詩太さん個展『原点と現時点』 「メイクスムーン」で開催中【北九州市八幡西区】

(アイキャッチ画像:展示作品の一つ)

八幡西区の浅川学園台にある「CAFE&BAR MAKES MOON(メイクスムーン)」。

連日イベントやマルシェなどで賑わっている人気のお店です。

そんな同店では現在、北九州出身のアーティストである詩太(うーた)さんの個展「原点と現時点」が開催されています。

木村詩太の「原点」

まずは詩太さんが「詩太」になる前のことを、少しだけご紹介。

彼の活動の始まりは、学生時代にバイトをしていた居酒屋にあったと言います。

店長に頼まれて書くことになった「本日のおすすめメニュー」、それが筆文字との出会いだったそう。

「元々、字は綺麗なほうじゃなかった」という詩太さん。

「だけど書くこと自体は嫌いじゃなくて、気が付けば身近にある歌詞とかいろんなことを筆ペンで書くようになっていました」

そのうち詩も自分で考えるようになった彼は、自分の作品を友人たちにプレゼントするようになります。そこで自分が思っている以上に喜ぶ友人たちの姿を見て、自分の言葉に可能性を感じるようになったんだとか。

そんなとき、親友から「友達にプレゼントしたいから詩を書いてほしい」と頼まれた詩太さん。完成した作品を親友に渡すと、彼はお札を差し出して言いました。

「お金をもらうことで責任感が生まれたら、絶対にもっと上手くなるよ」

初めて自分の作品でお金をもらったこの瞬間、彼の意識や価値観は随分と変わったと言います。

そして起点となった2008年。「詩太」として本格的に活動を始めた年。

そこからの彼の快進撃については、もうご存じの方も多いはず。

持ちつ持たれつの程よい距離

その後しばらくして、詩太さんと「メイクスムーン」オーナーの本田さんは出会います。

実は10年来のお友達だというお二人。

たまたま参加したビジネス講座で隣の席になったのがきっかけで、何度か顔を合わせるうちに自然と距離は縮まっていったそう。

当時は不動産会社に勤めていた本田さんと、すでに詩人として活動していた詩太さん。

詩太さんのイベントには足繁く通い、「彼の活動を心から応援していた」と言う本田さん。

その数年後、本田さんが念願のお店をオープンしたときには、今度は詩太さんがいち早くお祝いに駆けつけたんだとか。

そうやって持ちつ持たれつな関係を続けてきたお二人の空気感は、初めて会った私から見てもとても居心地が良さそうで、微笑ましくもありました。

コロナ禍を乗り越えた先にあったもの

これまでも何度かメイクスムーンで個展を開いてきたという詩太さんですが、彼が筆文字ではなく絵を描くようになって、初めて「絵だけの個展」を開催したのもこの場所だったそう。

そして今回、随分と久しぶりのお披露目となった詩の個展も「メイクスムーンだからやりました」と断言する詩太さん。

詩の個展はもうやるつもりがなかったらしく、最近は特に絵を描く事に比重が傾いていたんだとか。

「詩にちょっとした挿絵を描くというとこから始まり、だんだんと絵の方にのめり込んでいくうちに、文字の量が減っていったんです。で、気がつけば絵だけになっていたっていう(笑)」

詩太さんが絵の創作意欲に湧いたのは、コロナの影響もあったそう。

「僕の言葉で誰かを救いたいとか、そういう大それたことをしたいんじゃなくて、『ただただ、みんなに穏やかな気持ちになってほしい』と、コロナ禍でその気持ちがより一層強くなったんです」

そんな彼が選んだのが「余白」。絵に余白を多く残すことで、見てくれる人に思いを委ねたんだとか。

コロナ禍で生まれた作品の中で、筆者が特に印象的だったのが、「タウ爺の旅日記」。ステイホームで旅行ができなかった私達のかわりに、タウ爺が世界を飛び回ります。

今回の個展では、まだ「タウ爺」と名付けられる前のタウ爺が、展示作品の中にちょくちょく登場しているんです。タウ爺の「名もなき旅人」としての姿を追いかけるのも楽しいですよ。

木村詩太の「現時点」

昔からの彼を知っている人ほど、「詩太=筆文字」のイメージは強く、そしてそんな彼の字に惚れ込んでいる人は多いと思います。

実際に詩太さん自身も「もう筆文字で詩は書かないの?」と聞かれることが多いんだとか。

何を隠そう筆者もその一人。

久々に見た詩太さんの作品が絵になっていたとき、度肝を抜かれました。

もちろん良い意味での驚きなんですけど、筆文字ファンの人の中には、それが寂しく感じる人もいるのでしょう。

「僕は詩太としての自分のほうが、本当の自分だと思っているんです。詩太という存在があるからこそ、本音が言えるんです。今は絵を描く事も好きになったけど、詩を繋いでいくことも忘れずに、どちらの自分も大事にしていこうと思っています」

そんな彼の個展は来月7月2日まで。

改めて見る彼の「原点」に、また心を動かされます。

オーナーこだわりの日替わりランチプレート

余談ですが、取材日に筆者が「メイクスムーン」でいただいた日替わりのランチプレート(スープ付き)。

びっくりするくらいおいしかったので、最後にオススメしておきますね。

このボリューム、このクオリティで1280円。

他にも選びきれないくらいメニューが充実していたので、また近々ランチでお邪魔します。

「CAFE&BAR MAKES MOON」の営業日やイベント情報などの詳細は、公式インスタグラムから確認できます。

また、詩太さんの活動については「木村詩太」公式インスタグラムで見ることができます。

■住所/北九州市八幡西区浅川学園台3-18-10
■定休日/火曜
■駐車場/店舗前と隣に6台分あり(無料)

※2023年6月19日現在の情報です

(ライター・Kanae Nidoi)

関連記事一覧