
異文化や多様性って何だろう? 黒崎の「多文化ヒューマンライブラリー」に参加してみた【北九州市八幡西区】
(アイキャッチ画像:「ヒューマンライブラリー」開催の様子 画像提:北九州国際交流協会)
北九州市八幡西区黒崎駅から徒歩1分のコムシティにある「北九州国際交流協会」で12月7日、「多文化ヒューマンライブラリー」が開催されました。

語り手が「本」となり、聞き手が「読者」として相互理解を深める対話型のイベントです。今回、「読者」として実際に参加してみたので、その様子をレポートします。
多文化ヒューマンライブラリーとは?
「多文化ヒューマンライブラリー(人間図書館)」では、多様な文化や背景、価値観を持つ海外出身かつ北九州市と関わりを持つ人々が「本(語り手)となり、「読者(聞き手)」との対話を通して相互理解を深める対話型イベントです。
画像提供:北九州国際交流協会つまり、<読書>をモデルとしながら、「本」の役目をするのは経験豊かな生身の人間。参加者に対して、これまでの1人静かに浸り込む<読書>のあり方そのものを、改めて考え直すきっかけを促す企画です。
参加には事前申し込みが必要で、費用は無料でした。
多様な背景をもつ「本」と「読者」の対話の場
実際に「読者」として参加した人々の顔ぶれは、ボランティアで日本語教室に携わっている人や仕事で外国人と関わる機会の多い人、転職中で他の人の人生について聞いてみたい人などさまざま。小倉や黒崎から来たという合計13人でした。
画像提供:北九州国際交流協会今回「本」の役割を引き受けたのは、アメリカ出身で宗像市在住する北九州市立大学准教授のクレシーニ・アンさんと日本在住歴30年のアメリカ人女性で北九州市総合観光案内所店長のクリスティン石井さん。
そして、イギリス出身で鞍手郡鞍手町で英語指導助手(ALT)を務めるブランドン・モスコーニさん、台湾出身で現在早稲田大学大学院修士課程院生キュウ・シウンさんの4人。
この「本」役の4人がグループに分かれ、「読者」となる参加者と30分ずつ対話の時間を持ちます。4人とも日本語は堪能で、日本語での会話となりました。
日本への愛から日本国籍取得 言葉と多様性の力を信じる
筆者が最初に訪れた「本」は、クレシーニ・アンさん。日本語や日本文化への愛から2023年に日本国籍を取得した「アメリカ系日本人」の女性です。
アンさんは、著書も多い言語学者でブログやX、YouTubeを用いた発信を行い、特に「和製英語」や「多様性」と言ったテーマに関心を示しています。
対話はまず、アンさんの経験談から始まります。

アメリカ生まれのアンさんは、1997年に24歳で初来日し、夫と神戸で暮らし始めました。当初は日本語に関心がありませんでしたが、引っ越しの挨拶で隣人に「誰ですか?」と聞かれ、とっさに「ガイジンです」と答えてしまった経験をきっかけに、日本語学習を熱心に学び始めたそうです。
その後、日本料理を学ぶ中で「いただきます」に込められた感謝の気持ちを知り、日本人の食文化への理解が深まりました。この経験は、彼女が長年苦しんでいた摂食障害を克服するきっかけにもなったといいます。
コロナ禍で日本国籍を取得 多様性を語り続ける決意
日本での生活に馴染んでいたアンさんですが、2020年のコロナ禍で、永住権を持ちながら外国籍を理由に入国を拒否されたことが大きな転機となりました。悩んだ末、2023年に日本国籍を取得し、米国籍を放棄します。
しかし、その後もSNSで中傷や殺害予告を受け、言語学者として「言葉の力と責任」の重要性を強く訴えています。そして、今後も日本の良さを信じ、多様性について発言を続ける決意を語りました。
画像提供:北九州国際交流協会アンさんの半生に驚きを隠せない参加者から、「どうすれば、そんなに強く生きられるんでしょうか?」と質問が上がります。すると、アンさんは、日本人の少しシャイな国民性を挙げて、「大学で国際交流イベントを企画しても参加者が少ないんですよ。もっと積極的になってほしい」といいます。
また、「今、転職活動していて、悩んでいるんです」と言う参加者に対しては、「ずっと同じ仕事でなくてもいい、人生を楽しみましょう」とアドバイス。中には、アンさんが使用する香水についての質問などもありました。
「沈黙の空間」がテーマ 言葉と言葉の間に隠れた感情の深み
次に訪れたは「本」は、クリスティン石井さん。ここでは、対話の開始が告げられても、クリスティンさんはじっと黙ったまま。参加者は不思議そうな表情になります。
しばらくして、クリスティンさんが「今、違和感ありましたか?」と問いかけ、この「沈黙の空間」が今日のテーマだといいます。

クリスティンさんは、インターネット情報が乏しい時代に初来日し、人と人との直接的なコミュニケーションに関心を深めたと語ります。言葉そのもの以上に“言葉と言葉の間”に意味があると気づいたそうです。
「お疲れさまでした」の多様な意味をAIは理解できない
たとえば、「お疲れさまでした」という表現には多様な意味があり、AIがその裏の意味まで理解するのは難しい。本当の意味でのコミュニケーションには、「言われたこと」と「言われていないこと」の両方を理解しようとする二重の努力が必要だと強調します。
氷山の水面下に隠れた部分に感情の深みが存在、それを理解することで言葉の力が分かり、「世界が変わる」と話します。
画像提供:北九州国際交流協会クリスティンさんが小倉南区出身だと言うと、参加者から「私もです! どこですか?」と声が上がります。
さらに、「子どもがなかなか英語を覚えない」や「上司がいつも一方通行的な言葉を投げかけてきて困ってるんです」など、言葉を巡る悩みが寄せられました。
クリスティンさんは一貫して「言葉の背後にある意味や背景に目を向けてほしい。言葉が人を傷つけるのはよくあるけど、その水面下の意味を理解しましょう」とか語りました。
これには筆者も、異文化理解にも広く通じるものだと感じました。
