたという河童の像も。ちなみにこの庭園で葦平はある大型動物を飼っていたそう。答えは河伯洞で確認してくださいね。

座敷からは、多くの友人や文学仲間を招き、賑やかな新年宴会を開くなどしていた葦平の暮らしぶりを垣間みることができます。

2階には書斎が復元されています。ここで『花と龍』や『革命前後』、絶筆『真珠と蛮人』に至る様々な作品が生み出されました。

葦平は集中するために昼間でも部屋のカーテンを閉め、スタンドの明かりで執筆していたそう。昭和35(1960)年1月24日、この書斎で53歳の生涯を自ら閉じました。

河童が棲む家「河伯洞」

「河伯洞」の名前は河童の棲む家という意味。葦平は幼少期から父が話す河童伝説を聞いて育ったことから、無類の河童好きになったそう。「河伯洞」には河童の置物がたくさん飾られています。

スチルアート作家・中原弘さんによる河童モチーフの作品も展示されています。『花と龍』の一場面をモチーフにした作品「テング取り作業」では、石炭を積んだ小船を沖に停泊している艦船に近づけ、石炭を積み込む様子を河童で再現。

さらに『花と龍』にでてくる女組長ドテラ婆さんや『石と釘』のワンシーンも河童で再現されています。展示のほかにもいろんな場所に河童がいるので自分好みの河童を探してみるのも楽しいですね。

また葦平の甥でアフガニスタンで人道支援に尽くした中村哲さんを紹介する展示もあり、さまざまな視点から葦平の生涯を知ることができます。

今回案内してくれたのは河伯洞管理人の藤本久子さん。火野葦平作品を読んだことがない人にもわかりやすく説明してくれます。

「河伯洞」の詳細は北九州市ホームページで確認できます。

■住所/北九州市若松区白山1-16-18
■開館時間/10:00〜16:00
■休館日/月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌日が休館)、毎月第3木曜日、年末年始(12月25日から1月3日)、祝日の翌日(その日が土曜日、日曜日、祝日にあたる場合は開館し、直後の日(日曜日、月曜日、祝日を除く)
■料金/無料

※2023年9月28日現在の情報です

(北九州ノコト編集部)

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