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【ファンファン北九州#28】「障害者に日本舞踊を教える」聖幻会主宰 英聖幻さん<後編>

西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。

教えるのはおどりだけじゃない?

横山:先週、聖幻さんの話をお聞きして、自分の子育てを反省しっぱなしでした。

甲木:そんなことはないでしょう。

横山:いやー、そんなことはありますよ。余計なところで出ていったり、観客なのかコーチなのかわかんないとか。あの辺りは、やっぱりその通りだなと。

甲木:私も、子どもっていうのは、生まれた時から社会の一員なんだっていう話は、すごくジンときました。それは障害の有無に関わらず、どの子もみんなそうなんですね。

それでは今回も引き続き、日本舞踊の名取で、ダウン症や知的障害のある人に踊りを教えているグループ「聖幻会」代表 英聖幻さんこと新冨智子さんをゲストにお迎えしお話を伺います。今週もよろしくお願いします。

聖幻:よろしくお願いします。

甲木:聖幻さんは、27年前から障害のある人に踊りを教えているということですが、実は、教えているのは踊りだけじゃないんですよね。礼儀を教えたり、時には躾もしているとか。結構、厳しいと聞いているんですけれども、実際はどんなことを教えていらっしゃるんですか?

聖幻:やはり目を見て挨拶をする、靴を揃える、それから感謝の言葉を言うなど細かいんですけれども。例えば、お菓子を食べる時は、まず先生、そしてお母さん。序列というとか、バーっと食べるのではなく、分けたりそういうことをしながら「いただきます」と。本当に当たり前のことなんですが、親も子も私も含めてついつい忘れてしまう。

甲木:みんなで分けて食べるぐらいはできても、目上の方からというのはつい…。

横山:そうですよね。

甲木:私、この前、上司に靴を揃えさせたもん。とんでもないですよね。(笑)

横山:(笑い)

甲木:聖幻会に入ってたら、私すごい怒られてたと思います。(笑)

横山:お菓子を配られても我が口が先ですしね。

良い子にならなくてもいい、感じの良い子になろうね

甲木:そういう意味でも、社会で自立していける一人の大人として育てていらっしゃるってことなんですよね。

聖幻:知らなかったっていうことが多いですよね。だから、まず出来る・出来ないじゃなくて「知る」ということ。靴を揃えるということを知るっていうこと。それから、お稽古が終わったら、きちんと保護者の方を向いて「連れてきてくれてありがとうございます」と言うことを言ってます。

甲木:師匠に「ありがとう」と言った後に?

聖幻:はい。保護者の方にもお礼を言う。

甲木:なるほど。

聖幻:私が「しなさい」って言わなくても自然に身に付くものというか習慣というか。それも出来る・出来ないじゃなく「知ってる」ということがまず第一。すべてをやるということではないけれど、「あそこではああいうことを教わったね」って。できるようになるまで厳しくするとかではないですが、みんながしていると自然にきちんと一列に並びますし、扇子の扱いがお箸の上げ下げと似ていて、きちんと指先が揃っていると丁寧に見える。「良い子にならなくてもいいけど、感じのいい子になろうね」と言ってます。

甲木:良い言葉ですね!

そうちゃんの大冒険

甲木:そして、今日ぜひお聞きしたいのが「そうちゃんの大冒険」。

聖幻:はい。そうちゃんっていう男の子がいるんですけれど、「初めてバスに乗って先生の家まで来る?」と聞いたら「行く」って言うんですね。

甲木:一人で!?

横山:何年生?

聖幻:小学校6年生です。私の家まで12バス停あって、最初は1バス停ぐらいからかなと思ってたんですが。お母さんに「本人に決めさせて」と言ったら、本人が「行く」と言って。そしたら、ちゃんと12バス停数えて、私が待ってる停留所に降りてきました。もう大感動で涙が出ました!本当に!

甲木:えー!もしかしたら途中で数え間違えたり、あるいは不安になって降りたりとか…。1回でできたんですか?

聖幻:はい。1回で。もう自信がついて!

甲木:わぁ!すごい!

横山:本人もだけど親がドキドキしますよね。

そうちゃんの墨絵が「異才発掘プロジェクト」(東京大学)に選ばれて

聖幻:一つ一つ殻を破って、どの生徒もたくさんの能力や素晴らしいものを持っているので、やはりそういうチャレンジをしていくっていうことは大切だと思います。それに新たな才能として、そうちゃんが描いた墨絵が、東京大学の「ROCKET(ロケット)」という異才発掘プロジェクトに選ばれて。

甲木:すごいですよね!

聖幻:本人の魂が喜ぶようなことをたくさん見つけてあげたいなと思います。時には、チャレンジというかドキドキ・ハラハラはすごいですけど、ドキドキ・ハラハラした後は、みんな必ずパッと能力が出てるんですね。すごい自信がついて。だからステージはとても大事!

日本の伝統を通して皆さまに発信 笑顔で日本を元気に

甲木:多岐に活動されている聖幻さんですが、今後チャレンジしてみたいことってありますか?

聖幻:日本の良い物、古い物を障害の有無に関わらず、聖幻会の生徒たちを通して皆さまに発信して、そして社会参加をしながら、社会貢献をしていく生徒たちを増やしたいなと思います。もっともっと自信に繋げて、いろんな壁がなくなるように。

踊りって怒りながら踊れないんですよね。やっぱり笑ってないと踊れないんです。それに、盆踊りってちゃんとソーシャルディスタンスを取れてるんです。前進、前進で一方方向にしか行かないので。だからもう一度、あちこちでたくさん盆踊りの風景が見れたらいいなと思いますね。

甲木:そうですね。フォークダンスだと手を繋いだりとか3密になっちゃう。

聖幻:大陸は陸続きになって、手を繋いだり肩を抱いたりとかするのが多いですけど、日本は島国でひとりで黙々と踊るものが多いんです。

横山:島国だからなんですか。

甲木:そんなこと考えてもみなかったけど、実は盆踊りはソーシャルディスタンスなんですね。

 

〇ゲスト:英聖幻さん(聖幻会主宰)

〇出演:甲木正子(西日本新聞社北九州本社)、横山智徳(同)

(西日本新聞社北九州本社)

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