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海をわたる電気の通り道『関門連系線』SDGs・再生可能エネルギー普及のカギ【北九州市】

(アイキャッチ画像:小倉東IC付近に並ぶ大型鉄塔の夜景)

近年、ちょっとした空き地にソーラーパネルがおかれていたり、若松では風力発電用の風車が景気よくまわっていたりして再生可能エネルギーが普及してきていますね。

特に北九州市は平成23年12月に国から「環境未来都市」として選定されたこともあり、SDGsに力を入れているところです。

再生エネルギーの需給ギャップは地域間で解決

しかし案外「電気は溜めることができない」という事を知らない人も多いかもしれません。電気は作る(発電する)と同時に使わ(消費する)ないとバランスがくずれて停電したりします。

そこで気象条件が恵まれていて、日当たりよくソーラーで発電した九州の昼間の電気を本州の他の地域の電力会社へ融通しています。電気の貸し借り(取引)ですね。

九州と本州をつなぐ電気の大動脈

その入口が関門海峡にかかったこの鉄塔です。

本州・下関側の鉄塔でつなぐ電線は山口県の美祢市にある「新山口変電所」までつながっています。

九州側は小倉南区の山中に存在する「北九州変電所」までつながっていて、この間おおよそ64.2kmを「関門連系線」と呼び、大容量の電気を送ることができる設備となっています。

関門海峡を九州に渡った電線はまず、関門トンネル人道入口の裏の鉄塔につながっていますが、この鉄塔の高さは160mもあります。

鉄塔が安全に電気を送るしくみは?

鉄塔はただ電線を支えているだけではなく、安全に送電するためにいろいろな設備がついています。

たとえば数珠のように連なったものは「ガイシ(碍子)」といい、有田焼のような陶磁器(セラミック)でできているものが主となっています。これは電線から電気が鉄塔を通って地中に流れてしまわないように遮断(絶縁)しているものです。

そのガイシも汚れてしまうと通電して壊れてしまう可能性があるので、壊れないようについているのが「アークホーン」と呼ばれる金属のツノ(またはリング)状の器具です。

そのほか、雷が落ちた時などのために「架空地線」という線が送電線より上部に張られています。

送電電圧はピカチュウ5匹分?

関門連系線は現在国内で運用されている送電線の最高電圧の500kVで送られています。500kVはボルトに直すと50万Vで、これは10万ボルトのピカチュウ5匹分になります。

ピカチュウの技を考えても近くに寄るのは危険だとわかるように、安全のために海峡を渡った連系線は門司区を貫く企救山地の尾根近くに敷設されています。

尾根に見えるひときわ高い鉄塔が500kV関門連系線、そのほか門司220kV線などが並行して敷設されている

九州にある全ての鉄塔や電線は九州電力が管轄していると思われがちですが、この関門連系線は電源開発株式会社の管理(現在は子会社が管理)となっています。電源開発は戦後設立された国策会社で、国と9つの電力会社が出資し、現在は民間会社となっています。国の重要な技術やインフラでチャレンジングな設備や特定の地区によらないものについては電源開発が担当している事例が多くみられます。

マニアにも人気の高い門型鉄塔とは

門司港の次に関門連系線が見られるのは、企救山地の西側にあたる場所でちょうど足立山麓から降りてきた葛原のショッピングセンター付近となります。

上2段の間隔が広い電線が500kV、下の1段が220kVの電線

この鉄塔は「門型鉄塔」と言われる形ですが、500kVと220kVの架空電線が同時に納まっている全国でも非常に珍しい鉄塔で、鉄塔ファンの中でも人気が高く、大変迫力ある姿をしています。

夜に見上げる門型鉄塔はひときわ迫力があり、近くによると気象条件があえば「ジジジ」と放電している様子もうかがえます。

大型鉄塔は見かたによっては巨大ロボットがそこにスクッと立っているようにも感じます。

私たちの生活を支えている電気の姿を実感

北九州市は「日本新三大夜景都市」全国1位に認定された工場夜景都市ですが、工場地帯だけでなく、このような送電設備などの工業的な逞しさのある施設も夜にみると大変魅力があるように思います。

この関門連系線の様子はJR日豊本線の安倍山公園駅から下曽根駅にかけても見ることができます。普段は直接目に見えない電気ですが、帰宅時にチカチカと赤く光る鉄塔が並んでいる様を見ると、夜も昼も変わりなく安定的に供給されて私たちの生活を支えている電気の姿を実感できるかもしれません。

※2023年3月29日現在の情報です

(ライター・いるかいる)

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