平凡だと思っていた自分の人生にやってきたチャンス/シゲキチさん(リングアナウンサー)
2003年に旗揚げし、今年で20周年のメモリアルイヤーを迎えた社会人プロレス団体「がむしゃらプロレス」。
北九州ノコトで昨年3月から始まった選手のインタビュー企画も、おかげさまで2年目に突入することができました。
そんな記念すべき第6弾の今回は、初めて選手インタビューという垣根を越えて、がむしゃらプロレス専属リングアナウンサーのシゲキチさんの登場です!
始まりは地元の友達のがむしゃらプロレスデビュー
ーまず最初に、がむしゃらプロレスに出会ったきっかけ、そしてリングアナウンサーとして参加することになった経緯を教えてください。
私は北九州出身なんですけど、仕事の関係で10年くらい岡山に住んでたことがあって。その岡山時代に、突然古い友人から「俺プロレスデビューするから!」って連絡があったんですね。
もうその時点で意味が分からないじゃないですか。「俺プロレスラーになる!」って言い出す友達なんてそうそういないと思うんですよ。おかげで気になりすぎて、わざわざ岡山から北九州まで試合を見に行ったんです。
出会いは2004年、がむしゃらプロレス2年目のイベントでした。
ーシゲキチさん自身は元々プロレスに興味があったんですか?
特別好きとかではなかったんですが、私たちの子ども時代ってテレビをつけたらプロレスの試合が流れてたんですよ。ゴールデンタイムも当たり前にプロレスが流れてたから、好きでなくとも目に入るんです。
だからプロレスの試合を観るということに関しては抵抗がなかったし、当時のがむしゃらプロレスの試合も年に1、2回とかだったんで、岡山から通うのも苦ではなかったんですよね。
初めて見るプロレスは社会人と言えども、そこは生。すごい迫力でした。今のがむしゃらレジェンドレスラーの若かりし全盛期の時代ですからね。
それでいて中には技の完成度の低い、ゆるい試合もあったりして。
でもリング上ではみんな本当に楽しそうにしてるんです。プロレスの知識がない私が見ても退屈しないというか、むしろこちらも盛り上がってたくらいで。
あ、もちろん今のがむしゃらプロレスは、キャラの魅力と技の完成度も加わって、さらにパワーアップしてますよ!
結局、2008年には私自身も北九州に帰ってくることになったんですけど、それまでは岡山から足繁く通うほどに、すっかりハマってました(笑)。
―その段階でシゲキチさんはまだがむしゃらプロレスに参加してませんよね?
そうなんです。みんなわりと出会ってからすぐ練習に参加した!とか、遅くても1〜2年後にデビュー戦!とかだと思うんですけど、私の場合は温存期間がかなり長いですね。岡山にいたからってのはもちろんですが、北九州に帰ってきてからも長かったんですよ。
−つまり満を持して登場したわけですね!
いやいや、そんな大層な話ではないんですけど(笑)。そもそも自分があちら側にいくなんて微塵も思ってなかったから、悩んでたとかじゃなくて、ただその考えがなかったって話ですよ。
転機となるのはがむしゃら史上最大の大舞台
−ではそんなゼロの状態から入団に踏み切ったきっかけってなんですか?
北九州に帰ってきてからすぐに合コンに誘われたんです。誘ってきたのはいつぞやに「俺プロレスデビューする!」って言ってたやつで(笑)。
なのでもちろん合コンの舞台は「プロレス居酒屋がむしゃら」なわけです。私も店の存在自体は知ってたんです。だけど、実際に足を運んだのはこの時が初めてでした。
そこから月イチでがむしゃら合コンが開催されるようになって、すぐに前代表の矢野さんから「しげちゃん、声がイイねぇ。うちのリングアナウンサーにならない?」って声をかけてもらいました。
でも二つ返事はできなかったんですよね。平凡に生きてきた自分に、そんなことができるとは思ってもいなかったから。
そのあとも何度か矢野さんには声をかけてもらってたんですが、相変わらずYESとは言えない状態が続きました。
そんな中で2009年に「プロレス居酒屋がむしゃら10周年」を記念したすごく大きな大会があって。小倉北体育館で開催された、観客が1000人以上っていうそれまでじゃ考えられないくらい大規模なイベントだったんです。
もちろん私も客として観戦させてもらったんですけど、その時に初めて想像したんですよね。この大舞台でリングアナウンサーをやっている自分の姿を。
それまでは平凡な自分とは別世界の話くらいにしか思えなかったのに、なぜかこのときは「自分にもできるかもしれない」と思えたし、やってみたくなったんです。
「なんでもチャレンジしたほうがいい」と言ってくれた矢野さんの言葉も信じて、熱も冷めないうちにすぐに入団させてもらいました。
こんな自分でも誰かを喜ばせることができる
ーそんなシゲキチさんががむしゃらプロレスの一員になってから、早くも13年が経とうとしていますが、活動を続けてきて良かったと思える瞬間はありましたか?
良かったなと思える瞬間なんて、数えきれないほどありますよ!入団してからは13年ですが、試合観戦歴で言えばかなりの古参ですからね私も。なのでがむしゃらプロレスを愛する気持ちは誰にも負けないと自負しております!
