美味しさを喜べる嚥下食を実現/「嚥下食工房 七日屋」所長・牟田園満佐子さん
試行錯誤をして嚥下食を食べやすく
甲木:赴任された特別支援学校では、どのような事に取り組みましたか。
牟田園:特別支援学校に赴任してすぐ行かせて頂いた研修会で、私の師匠でもある金谷節子先生と出会いました。日本で初めて嚥下食を作っている病院の管理栄養士で、講演の中で言われていたことは、嚥下食は「形を残しつつ軟らかさを調整していく」ことが大事だと。それを聞いたとき「これだ!」と直感しました。それから数年、試行錯誤を繰り返していた時、教育委員会で特別支援学校の食事を見直す検討委員会が立ち上がり、当時の私が勤務していた北九州養護学校で1年間の試行が始まったんです。早速、メニュー開発と調理法を見直しました。今までは出来上がったものを再調理していましたが、別調理と言って、肉や魚を調理する前の段階でミキサーにかけてムース状にする、今までとは全く異なる調理法を取り入れました。そして1年後の2003年に北九州市内の2つの特別支援学校で別調理による段階食が始まり、特別支援学校の子供たちは、とても食べやすくなり残滓は全く無くなりました。
梁:凄いですね。
「七日屋」を立ち上げたきっかけ
甲木:学校給食から「七日屋」を立ち上げたきっかけをお聞きしたいのですが。
牟田園:在任中、子どもたちが夏休みなどの長期の休みに入ると体重が減ることがわかっていたので、この子たちは卒業した後、どんな食事を取るんだろう、卒後の食事の支援ができないかなぁ~と思っていました。退職してプラプラしてると、障害者の福祉サービスをしている会社の社長から施設の子どもたちに美味しい食事を食べさせたいけど、それを作ってくれないかと、お話を頂いたのがきっかけで、「七日屋」を立ち上げたのが2019年の4月です。
甲木:そうだったんですね。
牟田園:社長が「七日屋」のネーミングをしたんですけど、七日という字を縦に書くと旨(うまい)とも読めるだろう。「毎日旨いもの」をという社長の思いから「七日屋」という名前になったんです。
甲木:そうなんですね。良くできていますね。
これから目指していること
甲木:牟田園さんがこれから目指しているとはどういう事ですか。
牟田園:とにかく、お困りの方に命を繫ぐ食事をお届けできるようにしたいというのが一番の願いです。自販機だとか宅配とかいろんな方法でお届けしたいと思っています。そしてその方たちの家族も含めて笑顔になって頂けたら私は幸せです。
梁:牟田園さんの話しを伺っていると、料理と切り離せない科学は、真心の上にあると思いました。
牟田園:そうですね。科学(サイエンス)にもハートがありますよね。ほんとに思いがないとできないと思います。
甲木:今回は、八幡東区西本町にある「嚥下食工房 七日屋」 所長の牟田園満佐子さんをお迎えしてお話を伺いました。牟田園さんありがとうございました。
梁:ありがとうございました。
牟田園:ありがとうございました。
〇ゲスト:牟田園満佐子さん(“嚥下食工房 七日屋” 所長)
〇出演:甲木正子(西日本新聞社北九州本社)、梁京燮(同)
(西日本新聞北九州本社)