門司区最高峰の戸ノ上山「戸上神社」で御神幸祭 後世につなげる伝承文化 【北九州市門司区】

(アイキャッチ画像:戸上神社)

門司区最高峰(標高517.8m)の戸ノ上山(とのえさん)は、近隣の幼稚園・保育園児が遠足で登山するなど、地域の方々に親しまれている山です。

登山者の中には毎朝必ず登っているという方も多く、登山愛好家にも人気の戸ノ上山。今回は戸ノ上山の山頂にある「戸上神社上宮」から「戸上神社本宮」へ神さまをお迎えする地域の行事「御降り神事」について、宮司の是則宗孝さん、禰宜の是則宗秀さんにお話しを聞かせていただきました。

戸上神社の由緒

戸上神社は、北九州市門司区大里戸ノ上にあります。門司区の最高峰「戸ノ上山」の山頂に上宮、麓に本宮を有する、同一祭神を奉祀している神社です。

「宇多天皇の寛平年間、約一一三〇余年もの前に戸上山上に三柱の大神を奉祀したことに始まる」と社記に記されており、三柱の大神、御祭神は「天御中主神 あめのみなかぬしのかみ」、「伊邪那岐神 いざなぎのかみ」、「伊邪那美神 いざなみのかみ」とされています。

御神幸祭とは

御神幸祭は神霊の御幸が行われる神社の祭礼で、多くの場合、神霊が宿った神体や依り代などを神輿に移して氏子地域内に御幸したり、御旅所や元宮に渡御する神社の祭礼です。

戸上神社では、毎年10月10日に戸ノ上山山頂にある上宮から麓の本宮に神様をお迎えする「御降りの儀」を斎行(お祭りや祈祷などの行事を行うこと)し、土曜日・日曜日に大里のまちを巡行して、10月23日に神様を上宮にお送りする「御昇りの儀」を斎行しているとのこと。

今回筆者も、神様を本宮にお迎えする「御降りの儀」に参加させてもらいました。

11時から上宮で神事が執り行われるとのことで、朝9時に戸上神社へ集合。戸ノ上山への経路はいくつかあるのですが、今回は神社近くの寺内登山口から登りはじめ、所々休憩をはさみつつ、約1時間ほどで、山頂へ到着しました。

上宮付近は高い木々に囲まれ、神聖な空気に包まれているのを感じました。

御降りの儀

神事は、宮司を中心に宮柱の二人がお宮の中に入り、三種の祝詞があげられました。

一つめは神前や参拝者などを祓い清める「祓詞」、二つめは御降りの儀が無事に滞りなく執り行えること、また地域や民の弥栄(いやさか)を願う祝詞、三つめは「大祓詞」といわれる祓(はらえ)の祝詞。複数名の神主で執り行う際は、太鼓や笛、摺鉦(すりがね)、鈴なども用いられるとのこと。神事の後は、心も身体も清々しく感じられました。

祝詞後、お宮の扉が閉められ、御霊代(みたましろ)を依り代(こちらでは榊)に奉戴する儀式がおこなわれました。依り代は、人一人が持てるほどの大きさの神輿に納められ、大切に本宮まで運ばれます。

当日は平日で、神輿の担ぎ手が少ないこともあり、一般市民である筆者も神輿を担がせてもらいました。

専用の腰ベルトを巻き、神輿の支えをベルトに固定し、両手でささえて、本宮まで。下りの道は急な坂道もあり、神輿を落としてはならぬと、両手と肩に力がこもります。

本宮到着後は、関係者の方々と直会(なおらい:祭の終了後に、神仏に供えた御饌神酒を神職をはじめ参列の方々で戴くこと)に参加させていただき、神事が無事に執り行えた安堵とともに、人と人とのつながりやふれあい、食を共にする心豊かな時間を過ごしました。

神社のお世話役の方々が握った新米のおにぎりがとても美味しく、ついつい手が伸びました。

四年ぶりのご神幸祭

神社の神事としてのご神幸祭は、毎年執り行っていたそうですが、コロナ禍で一般の参列や地域への御幸を自粛していたため、今年は4年ぶりに、神輿がまちを渡御するとのこと。

従来は、本宮を出発し、大里本町の八坂社や大里の商店街、柳御所と広い範囲で渡御していたそうですが、3年間のブランクがあるため、安全を第一にと、21日(土曜日)は本宮から柳御所まで、22日(日曜日)は柳御所から本宮までの約1.2kmの距離を渡御するそうです。

最後に宮司の宗孝さん、禰宜の宗秀さんに神社の行事を執り行う上で大切にしていること、地域の方に伝えたいことを伺いました。

「四年ぶりに神社の外を渡御することができ、神様もさぞ喜ばれるでしょう。地域の方々に喜んでいただくことをなにより大切としています。年々、神輿の担ぎ手が少なくなり、以前は三基あった神輿も今では一基に。昔のように三基の神輿が町を巡る賑やかさを取り戻せたら。この神事を次の世代に受け継いでいきたい」(宮司談)

「戸上神社の秋祭は、昔は永祭といって四日間、一、二日目に大勢で神輿を担ぎ、夜中まで親睦を深め、三日目は中休みで休息をとり、四日目に上宮へと御昇りの儀を行っていました。日本の神話の神様たちも賑やかな場を好んでいたように、祭は家族や地域の絆を深める大切な場。地域の方々にもっと身近に感じていただけるよう努めていきたいです」(禰宜談)

23日の御昇りの儀は、戸上神社上宮にて11時から神事が執り行われます。神事の後は榊分けもあるそうです。神事の参加や詳しい内容については、戸上神社のホームページで確認できます。

<戸上神社概要>
■所在地/北九州市門司区大里戸ノ上4-4-2
■駐車場/あり

<御神幸祭概要>
■正式祭典:10月21日(土)11時から
■御神幸祭:10月21日(土)14時から・22日18時から
■奉納演芸:柳御所(北九州市門司区大里戸ノ上1-11-25)

 

※2023年10月20日現在の情報です

(ライター・kohalu.7)

関連記事一覧