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フランス料理を身近なものへ/「ボンファム」オーナーシェフ・岩田信示さん

(アイキャッチ画像:写真中央がゲスト・岩田信示さん)

西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。

始まりはマリリン・モンローも訪れたロイヤル中州店

甲木:おはようございます!西日本新聞社 ナビゲーターの甲木正子です。

梁:西日本新聞社の梁京燮です。

甲木:梁さん、今日はフレンチのシェフをお招きしています。

梁:フレンチって響きが美味しいですもんね。

甲木:堅苦しいとか敷居が高いと思うかもしれないけれど、今日のシェフはそういう方ではないので楽しみに。それでは、本日のゲストをお呼びしましょう。北九州市小倉北区の老舗フレンチ「ボンファム」のオーナーシェフ 岩田信示さんです。よろしくお願いします。

岩田:よろしくお願いします。

甲木:コック帽を被ってなくてお料理を出してくれないシェフと、こうやって対面するのはなんか変な感じですが。(笑)

岩田:そうでしょう。(笑)

甲木:岩田さんのお店「ボンファム」は、北九州市にまだ本格的なフレンチレストランがなかった頃に開業されて、草分け的な存在なんですよね?今年で開業38年ですよね?

岩田:はい

梁:すごい。結構長いですね。

甲木:そもそも小倉でお店をしようと思われたきっかけは?

岩田:自分が小倉で開業した当時は、西洋料理というとエビフライやグラタンやドリアなどそういう料理が主流だったんですね。私がこの世界に入ったのは18歳の時で、ロイヤル総本店「ロイヤル中洲店」というロイヤルを象徴する店に入ったんです。

甲木:マリリン・モンローが来たあのお店?

岩田:そうです。「ここがマリリン・モンローさんが座ったイスだよ」って当時から言われてました。

ロイヤル花の木、銀座レカン、六本木シャルドネ、小倉アルパイン、そしてボンファムを開業

甲木:そこで働いていたんですか?

岩田:そこからスタートしたんですけど、ロイヤルグループの総称として、もう一つ高めのレストランを開こうということで「ロイヤル花の木」と名称を変えて。それで、井上登さんという僕の師匠になる方が、フランス料理の本流をヨーロッパから日本に持って帰って、美味しい料理を2、3品作ってみんなに食べさせてくれたんです。

それがまた衝撃的な美味しさで。自分の今までの料理は何だったろうと思い、それから井上さんとの付き合いが始まりました。その井上さんがいろいろあって、一年足らずで東京に戻ったんですね。

当時、「銀座マキシム・ド・パリ」という立派なグランメゾンがあって、井上さんにちょうど白羽の矢が立ち、「これは九州から行かないといけない」と思い立って東京へ出かけて。その井上さんが「銀座レカン」から独立することになり、その後、東京・広尾にある今の店(ボンファム)の大元となる「ボンファム」という店のオーナーシェフに応募したのがきっかけです。それも全部腰掛で、いよいよ一緒に合流して、井上さんのオープンした「ロアンヌ」という店に入ろうとしたとき、小倉の友人の志村さんという方から「うちを手伝ってくれないか。」という話があって。「アルパイン」というお店なんですが、「料理長が辞めるから、頼むから来てくれ」と言われ、行かなきゃいけないと思い行きました。

それから1年が経ち、2年が経つと、井上さんから「おい、いつ戻ってくるんだよ」と言われて。ちょうどその頃、アルパインも安定して、ちょっとお払い箱みたいになってしまったんですね。それから、今の場所に決めて(お店を)オープンしました。

甲木:師匠の井上さんのところには行かずに、今の馬借のお店に?

岩田:はい。

地元の食材が7割、フランスの食材が3割

甲木:小倉で「ボンファム」をオープンされて、食材とかすごくこだわっていらっしゃいますよね?旦過のものとか。

岩田:地元の食材を7割~8割、フランス料理の看板をあげているので、残りの2割~3割はフランスの食材。

甲木:鴨とかそういうのですか?

岩田:そうですね。鴨、フォアグラ、トリュフ。そういう組み合わせで料理を作っています。

フレンチを身近なものに 20年以上続けた料理教室

甲木:38年間お店をされている中で、教えると言ったらおこがましいですけど、北九州の人に「これが本当のフレンチですよ」という気持ちでずっと作り続けていらっしゃるんですよね?

岩田:そうですね。一番大事なのは、井上が最初に作った料理で自分が衝撃を受けたように、北九州のお客様に「こういう美味しいものをお出しするんですが」という挨拶代わりに、我々のスペシャリティーとかをどんどん出していきました。ただ同時に、根ざしているような文化ではない。

やっぱり、フランス料理といったらよそ行きの料理なんですね。それを身近なものにしていかないといけないだろうと思い、料理教室をオープンの時にすぐ始めました。最大200人前後の女性たちに参加いただき、月に9回、3日に1回は料理教室を。

梁:すごい。

岩田:それを約20年間ぐらい続けて。当時、そういう料理教室が珍しかったんでしょうね。気がついたらたくさんいて断り切れなくて。(笑)クラスによっては200人ぐらいいました。下関にも3回行っていました。

料理に自由を与えたヌーベルキュイジーヌ(新しい料理)

甲木:38年もやっていらっしゃると、フランス料理自体もだんだん味が変わってくるというか。昔はバターたっぷりみたいな。

岩田:フランス料理が日本に入ってきた歴史っていうのは、そんなに長くはないんですね。大幅にフランス料理が変わってきたのは、今から50年前。私の師匠の井上が帰ってきた当時、ヌーベルキュイジーヌという。

甲木:あぁ!

岩田:ご存知ですか?ヌーベルキュイジーヌというのは、新しいフランス料理のスタイルのことで。38年前の私の料理と今の料理は同じであってはいけないんです。ただ、本流や美味しさの根源、フランス料理の本幹を成すソースだったりサービスだったりは変えちゃいけない。だけど、量を変えたり見た目は変えないといけない。料理もモードですから。ファッション(と同じ)なんですよ。

時代の要求する料理などいろんな表現がありますが、やっぱり変えないといけない。変わらないとお客さんに受け入れられないんですね。でも、中は変えちゃいけない。そこは頑固でありながら、見た目の表現や皿の流行などを按配良くやっていくのがフランス料理なんですね。

〇ゲスト:岩田信示さん(ボンファム オーナーシェフ)

〇出演:甲木正子(西日本新聞社北九州本社)、梁京燮(同)

(西日本新聞社北九州本社)

 

 

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