珈琲のある街/ハニー珈琲小倉店「スペシャルティを根付かせたパイオニア」

今や日本を席巻するコーヒーの一大ムーブメント。自宅で過ごす時間が長い今だからこそ、スペシャルティコーヒーを豆から煎れるスロ-ライフを楽しんでみませんか。スペシャルティコーヒーとは、国際審査員の評価で80点以上の点数がつけられた特別なコーヒー豆のこと。そんな豆を北九州で自家焙煎して販売、通信販売もされるコーヒー豆店のストーリーをご紹介します。

#01 リベルタコーヒー「人それぞれコーヒーとの付き合い方が違う」
#02 焙煎屋 森山珈琲「それほどスターバックスが圧倒的だった」
#03 珈琲ごゝろ 夜宮珈琲倶楽部「女性焙煎士として生きる」
#04 自家焙煎珈琲工房ロッシュ「幻の珈琲の味を求めて」
#05 ハニー珈琲小倉店「スペシャルティを根付かせたパイオニア」

かけがえのない一日に飲むコーヒー/ハニー珈琲 小倉店(小倉北区)

小倉駅南口の郵便局横にある小倉店(写真提供・ハニー珈琲)

かのハニー珈琲が小倉駅前ガーデンシティ小倉に支店を出すという衝撃のニュースが走ったのは去年のこと。福岡市にスペシャルティコーヒーを広め、今や九州に10店舗を構える超有名店が北九州に初上陸しました。最高級の豆のおいしさを優れた焙煎技術で引き出せる名店中の名店…というこちら側の多大な期待を、店舗統括マネージャーの井崎康英さんがいい意味でくつがえしてくれました。

―まずお店の歴史を教えてください。
1996年に、福岡市南区野間大池で創業者の井崎克英が、通っていた町の喫茶店を引き継いだのが始まりです。それまでは24年間、塾を開いて先生をしていました。お店を引き継いでからスペシャルティコーヒーに出会い、その時に感じた「驚きや幸せ」をお客さまにも体験して欲しいというのが井崎の変わらない願いです。

―スペシャルティコーヒーを福岡に根付かせたパイオニアと言えばハニー珈琲さんですが、ここまでこられた成功の秘訣は何だと思いますか?
まずスペシャルティコーヒーの登場で、コーヒーが「正解」のある飲み物に変わったことが大きいと思います。豆に点数がつきますから間違いなくおいしいコーヒーをお客さまにご提供できる。そして最高品質の豆にこだわって仕入れています。農園とのより良い関係を築きあげることを最重要視して持てる味わいを100%引き出せるような自家焙煎をしています。もともと福岡には時代をつかむ感度の高い県民性があって、多様なスタイルでも受け入れる文化が根付いていると思います。そこでどんなお客さまにもお店に来ていただけるように、従業員の末端までお客さまに上から目線ではなく「真心で接する」というサービスを徹底しました。

コーヒーは主役じゃない

丁寧なフレンチプレス(写真提供・ハニー珈琲)

―真心で接するというのは具体的にはどういうことですか?
うちの主なお客さまは主婦の方たちです。主婦の方たちというのは、コーヒー豆を買ってくださりお家でご家族と飲んでくださる。その時においしいコーヒーを飲んで生活の質を少し上げる。あくまでもコーヒーは主役ではありません。そのために、気軽にご利用いただける焙煎豆屋として従業員にお客さまに対して「コーヒーの先生になるな」「嘘はつくな」ということを繰り返し教えています。一緒にお客さまのお好みのコーヒーを探すお手伝いをしたいと思っています。

―コーヒーの先生になるなという教えは新鮮ですね。ではハニー珈琲さんのコーヒーの特徴はなんですか?
幅広く取り扱っていますが、まずはコーヒーを楽しんでいただくためにハウスブレンドと季節の極上珈琲、個性豊かな単一農園、オークションに入賞したコーヒーまでご用意しています。季節感を感じていただくために今月(5月5日時点)は「コーヒーのさえずり」という春のコーヒーをご用意しています。また「今月のもうけもん」という新着のコーヒーを少しお安くしたお得なコーヒーもだしており、こちらは「毎回違うコーヒーが飲みたい」という方に人気があります。