一番良かったというか、人生観を変えられるほどに感動したというか、少々大げさに言うとがむしゃらプロレスのおかげで結婚できたと言うか(笑)。
昔、久保希望選手vs大谷晋二郎選手のタッグマッチがあったんですけど、両選手ともにプロとは言え、やはりZERO1の大谷選手と言えば大御所なわけで、一発一発が桁違いに重いんです。なので久保選手がやられっぱなしになっちゃうんですよね。
だけどそこで簡単に倒れないのが久保選手のすごいところで、どんなに技をかけられても、重い一発を食らっても、リング上に倒れこんでも、絶対に立ち上がるんです。何度も何度も。
その姿にあまりにも感動して、思わずその場で泣いちゃって。ちょうどその頃プライベートで好きな女の子に振られたから、落ち込んでた感情も相まってたんでしょうね。
諦めが悪いことは決してかっこ悪いことじゃないって、久保選手のおかげで気づけたんです。そしてそう思えたことで、その後も何度も何度も彼女にアタックする勇気が持てました(笑)
いやでも冗談は抜きで、プロレスが与えるパワーって本当にすごいと思うんです。
昔はよく老人ホームとかで慰問プロレスもやってたんですけど、みんな拳を振り上げて応援してくれたり、手を叩くほど笑って喜んでくれたのがすごく印象的で。おじいちゃんおばあちゃんって、こういう激しいのは苦手かなって、勝手に思ってたんです。でも実際は全然そんなことなくて、楽しそうに握手まで求めてくれたくらいで。
「ありがとう!元気もらったよ!」って言ってもらえるほど、私たちも活力に湧くというか、みなぎるというか、元気をもらってるのは間違いなくこちら側のほうなんですよね。
ー逆に活動を続けていく上で苦労したことや不安なことはありましたか?
単純に、続けることに今現在も苦労してますね(笑)。コロナの影響はもちろんなんですけど、選手の平均年齢がどんどんあがってきてるのもあるし、何事も同じ温度で活動を継続するのって本当に難しいなって思います。
だからこそ余計に矢野さんの偉大さも感じるんですけどね。ゼロから始まったがむしゃらプロレスを、17年間も盛り上げ続けてくれた人なので。
そしてその矢野さんの功績を、何としてでも守り抜くのが、私たちの使命だと思ってます。もうこれからはコロナも言い訳にはできませんからね。
慰問プロレスはもちろんですが、人気イベントもどんどん復活させて、コロナ前のような全盛期の勢いを取り戻したいですね。
ーでは最後に、今後の目標または夢を教えてください。
団体の目標で言えば、さっき言ったコロナ前の全盛期を取り戻す!ってところなんですけど、個人的な目標を掲げさせてもらうならば、憧れの人がいるんです。
私と同じように社会人リングアナウンサーとして山陰地方で活躍されている、フィモシス・ウォリアーっていう方なんですけど、もう見た目から本当にすごくて(笑)。
どう見てもプロレスラーじゃないですか。いやむしろその辺の選手より目立っちゃってるっていう。
私は普段からプロのリングアナウンサーに対して「すごいな!」「うまいな!」とは思うけど、自分自身に対してはどこか諦めてるというか、選手が主役なんだからリングアナウンサーは影の存在でいいよなって線引きをしていた部分もあって。
でも彼はそんな次元で生きてなかったんです。上手いとか下手とかいう評価がどうでも良くなるくらい、観客を惹きつける能力がすごいんです。レスラーからの信頼も厚いし。
リングアナウンサーという枠に囚われていた自分の概念が、覆された瞬間でした。こうじゃないといけないって思うのは違うんだなって。リングアナウンサーだって、個性を持っていいんだって。
それが自信にもなったし、今では自分なりのリングアナウンサーを極めたいと思うようになりました。そんな憧れのフィモシス・ウォリアーさんの勇姿を、いつかがむしゃらプロレスのファンにも観てほしいとも思ってます(笑)。
そして、今またプロレス人気が再燃しています。プロレスはファンに元気、勇気、感動を与え、レスラーはそんなファンからパワーを貰います。
特に「がむしゃらプロレス」のファンは熱いらしく、他団体の選手からもよく言われるんです。どの大会よりも「がむプロのリングは声援が大きいので、試合がやりやすい!」と大評判でした。
これはコロナ前の話ですが、今年はもう歓声試合も復活できるし、また熱い生の応援を、この耳で聞きたいですね。
みんながいてこそのがむしゃらプロレス
今回初めてシゲキチさんの声を聞かせてもらったその瞬間から、筆者の脳内には刺激が走ったんです。低くて、渋くて、だけど優しい柔らかい声。発音の聞き取りやすさにも、「さすが!」の一言でした。
顔を見なくても、声だけでこんなに印象を残せるのはすごいことだと思うし、だからこそ前代表の矢野さんは、シゲキチさんへの猛アタックをやめなかったんだろうなと。
そして、がむしゃらプロレスが20周年のメモリアルイヤーを迎えられたのも、シゲキチさんのような縁の下の力持ちさんたちが、長年支えてくれたことも大きいんだろうなと、筆者はしみじみと思うのです。
そんながむしゃらプロレスの試合が、4月16日(日)に迫っています。他団体からの選手も参戦予定とのことで、さらに盛り上がる試合になりそうです。
コロナもいよいよ終息、嫌なものは全部吹き飛ばす勢いで、がむプロのみなさん頑張ってください!
試合やイベントに関しての最新情報は、「がむしゃらプロレス」公式Twitterで確認できます。
※2023年4月11日現在の情報です
(ライター・Kanae Nidoi)