海を守る「部埼灯台」と灯台を守る人々の小話【北九州市門司区】
関門海峡は日に4度も東西で流れが変わる日本三大急潮の一つで、特に海峡の東出口付近は激流と暗礁の多さで遭難が多く、「念仏碕」と言われたこともあったようです。
その岬をずっと見守ってきたのが1872(明治5)年に初点燈した「部埼(へさき)灯台」(北九州市門司区大字白野江)。2020(令和2)年12月23日に現役でありながら国の重要文化財に指定されました。
設計は英国人技師ブラントン
部埼灯台は英国人技師ブラントンによって設計されましたが、西洋技師の助けがあったとはいえ、明治初期に部埼を含む多くの西洋式灯台を建設できたのは日本の石工衆の高度な技術があったからと言われています。
明治日本の躍進は既にあった江戸時代の技術と教育の蓄積である一つの証左ともいえるでしょう。
白亜の灯台に輝くフレネルレンズ
部埼灯台は同時期に重要文化財に指定された角島灯台にくらべ灯塔が低いため、潮流信号所(旧灯台職員宿舎)のある一段高い石垣の上からも、灯室で煌めくフレネルレンズを間近で見ることができます。
部埼のレンズはラグビーボールのような形をしており、サイズの異なる大小のドーナツ状のガラスを幾重にも並べ、徐々に円を小さくして作られています。そうすることでレンズに使われるガラスの量を減らし軽量化しています。
中心にある光源によって周囲にプリズムの様に反射する3等小型のフレネルレンズは90秒で1回転し、約32キロ先の遠くまで光を運ぶことができます。夕刻、辺りが暗くなると自動的に点灯し、レンズが廻り始めます。光源となるメタルハライドランプは初めエメラルドのように緑色に光り、すぐに白光へ変化します。
灯台を訪れる旅人に美しい風景を
灯台の環境は「美しい部埼灯台を守る会」の会員の皆さんによっていつも美しく保たれています。
灯台は高台にあるため常時風雨にさらされており、こまめな手入れが欠かせません。作業は裏山の落ち葉や枝の剪定、灯台周りの芝生の手入れ、長い階段と多岐にわたっています。また、いつ訪れても楽しめるように四季折々の花を新たに植生しています。
活動参加者は一般の北九州市民会員の他、海上保安庁の有志の皆さんで、作業は分担しながら行い、時には灯室の清掃なども行います。
冬に美しい水仙の群生は今からが見どころ
秋深い頃、海峡を行く貨物船と流れていく雲は、海域に光を供給する灯台の風情に深みを与えてくれます。
暑い夏の入道雲、寒い冬に咲き誇る水仙の群生、そしてうっとうしい梅雨でも高台の白亜の灯台で迎えてくれる紫陽花の美しさ…。気分転換にドライブがてら出かけてみると、いつ訪れても四季折々の灯台の良さを感じることができると思います。
一緒に貴重な重要文化財の灯台を見守る仲間を募集中
美しい部埼灯台を守る会では、仲間になってくれるボランティアの人をいつでも大歓迎とのことです。
活動は第2日曜の午前10時30分からお昼ごろまで。道具は用意されています。一度の参加でもよいとのことですので、灯台の事を知りたいと思われる人もこの部埼灯台を訪れて活動に参加され、海風と眺める海峡の雄大さを感じてみてはいかがでしょうか。
今後の活動は2月12日、3月12日の予定(現地集合)とのこと。詳細は「美しい部埼灯台を守る会」沖田さん(TEL 093-332-2189)まで。「北九州ノコトを見て」と伝えてください。
※2023年1月28日現在の情報です
(ライター・いるかいる)