赤字30億円から就任1年後に黒字化 スターフライヤー元社長・松石禎己さん「諦めたらそこで終わってしまう」
西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならはのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。今回のゲストはスターフライヤー元社長で、現在は北九州空港で“靴の汚れ落としボランティア”を行う松石禎己さんです。
【画像で見る】北九州空港で“靴の汚れ落としボランティア”を行うスターフライヤー元社長の松石禎己さんインタビュー前編
30億円の赤字から一念発起で1年後には黒字へ
甲木:おはようございます。西日本新聞社・ナビゲーターの甲木正子です。
横山:同じく、西日本新聞社・横山智徳です。
甲木:横山さん、先週は笑い転げていましたが、どこまでが冗談で、どこからが本気なのか分からないんですよねー(笑)。 今週は喉の調子が良くなっているかどうか、とても気になるところですけれども、さっそくお呼びしたいと思います。先週に引き続き、北九州空港で“靴の汚れ落としボランティア”をなさっている松石禎己さんをお迎えしてお話を伺います。松石さん、今日もよろしくお願いします。
横山:よろしくお願いします。
松石:よろしくお願いします。どうもますますひどくなりました。
甲木・横山:(笑)
甲木:スターフライヤーの社長を6年間されて、顧問を1年されていたということですが、最初社長に就任された当時、つまり2014年のスターフライヤーというのは北九州で認知度や業績はどんな感じでしたでしょうか?
松石:私は同じ業界におりましたので、スターフライヤーという航空会社は知っておりました。
甲木:全日空におられましたよね。
松石:そうですね。しかし当時のスターフライヤーの業績がどんなものか全く知らなかったんですよ。いろいろ経緯はありまして、最終的に社長を受けました。それから初めて業績を見ましたら、2013年度が30億の赤字になりそうだということでした。偉そうにいうわけではありませんが、全日空にいたときは30億というのはなんてことなかったんです。ところがこっちに来たら売上が300億いくかいかないかぐらいの時の30億だから、大変なことだったんです。それで一念発起して頑張った結果、1年後になんとか黒字になりました。
甲木・横山:すごいですねー。
松石:私がすごいのではなくて社員がすごいんですよ。私一人ではなかなか難しいです。自分の中では「俺はすごいな」と思っても、言えないじゃないですか。
甲木・横山:(笑)
松石:結局やる気の問題だと思いました。いかに社員の皆さんに楽しく働いてもらうか。それを引き出すのが管理職、社長の務めじゃないかと思います。どんな組織でもそうだと思います。
「ママランチミーティング」で女性社員のキャリア支援
甲木:私が印象深いのは、女性社員のキャリア支援をすごくされていることです。
例えば出産、育児などで仕事を離れてほしくないということで、育児休業を取っている社員も子ども連れで参加できますし、会社の中で働いている女性社員も皆さん参加できます。会社の経費で皆さんにお弁当を用意され、会社のママランチミーティングがあり、1回呼んで頂いたことがあるんです。
私がそのミーティングで、今までの自分の働き方を話して、社員さんとの意見交換をしました。皆さんものすごく熱心で、ずっとこの会社で働きたいのでこうやって頑張っているとか、でも子どもに寂しい思いをさせているなど、涙ながらに語る人もいらっしゃいました。
それを松石社長も一緒にお弁当食べながら聞いていらっしゃるんです。すごい会社だなと思いました。
諦めないことが自分の実力を発揮できるとき
甲木:元々、松石さんは全日空では整備部門で入社されている人なんです。
松石:よく優秀な技術者だと…。どこがやと言われましたけどね(笑)。
甲木・横山:(笑)
甲木:その優秀な技術屋さんが経営を任された時に、女性社員のキャリアを支援するとか、社員皆で靴磨きをしてお客様にサービスしようとか、「初日の出フライト」を企画して一緒にやろうとか、全然整備部門の人と結びつかないんですけど、どこでそういうことを習得されたんでしょうか?
松石:やはり「なんとかしないといけない」というところで「諦めてはいけない」ということが大切だと前から思っていました。諦めたらそれ以上続きませんので、なんとかしないといけないと考えていたら不思議となんとかなるんです。だから普段、我々がやっているのは自分の実力の2%とか3%しか出せていないんじゃないかと思います。本当に厳しくなってきた時に、それを乗り越えようとしているかどうかです。だから諦めないことです。諦めたらそこで終わってしまいます。
社員のアイデア コロナ禍の傑作「プラネタリウムフライト」
甲木:諦めない精神は、松石さんが会社を去られた後も、コロナ禍の中でスターフライヤーの中に生きていると思います。コロナの最初の頃、移動制限がありましたから、東京へ行こうという人はいませんでした。それで社員さんが思いついたのが、どこか目的地に飛ぶのではなく、「プラネタリウムフライト」という、上空でぐるぐる回って降りてくるだけなんですけど、飛行機の中にプラネタリウムみたいなものを映すということを思いつかれましたよね。
松石:社長を辞める1年ぐらい前、社内コンテストの一つとして社員のアイデアを募集し、その中から実際に実現できそうなものを選びました。上位3つには入らなかったのですが、私にはこれがどうしても捨てがたく、特別賞にして残しました。で、実際に実現できたのはこの作品だったのです。この社員はこういうことができるのはスターフライヤーしかないだろうと思って入社したそうです。あの企画は傑作でしたね。
北九州は仕事のやりがいを感じる
甲木:良い話になってきましたけど、しばらくは東京と北九州を行ったり来たりする感じでしょうか?
松石:そうですね。東京は本当に良いところなんですけれども、人が多すぎて、ちょっとそっとのことをしても、誰も気がつきませんのでね。北九州は割と皆さん気が付いてくれました。「おっ、また何かやっとる」という感じなんです。東京でやっても何も反応がありません。「何や、このオヤジ」ぐらいで終わりますからね。
甲木・横山:(笑)
甲木:北九州は皆さんの距離が近いので、すぐお友達になれますからね。先週、今週の2回に渡り、北九州空港で“靴の汚れ落としボランティア”をなさっている松石禎己さんにお話を伺いました。松石さん、どうもありがとうございました。
横山:ありがとうございました。
松石:ありがとうございました。
〇ゲスト: 松石禎己さん(スターフライヤー元社長)
〇出演:甲木正子、横山智徳(西日本新聞社北九州本社)