―色んなコーヒーが身近に感じられますね。ハニー珈琲さんは異業種とのコラボレーションも多いように思います。
当社では、佐賀県の武雄市こども図書館内の「九州パンケーキカフェ」や、蔦屋書店さんの「九州のBOOK&CAFÉ」をコンセプトにしたコラボレーションカフェにもコーヒー豆を卸しています。ほかにも全国展開のアパレルチェーン店「niko and…」のショップ併設カフェにコーヒー豆の提供をしたり、コーヒーの九州ブランドとして、お客さまが本を読む時、お買い物に行った時に寄り添えるコーヒーでありたいと思っています。

上質な空間で最高のコーヒー体験を

くつろぎの店内(写真提供・ハニー珈琲)

―北九州に出店された理由と手ごたえを教えてください。
小倉駅前にできる新しいビルのテナントに誘われたのがきっかけです。ただ少し奥まった場所にお店があるため、入りにくかったと言われるお客さまが多かったのが今後の課題です。それが分かったのが、コロナウィルスによる緊急事態宣言が発令される前からカフェの営業を自粛して、少数の(現在は1人)従業員で豆の店頭販売を始めたことがきっかけでした。店頭販売になってから気軽にお客様が立ち寄ってくださるようになって少しずつ手ごたえを感じています。

―北九州の皆さんにハニー珈琲さんの良さが伝わるといいですね。
「上質な空間で最高のコーヒー体験」をしていただきたいですね。ハニー珈琲独自の評価で選び抜き、自家焙煎でみがき上げたコーヒーを北九州の皆さんにご紹介したいと思っています。

―それでは最後に、先ほども少し触れられましたが、今はどのようなコロナウイルス対策をされていますか?
小倉店では営業時間を短縮し(12:00~18:00)土日はお休みとしています。カフェの営業は自粛し、テイクアウトと豆の店頭販売のみを行っています。コロナウィルスの一日も早い終息を願い、お客さまのコロナウィルス感染予防を最優先として、また従業員の安全も守るため、1人の勤務に制限しています。そのため、接客中などお電話での対応が難しい場合もあり、お客さまにご不便をおかけすることもあるかと思いますが、どうかご理解いただきたいと思います。

―お客さまはもちろん、従業員の皆さんも守りたいというハニー珈琲さんの細やかな配慮は素晴らしいと思います。ご多忙の中、ありがとうございました。
九州ブランドとして打って出る破竹の勢いのコーヒー店というイメージはほんの表面的なことであり、ハニー珈琲さんにしっかりと根付いていたのは、お客さまにおいしいコーヒーを楽しんでもらいたいというひたむきな願いでした。今だからこそ、心をこめて家族のためにコーヒーを煎れ、今日という日がかけがえのない一日であることをかみしめながら笑いあいたい。コーヒーにはそんな力があるのだと信じています。名店と言われるのには訳がある。改めて心に響いた言葉の数々でした。

(編・北九州ノコト編集部)
*4月29日に電話にて取材を行いました。

■ハニー珈琲の焙煎度=中煎り~やや深煎り
■人気の豆=ブレンド ぼくらのケニア

#01 リベルタコーヒー「人それぞれコーヒーとの付き合い方が違う」
#02 焙煎屋 森山珈琲「それほどスターバックスが圧倒的だった」
#03 珈琲ごゝろ 夜宮珈琲倶楽部「女性焙煎士として生きる」
#04 自家焙煎珈琲工房ロッシュ「幻の珈琲の味を求めて」
#05 ハニー珈琲小倉店「スペシャルティを根付かせたパイオニア」

かけがえのない一日に飲むコーヒー/ハニー珈琲 小倉店(小倉北区)

関連記事一覧