
初開催『ガストロ北九州』を現地レポート! 注目イベントに行ってみたら“職人の技”と“街の未来”が詰まっていたPR
(アイキャッチ画像:ガストロ北九州の会場入口)
北九州の「うまい」が、一堂に会したら──。
そんな光景が現実となったイベント「ガストロ北九州」が、9月12日・13日の2日間、北九州メッセ(北九州市小倉北区)で初開催されました。

会場に集まったのは、北九州を代表するすし店をはじめ、うなぎ、焼きうどん、肉料理などの飲食店から、日本酒の蔵元まで多彩なラインナップです。
しかし、「ガストロ北九州」は単に人気店の料理を一度に味わえる“食フェス”ではありません。
食材を育てる・獲る人がいて、それを運ぶ人がいて、料理する職人がいる。さらに料理が生まれた土地の文化や歴史がある──料理の向こう側まで含めて「北九州の食」を体感できるイベントです。
一体、会場ではどんな光景が広がっていたのでしょうか? 初日の会場へ行ってきました。
開場前から行列! 「ガストロ北九州」へ潜入
JR小倉駅から動く歩道を通り、北九州メッセへ向かうと、会場に近づいていくにつれ、これから始まる“食の祭典”への期待が高まります。
開場30分前に到着すると、すでに入口には多くの人の姿。スタッフによると、開場の約1時間前から並び始めた人もいたのだとか。

そして午前11時、いよいよ開場です。

会場に入ると、目の前に広がっていたのは、すし、肉料理、うなぎ、焼きうどん、日本酒など北九州の「うまいもの」が所狭しと並ぶ光景。あちらこちらから漂ってくる食欲を刺激する香りに、入場早々「何から食べよう……」という、なんとも幸せな悩みが生まれます。

会場中央には大きな「櫓(やぐら)」が設けられ、料理だけでなく、トークセッションや解体ショー、音楽などのステージプログラムも展開。まさに会場全体で「食」を楽しむ空間がつくられていました。

なぜ今、北九州で大型「食」イベント?
そもそも、なぜ北九州市でこれほど大規模な食のイベントを開催することになったのでしょうか?
その背景にあるのが、北九州市が進めている「すしの都 北九州市」の取り組みです。

響灘、関門海峡、豊前海という特徴の異なる海に囲まれ、多種多様な魚介類が集まる北九州市。市内には世界的にも知られるすし店がある一方、長年地域で親しまれてきた街のすし店や、近海ものにこだわる回転ずしなどもあり、多彩なすし文化が根付いています。
こうした地域の食のポテンシャルを都市の魅力として発信し、「北九州市に来れば、すばらしい食体験ができる」というイメージにつなげようというのが「すしの都 北九州市」です。

そして、その魅力を一部の有名店だけでなく、より多くの人に体感してもらうために企画されたのが「ガストロ北九州」。「北九州市のすしの凄みを、誰もが体感できる場を作りたい」という思いが企画の出発点だったといいます。

さらに、北九州市が誇るのはすしだけではありません。さまざまなジャンルに魅力的な飲食店が存在することも知ってもらいたい──そんな思いに賛同した店主たちが集まり、今回のイベントが実現しました。
北九州の名店が一堂に! 会場を歩いてみた
まず目に飛び込んできたのが、ずらりと並ぶ「すしの都 北九州市通り」。普段はそれぞれの店で腕を振るう職人たちが、目の前で次々とすしを握っていく光景は壮観です。

すし以外も充実しており、「北九州市はうまい通り」には「うなぎ処いち川」「焼きうどん専門店 きつね」などが登場。「肉祭り通り」でも北九州ならではの食を楽しめます。

さらに、日本酒の蔵元が集まる「蔵元、再始動。」も同時開催。会場を一周するだけで、「北九州にはこんな店も、こんな味もあったのか」と気づかされます。

そして会場中央の櫓にも、このイベントならではの狙いがありました。
実行委員会が目指したのは、職人の技を四方から間近に見ることのできる“劇場”のような空間。そして、食とは切り離せない“音楽”にまでこだわる徹底ぶりです。

すしは完成した一貫を味わうだけでなく、職人の所作や客との対話まで含めて楽しめるもの。だからこそ「食べる」に加えて、「見る」「聞く」ことでも食を楽しめる会場になっているのです。

コインを握りしめてブースへ! いざ実食タイム
ひと通り会場を見て回ったところで、実食タイムへ。
会場内で料理やドリンクを楽しむために使うのが「ガストロコイン」。入口の販売所で当日券を購入し、まず向かったのは「すしの都 北九州市通り」です。

