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「日本の文化が私を変えた」/アン・クレシーニ(北九州市立大准教授・言語学者)

「北九州が好きでたまらん」

アン・クレシーニ(Anne Larson Crescini)さんはアメリカ・バージニア州出身の言語学者で、北九州市立大学基盤教育センターひびきの分室准教授。3人の娘の母で、作家、ブロガー、コメンテーター、YouTuber、「むなかた」応援大使、とさまざまな肩書きをお持ちです。

初めて日本にきた1997年には泣き暮らしていたというアンさん。食べられない日本の食べ物(これは食べ物じゃない!)、本音を言わない日本人(何を考えてるの?)、おかしなトイレ(トイレットペーパーが後ろにある!)、寒い部屋…と数々の困難があったようですが、今では日本のすべてが大好きだというのですから、いったい何があったのでしょう?

そんなアンさんにお話しを聞きました。

つらかった日本での生活が一変 大好きに

初対面の私に「アンちゃんと呼んでください。みんな、そう呼んでるんよ」。

左右非対称の金髪ショートヘアにラフなジャケットとたくさんの耳ピアス。およそ大学の先生らしからぬ「ファンキー」な見た目ですが、どこか繊細で柔らかい印象です。元々は真面目なクリスチャンのアンちゃん。ファッションも地味でフツーだったようですが、お子さんの8歳のご友人に髪の毛を切らしてあげてから好みが変わり、パンクなファッションに変わっていったそうです。

言葉づかいは「北九州弁」? でしょうか。独特な、味のある話しっぷりです。

北九州市の広報番組「好きっちゃ北九州」のレポーターをしていますよね?
「これまで2年間、北九州の文化施設、食べ物、自然、いろいろな面白いところ、ステキなところを見に行って、”外国人”の目線で紹介してきました。本当に、北九州にはステキなところがたくさんあります。3分間の番組で、Youtubeで見みられるから、みんなに見てほしい。この番組がバリ好きやったのに、今年の3月に終わってしまって、本当に残念です」

―大学では英語を教えているんですか?
「北九州市立大学のひびきの分室で、理系の学生に一般教養の英語を教えています。『英語コミュニケーション』『国際コミュニケーション論』の科目の担当です。1週間に6コマの授業をしていて、スピーキング、プレゼンテーション、コミュニケーション、ライティング、TOEIC試験の英語も教えてます。プレゼンテーションの授業は最初に日本語で考えさせてから、英語で話すようにすると効率がよいことがわかりました」

アイデンティティが日本人になっていく

―日本語が本当に流暢ですね。
「最近は京都人の親友のマキコさんと日本語を話す時間が長くて、自分のアイデンティティが日本人になってきているみたい。アイデンティティと言葉は本当につながっている。自分の気持ちは(英語ではなく)日本語で話すほうが話しやすい。家族とは英語で話すようにしていますが、子どもにもつい日本語で話してしまうこともあります」

「日本語をバリバリ勉強して、2005年に『日本語能力試験1級』を取りました。北九州市立大学の仕事と、ここの学生が大好きだから、期限のない講師職の面接の準備をして、『ていねい語』も話せるように勉強しました。2007年にその面接に受かって、今の仕事をしています」

―どういうきっかけで北九州市立大学で英語を教えるようになったのですか?
「もともとは夫が日本に興味があって、私はあまり興味がなかったのです。英語が母国語の外国人が日本の学校で英語を教えるJETという日本政府の国際交流プログラムがあって、夫が採用されました。それで夫といっしょに3年間、神戸に住みました。その時は日本のことがぜんぜんわからないままでアメリカに戻りました。アメリカに戻ってから日本人の高校生に英語を教えることになって、教えることがバリ好きになったんです。アメリカで日本語を覚えて話せるようになったのは、おもしろいやろう?」

「それから、バージニア州の大学の大学院で応用言語学を勉強しました。この大学の姉妹校が北九州市立大学だったので、大学院を卒業してすぐに講師に応募して、採用が決まりました」

―アンちゃんは、思い立つと決断がいつも早いんですね?
「そうそう。夫のリズも北九州で何の仕事ができるかわからんかったけど、私の夢を応援してくれたんよ。本当にうれしかった。夫にほれなおした」

日本人のクリエイティブさが和製英語を生んだ

―言語学での専門は「和製英語」とのことですが?
「そうです。私は言語学の研究者で和製英語・外来語を研究しています。論文は8本書いて、本も1年に2冊、出しました。和製英語に興味をもったきっかけは『パイプカット』。この言葉はとにかく一番面白くて、クリエイティブな和製英語の単語だと思います。初めて意味を聞いたときは、しばらく大笑いしてました。英語では隠すような言葉ではなくて単なる医療用語ですが、日本語ではあまり表で言ってはいけない言葉でしょう。とにかく、日本人は創造する力、言葉を作るアイディアがハンパない、スゴいと思った。和製英語は発音がしやすく、日本人に想像しやすい言葉でできています」

「和製英語、方言、若者言葉はどれも、意味のないバカな言葉だと言う人がいますが、そうじゃない。それぞれのコミュニティで大切な言葉だから、使い分けをすることが大切です」

―最近の若者言葉にはどんなものがありますか?
「たとえば、最近はまっているのは『レベっち』という言葉で、『レベルが違う』という意味です」

―アンちゃんの言葉は北九州弁なんですか?
「そう、よく『好きっちゃ』とか『けん』とか言っとる。私の言葉は自分ではようわからんけど、よく北九州弁になってるみたい。『北九州のイントネーションだよ』とよく言われる。北九州で10年以上暮らしてきたから、北九州の言葉とイントネーションが身についとるんやろう。今は宗像にいるから博多弁も混ざっとる。親友の京都人の影響もあると思うよ。最近は標準語も話します」

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