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3様に変化する五穀豊穣の祭り/市指定無形民俗文化財「曽根神幸行事」【北九州市小倉南区】

(アイキャッチ画像:人形飾山<下曽根神幸奉賛会提供>)

門司の庄屋、石原宗祐氏が陣頭指揮を執り、1794(寛政6)年から9年の歳月をかけて干拓した小倉南区の曽根新田。

そのほぼ中央に位置する場所に「綿都美神社」(北九州市小倉南区曽根新田南2-5-5)があります。

曽根新田は江戸時代の飢饉を乗り切るために小倉藩の命によってつくられましたが、1817(文化14)年に台風と高潮によって干拓堤防が決壊し、大災害が起こりました。その2年後に建立されたのが「綿都美神社」です。

福岡に多く見られる海の神を祀る「ワタツミ神社」

古来、「ワタツミ」ということばは海神を指し、それを祀る神社も「海神神社」「和多津見神社」「綿津見神社」と、宛てる漢字は違ってもどれも「ワタツミ」と読ませます。海や水に関わる場所に鎮座していて、福岡県に特に多くみられる神社です。

曽根新田の綿都美神社は海を埋め立てたため海神の機嫌を損ねたので神様の気持ちを静めるために建てられた、と縁起にもあるように二度とこのような災害が起こらないでほしいという願いが込められています。

7つの地区から1つの神社に巨大山車が大集合

その綿都美神社に、毎年5月の連休に曽根・朽網の7つの地区(曽根新田、上曽根、中曽根、中曽根東、下曽根、朽網東、朽網西)から巨大な山車が集まります。

これは2007(平成19)年に北九州市の無形民俗文化財に指定された「曽根神幸行事」が行われるためです。この曽根神幸行事は五穀豊穣を祈念しての「開作神事」であり、干拓された田畑の豊かな実りを願うお祭りとなっています。

今回、筆者は下曽根地区にて代々大切な祭りを守り続ける「下曽根神幸奉賛会(しもそねじんこうほうさんかい)」の皆さんの活動を見学させていただいたので紹介します。

神社に備わる山車の基地と下曽根地区の祭り準備

曽根神幸祭の山車はほかに例をみない提灯山(ちょうちんやま)、幟山(のぼりやま)、人形飾山(にんぎょうかざりやま)の3様に変化する珍しい山車です。そのため入念な準備が必要で、まだ肌寒い1月下旬から寄合が始まります。

下曽根地区の山車は「天疫神社」(小倉南区下曽根4丁目)の一角に格納庫があり、準備も公民館と神社にて行われているとのことです。他の地区を調べてみましたところ、やはり各地区の神社に立派な格納庫が備えられていました。

時代を経て祭りを伝承するということ

4月初旬。子どもたちが「コンチキチン」と木槌を叩いて「鉦(かね)」と太鼓の練習をしていました。昭和の時代は子どもの数も多く、子どもたちが教えあい、鍛錬をし、代々太鼓や鉦(かね)の打ち手を担ってきたそうです。

今は町内の規模や参加者の減少により昔担った打ち手が教え、子どもたちはそこで覚えたことを各々自主練習して本番に備えるとのこと。初めての子どもには中々難しいみたいですが、高学年になると少し教えただけでその拍子をすぐに思い出すそうです。子どものころに覚えたことはいつまでも手や耳が覚えているものですね。

大人は山車と飾りの準備をします。桜の花びらが舞うお社で、娘さんがお母さんから飾りの作り方を教えてもらっているほほえましい姿がみられました。

この羽かざりの色は大地への豊穣を祈る5色だということです。

各地区町内で盛り上がる提灯の祭り

2023(令和5)年4月15日。この日は提灯山笠が町内を巡回予定の日でしたが、あいにくの悪天候で中止となりました。

写真提供:下曽根神幸奉賛会

本来ですと写真のような大きな提灯山笠が町内を練り歩く姿が見られます。

写真提供:下曽根神幸奉賛会

地区の神事としての一体感を感じる汐かき巡行

4月29日。この日は汐かき巡行。曽根神幸行事はまず「鉦(かね)おろし」という行事から始まりますが、「鉦(かね)おろし」や「汐かき巡行」は各地区が綿都美神社に参集し、みんなで執り行います。

各地区で行う行事と全ての地区が一緒に行う行事があることで、一体感と地区の独自性という2つの視点から楽しめる味わい深い祭りだと思いました。

汐かき巡行は綿都美神社そばの貫川の河口から竹筒に汐を汲み、御幣とともに各地区に持ち帰って山車を清めます。この巡行の際に地区によっては山車が「幟山(のぼりやま)」の形態になるようです。

武者がテーマの山車が神社の境内を埋め尽くす圧巻の光景

そうして5月3日に本山巡行をむかえます。各人形飾山は山車の基地から出されて町内を巡った後に方々から綿都美神社へ参集します。

写真提供:下曽根神幸奉賛会

この人形飾山のテーマは「武将人形」をベースとして毎年新調され、たとえばある年は関ケ原の合戦の様子だったり、またある年は桶狭間の戦いだったりするとのことです。

ゴールデンウィークの後半はいつも晴れの得意日であることが多いので、200年以上続くこの神事を見学するにはちょうどよい時期になりそうですね。

詳細は小倉南区ホームページで確認できます。

■開催日時/5月3日(祝)12:30~15:30 ※雨天時は4日(祝)に延期、4日雨天時は5日(祝)へ延期、5日雨天時は中止
■場所/綿都美神社(北九州市小倉南区曽根新田南2-5-5) ※綿都美神社付近の道は狭く車は入れないため、公共交通機関を利用してください

※2023年4月22日現在の情報です

(ライター・いるかいる)

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