和風テイストの「cafe&bar Sui」に行ってみた 旦過2度目の火災がオープンのきっかけ【北九州市小倉北区】
2023年4月、北九州市小倉北区馬借にオープンした和テイストが魅力の「cafe&bar Sui」。店主が、2022年8月に発生した旦過市場の2度目の火災を目の当たりにしたことをきっかけに開いたお店です。
奮闘しながら1周年を迎えた店主の河野真央(かわの・まお)さんに、これまでとこれからの話を聞いてきました。
大学進学を機に北九州へ <雰囲気>と<人>に魅せられそのまま移住
大分県中津市、景勝地としても有名な耶馬渓育ちの河野さんは高校生の時に地域創生に関心を持ち、大学進学で北九州にやって来ました。
サークルや実習、街のイベントやボランティア活動の傍ら、居酒屋などの飲食店でアルバイトを経験。そこでお客さんとのコミュニケーションの楽しさを覚えたほか、卒業後には自らが飲みに行った飲食店での出会いや繋がりの面白さを知っていったといいます。
人と人とが繋がっていく北九州の「雰囲気」と「人」に魅了され、この街が大好きになっていったという河野さんはそのまま移住。
やってみたいと思っていた職業に挑戦しながら充実した日々を送っていたある時、手伝いをしていた居酒屋店のすぐ近くの店で出火し、すぐさまお客さんとともに避難…。それが、2度目の旦過火災でした。
火災現場の悲しみの中で決意「お店を開こう」
旦過火災で目にした火災現場。その後も大きくなり続ける炎をただ見ていることしかできなかった河野さんは、学生時代からの馴染みの店や大好きだった街並みが崩れていくのを呆然と眺めていたそうです。
翌朝、もう一度現場を訪れて焼け跡の現場を見つめた時、ふと「あ、自分でお店を創りたい」と直感的に思ったそうです。
それまでアルバイトで飲食店に勤めていても、自分の店を持ちたいなどとは一度も思ったことがなかったそうですが、「飲食店」という場所は自分に“居場所”を与えてくれていた大切な場所だったと痛感した河野さんは、「今度は私が北九州へ恩返しを、誰かの居場所を創る番だ」と開業を決めました。
物件は、ちょうどいいタイミングで出会い、ピン!ときて決めたそうです。
クラウドファンディングを利用 コンセプトは「The・和」
開業に際し、クラウドファンディングを活用することにした河野さん。目標金額の100%を超えて支援が集まり、全額を店づくりに役立て、無事にオープンしました。2023年4月5日のことです。
コンセプトは「The・和」で、インテリアや提供するものも日本にこだわりました。目指すイメージは“大人のサード・プレイス”で「粋に酔ってもらいたい」との想いから、店名は「Sui」に。ノンアルコールでも楽しめるようにと、カフェ・バーという形態にし、ロゴは友人が作ってくれたそうです。
国産にこだわり 木の風合いを大事にした雰囲気
カウンター6席、4人用テーブル1席で、店内は木の風合いを大事にした素敵な雰囲気。提供する酒類はすべて国産というこだわりです。
筆者は「コーヒー焼酎」を注文。コーヒーの香りが心地よく、爽やかな味で美味しかったです。グラスは佐賀の窯元から。さまざまなカタチで揃えたのもこだわったそう。
河野さんのお母さんのレシピという「鶏の酢醬油煮」は、一口食べるとホッとする優しい味。床漬けはしっかりと味がついており、どちらも酒の肴にぴったりでした。
持ち手が木の枝のようなコーヒーカップは、河野さんのお気に入りです。
手洗いにはクラウドファンディングに参加した人のネーム入り木材が飾られており、ユニークなインテリアになっていました。
家族が感じられる温かな演出
Suiに入店すると、4人用テーブルがあるところの壁に掛けられた作品が目に留まります。その作品は河野さんのお母さんの手作りだそうで、親孝行な演出に心が温かくなりました。
訪問時はまだ夏の暑い日だったので、元気なひまわりの作品が飾られていました。
開店1周年を迎え、季節が一周し季節折々作品が出揃ったことで、河野さんは開店からの1年間を実感したそう。「1年分のストックがあるので心強い!」と笑顔が印象的でした。
また、カウンターの後ろには、和の演出があります。竹の足元には色とりどりの石があり、実はこれは「祖父の石コレクション」だそう!
また、和紙人形の先生だったというおばあさんの作品も飾ることあるそうです。
河野さんは店主として店を一人で切り盛りしていますが、店内を見渡していると、一人ではない、応援してくれる人がたくさんいるということを感じます。また、それは同時に「あなたもそうだよ」という、隠れたメッセージでもあるように筆者は感じました。
「取り寄せ」おつまみや手作りスイーツも
Suiのメニューでは、北九州や福岡から取り寄せているものもあります。「チーズの盛り合わせ」は糸島のチーズ製造所TAKさんから、「チョコレートの盛り合わせ」は八幡西区丸尾町にある「chocolumbus」(チョコロンブス)から取り寄せたものなのだとか。
チョコロンブスは、お店の工房でカカオ豆からチョコレートを手作りしているそう。北九州で作られたチョコレートがあると聞いて興味津々、ぜひ行ってみたいと思いました。
調理よりデザート作りの方が好き
実は、調理よりデザート作りの方が好きだという河野さんおすすめの「抹茶チーズケーキ」と「練り切り」の2点を注文。
「練り切り」は注文してから作られるので、ライブな感じが味わえます。仕上がりを見てビックリ、銀粉が!こんなに美しい和菓子…食べるのが勿体ないくらいです。
耶馬渓茶とともに、とても美味しくいただきました。