数ある店の中から選んだのは、「海鮮処 寿司 海人(かいと)」。関門の旬魚を中心としたすしを提供するお店です。

注文したのは「海人にぎり」。
目の前で職人が魚を切り、シャリを取り、握っていきます。その動きには一切の無駄がなく、まさに“技”といえる姿でした。

生エビ、ヒラマサ、アオリイカ、赤イサキ、メイチ鯛、サーモンというラインアップに、さらにアジを2貫追加しました。皿を受け取り、ノンアルコールビールも調達。これで役者はそろいました。
まず目に留まったヒラマサから口へ。魚の旨みが広がったかと思えば、シャリが口の中でほどけていきます。
食材のポテンシャルと職人の技──その二つが組み合わさって初めて完成する「すし」のおいしさを、あらためて実感します。
次の一貫、その次の一貫へと、気づけば、あっという間に皿は空になっていました。
早くも売り切れ? それでもうなぎが食べたい
すしを堪能したところで、次なるターゲットは「うなぎ」。会場を歩いているときから、蒲焼きの香ばしい匂いが気になって仕方ありませんでした。
そこで「うなぎ処いち川」へ向かうと……なんと、すでに売り切れでした。

出遅れたことを後悔しますが、一度「うなぎモード」になった胃袋は簡単には引き下がってくれません。
そこで思い出したのが、「TERUZUSHI 2ndEDITION」にあった「うなぎロール」。踵を返して向かいます。
飴色に輝くうなぎとご飯が、海苔で美しく巻かれていく様子を眺めながら待つことしばし。

完成したうなぎロールを手にして、今度は日本酒が並ぶ「蔵元、再始動。」へ向かいます。
<うなぎ×北九州の日本酒>のマリアージュ
選んだのは、地元・北九州で親しまれている「天心」を醸す溝上酒造。うなぎロールと合わせることを伝えると、おすすめしてくれたのが「3890」です。

味わってみると、しつこさのない甘みとともに、豊かな余韻が残ります。
続いて、うなぎロールを口へ運ぶと、蒲焼きの甘みと旨み、そして海苔の香りが一気に口いっぱいに広がります。

そこへ、もう一度「3890」。濃厚なうなぎと存在感のある日本酒が互いに主張しながら、不思議と一つにまとまっていきます。
「料理を食べる」「酒を飲む」というそれぞれの体験が、組み合わせることでさらに楽しくなり、料理単体ではなく、土地の酒や文化まで一緒に味わう──これもまた、「ガストロ北九州」が提案する“北九州市の食の楽しみ方”なのでしょう。
「一軒のすし店は、地域を変えられるか」
「ガストロ北九州」は食べることだけを楽しませるイベントではありません。
この日、会場中央のステージ(櫓)で先陣を切って行われたスペシャルトークセッションのテーマは、「一軒のすし店は、地域を変えられるか~照寿司から考える、北九州市ガストロノミーの未来~」。
登壇したのは、「照寿司」(北九州市戸畑区)の店主・渡邉貴義さんと、ガストロノミープロデューサーの柏原光太郎さんです。
「照寿司」店主の渡邉貴義さん(右)と、ガストロノミープロデューサーの柏原光太郎さん(左)渡邉さんが語ったのは、北九州市では新鮮でおいしい魚が身近にあるため、その価値を地元の人自身が「当たり前」だと思ってしまいがちだということ。ところが、外へ出てみると見え方が変わるといいます。
北九州の魚を世界の人に食べてもらったり、海外で北九州の魚や食文化を伝えたりすることで、外からの評価を通して、地元にあるものの価値があらためて見えてくる──渡邉さんは、自身が各地へ出ていくことで「北九州市ってどこだろう」と興味を持ってもらい、最終的には北九州市へ足を運んでもらう流れをつくりたいという思いを語りました。

それはまさに、現在北九州市が進めている「すしの都 北九州市」の考え方とも重なります。
一貫のすしを支えているのは、職人だけじゃない
北九州には世界的に知られる店もあれば、地域に根付いた街のすし店もあり、回転ずしもあります。
価格帯もスタイルも違い、それぞれの料理人が「この魚がおいしい」と考え、それぞれの形ですしを提供しているからこそ、街として豊かなすし文化が生まれます。

そして、一貫のすしを作っているのは、目の前で握る職人だけではありません。魚を獲る漁師、市場で働く人、食材を店まで届ける人など、たくさんの仕事がつながって、ようやく一貫のすしが客の前へ届きます。
食を街の魅力にするということは、有名な料理人や店だけを盛り上げることではなく、その後ろに広がる産業や人々にも光を当てることなのだと気づかされます。
「すしの都」は入口 北九州市の食全体を発信へ
続いて行われた主催者挨拶で武内和久北九州市長は、北九州市には海産物や農産物をはじめとする豊かな食材があり、それを料理へ変える人たちがいることに触れました。
そして、現在取り組んでいる「すしの都 北九州市」についても、すしはあくまで“入口”だという趣旨を語ります。

