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北九州出身の吉本実憂さん「地元で見ていただき嬉しい」 小倉昭和館でトークショー

1月15日(金)まで、小倉昭和館(小倉北区魚町4-2-9)で映画「瞽女 GOZE」が上映中です。

生まれながらに盲目という過酷な障害を背負いながら 母の教えを一途に守り、その運命を恨まず、人の幸せを妬まず、人を差別せずに 人生を全うした盲目の女旅芸人・小林ハルの半生を描いた作品です。

「瞽女 GOZE」上映初日の1月9日、監督・瀧澤正治さんと、北九州市出身で同作品の主演を務める女優・吉本実憂さんがゲストとして小倉昭和館に登場。「映画を見てもらった後に、いろいろな話を聞いてもらいたい」という小倉昭和館とゲストの思いから、当日は最初に舞台挨拶が行われ、「瞽女 GOZE」上映後に改めてトークショーが行われました。また、舞台挨拶には北橋健治市長も出席しました。

ハルさんを知り、演じる中で自分も精神的に強くなった

トークショーでは、まず、この映画にかける思いを尋ねられた吉本さん。この映画の話が来た時に初めて瞽女(ごぜ)という言葉を知り、その時は瞽女という漢字も書けなかったと言います。

「それから小林ハルさんを知るにつれ、そして演じる中で、すごく自分が強くなった、精神的に強くなった気がしています。ハルさんの人生を一部分ですけれど経験させていただいたことで強くなれたのだと…。それがきっと映画に出ていると思います。とにかく小林ハルさんの生きざまを感じていただければ」と吉本さん。

続けて、「今回大好きな地元の北九州で、皆さんに見ていただけたことが嬉しい。北九州に帰ってきて、皆さんのお顔を見て、改めて自分も一生懸命つらいことがあっても立ち向かって好きなことを頑張っていこうという気持ちになりました」と、笑顔で語ってくれました。

「瞽女の役なのでずっと目を瞑ったまま…。大変だったのでは?」と、司会者から質問された吉本さん。最初はどうやって役作りをすればいいか迷ったそうですが、撮影に入る前に、監督や役者の人たちと一緒にやった“暗闇体験”が役作りのヒントになったと言います。

「本当に何も見えない真っ暗なところで、みんなで机を並べたり、コップにジュースを入れたり…。その中で目ももちろん大切だけど、そういう状況だと他の五感がすごく優れていくということに気付き、その日から“目”以外の五感を意識するようにしました」(吉本さん)

「ハルさんのことを調べていくうちに、責任感というか、私がハルさんの人生の一部を演じるというプレッシャーがあった」と言う吉本さん。でもやると決めたからには、ちゃんとしっかりハルさんを生きたいと思ったそう。「ハルさんは瞽女唄も“魂”で唄っている。それを作るのではなく、中身から出していくのがすごく自分の中では大変だったかな」と、この映画で一番大変だったことを教えてくれました。

瀧澤監督「完成までにかかった17年間は無駄ではなく学ぶ時間だった」

瀧澤監督が、小林ハルさんのことを知ったのは17年前。偶然見たテレビ番組で紹介されているハルさんにくぎ付けになり、番組が終わってからも涙が止まらなかったそう。ハルさんの生きざまに感銘を受けて、この人の映画を撮りたいとその時思ったと言います。

思っているだけでなかなか行動に移せないまま2年が経った2005年、ハルさんが亡くなりました。瀧澤監督は仕事を全部キャンセルして新潟で行われた告別式に出席。その場でハルさんに「あなたの映画を作らせてください。作ります」という誓いを立てて、そこから15年間という年月をかけ、「瞽女 GOZE」は完成しました。

「この作品は自分の力だけでは作れない。ハルさんだけじゃなく、いろいろな人と出会い、知らないことを教えていただいて、“瞽女”という一つの文化というものに触れ合い、17年間かけてここまできました。この17年間というのは無駄な時間じゃなくて、自分にとっても映画にとっても学ぶ時間であって、いい人生を送ったなと思っています」と瀧澤監督。小倉に来たのは初めてとのことでしたが、「北九州で多くの皆さんに見てもらい、この映画を作ってよかった」と話してくれました。

小倉祇園太鼓の『カン』の方が好き

小学校の時から学校でやっていて、高校では部活でもやっていた「小倉祇園太鼓」が特技だと言う吉本さん。祇園祭の時は小倉の街を歩きながら、太鼓を叩き、歌っていたそうです。

小倉祇園太鼓は全国的にも珍しい両面打ちが特徴で、太鼓の表が「カン」、裏が「ドロ」と呼ばれ、それぞれ打法も異なりますが、吉本さんは「カンの方が好き」とのこと。「ドロとかカンとか、北九州じゃないと分かってもらえないから嬉しいですね」と、楽しそうに話してくれました。

そんな北九州を愛する吉本さんですが、トークショーの最後にこれから演じたい役を尋ねられ、「私の中で家族というものは自分の人生の軸にあったりするので、家族ものは多くやっていきたい。人生の中で誰しもがハッピーエンドではないと思っていて、でもハッピーエンドではないにしても何かしらの気づきを与えてくれるのが人生だと思っています。それを深く伝えられるような、見てくれた方の少しでも光になるような作品を作れれば、という気持ちでいま役者をやっているので、そんな作品を作り続けていきたいです」と夢を語ってくれました。

「瞽女 GOZE」あらすじ

(C)2020映画瞽女GOZE製作委員会

生後3カ月で失明したハルは2歳で父と死別。盲目のために7歳で瞽女(ごぜ)になる。瞽女とは、三味線を奏で、語り物を歌いながら各地を旅する盲目の女芸人のこと。それまでは優しい母だったトメは、瞽女になった時から心を鬼にしてハルを厳しく躾けるが、それは母親が子を思う愛情の深さだった。その母親の優しさを気がつかないままハルは8歳で初めて巡業の旅に出るが、その年、トメはこの世を去る…。

1月15日(金)まで、小倉昭和館で上映中。料金は、封切料金(1本のみ)一般1800円、シニア・シネマクラブ会員・パスポート1200円。

◆小倉昭和館 http://kokura-showakan.com/

(北九州ノコト編集部)

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