すしをきっかけに北九州市を知ってもらい、その先にある海の幸、山の幸、料理人の技など、北九州市の食全体を全国、そして世界へ発信していく──「ガストロ北九州」が目指しているのは、「すしがおいしい街」という一点だけではなく、「食を目的に訪れたくなる街」なのです。
北九州市ガストロノミープロジェクト実行委員会の高田実行委員長からも、北部九州はもともと海の幸、山の幸に恵まれ、近年は育て方や獲り方などの技術も進化しているという話がありました。

そして会場に集まったのは、そうした食材にこだわり、「どうすればもっとおいしくなるか」を探求している店ばかり。来場者にも、この日味わった店や食材、イベントそのものを市内だけでなく市外、さらには海外へ発信してほしいと呼びかけました。
食べる人もまた、北九州市の食を伝える1人になる──そんな考え方も、このイベントを象徴しているように感じます。
「2年目で実現できるとは……」想定を超える反響
実際に初日を終えようとしていた会場では、主催者側の予想を超える反響もあったようです。北九州市で「すしの都 北九州市」の取り組みに携わる冨吉友紀さんに、会場で話を聞きました。

取り組みがスタートした当初から、すしだけではなく、北九州市の「食」全体を体験してもらえるイベントをやりたいという構想があったといいます。その根底にあるのは、北九州市の食そのものが街にとって大きな観光資源になり得るという考えです。
ただ食べる、ただ飲むだけではなく、食材について知る。職人の技を見る。料理人が料理に込める思いを感じる──今回の「ガストロ北九州」は、それらを一つの会場で体験できるイベントとして形になりました。

冨吉さん自身、「すしの都 北九州市」の取り組みが始まって2年目で、ここまでの規模のイベントを実現できるとは思っていなかったと振り返ります。来場者からは「見たことのない雰囲気」「新しい」「面白い」といった反応があったそうです。
出店者からも、想定していた以上に多くの人が訪れているという声が上がったといいます。実際、昼過ぎには商品が売り切れてしまった店舗もありました。

数字だけじゃない 「このイベントのために北九州へ帰る」未来へ
一方で冨吉さんが強調していたのは、数字としての盛況ぶりだけではありません。
イベントへの出店に慣れていない店も少なくない中、料理人たちが普段とは異なる環境で準備を重ね、店を飛び出して参加してくれました。その背景には、「北九州市民を楽しませたい」「外から来る人を楽しませたい」「食で喜ばせたい」という思いがあったといいます。

料理人、生産者、行政、運営スタッフ、そして食べる人──「ガストロ北九州」は、北九州市の食に関わるさまざまな人の思いが集まる場所でもあったのです。
初開催となった「ガストロ北九州」。今後について尋ねると、冨吉さんから印象的な言葉が返ってきました。
目指しているのは、毎年この時期になると市民が「あのイベントの季節だ」と思い出すような存在。そして出店者にとっても、「いつかあのイベントに出たい」と目標にしてもらえるような舞台です。
さらには、北九州市を離れて暮らしている人が、「ガストロ北九州があるから、北九州に帰ろう。訪れよう」と思うようなイベントへ──それが実現すれば、「食」は単に地域で消費されるものではなく、人が街を訪れる理由になります。

北九州市が期待しているのも、まさにそうした「目的型観光」です。
「北九州のすしを食べたい」「北九州の食を体験したい」という理由で市外から人が訪れれば、飲食店だけではなく、宿泊や観光など街のさまざまな場所へ効果が広がっていきます。
北九州市の“うまいもの”と、その“向こう側”
会場を歩いて、すしを食べ、酒を飲み、料理人たちの仕事を眺め、食をめぐる話に耳を傾ける──そうして過ごしていると、普段何気なく口にしている北九州の魚や料理の向こう側に、たくさんの人の仕事や思いがあることに気づかされます。

「北九州市には、うまいものがある」
それは市民にとっては当たり前すぎて、案外気づきにくい魅力なのかもしれません。その“当たり前”を一つの場所に集め、あらためて体験できるようにした「ガストロ北九州」。

食べて、飲んで、お腹いっぱいになった先に残ったのは──。
「北九州市って、やっぱり“うまい街”だな」
そんな、ちょっとした地元への誇らしさでした。
(提供:北九州市都市ブランド創造局観光にぎわい部すしの都課)

