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夏の特別展「とぶ 空を旅する生きものたちの大冒険」を学芸員が徹底解説! “史上最大の飛翔生物”から“北九州の渡り鳥”まで<いのちのたび博物館>
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(アイキャッチ画像:「ケツァルコアトルス」の生体復元模型)

生きものたちは、どのようにして“とぶ”という能力を獲得したのでしょうか。

その秘密に迫る夏の特別展「とぶ 空を旅する生きものたちの大冒険」が、北九州市八幡東区の「いのちのたび博物館」で開催されています。

同展には、翼竜や鳥類、昆虫、コウモリ、トビウオ、植物まで、多彩な“とぶ”生きものが勢ぞろい。巨大模型や貴重な標本、映像展示を通して、飛行の進化や渡りの不思議を体感できる内容になっています。

今まで考えたこともなかった“とぶ”仕組みや進化に触れられる展示で、いずれも楽しみながら学べるので、夏休みの自由研究にも役立ちそうです。


今回は、担当学芸員・中原さんの案内で実際に展示を見てきました。夏休みに親子で訪れたい見どころなどをピックアップして紹介します。

西日本最大級の総合博物館「いのちのたび博物館」

自然史と歴史を一体的に学べる「いのちのたび博物館」は、西日本最大級の総合博物館です。約9500点の展示資料と86万点を超える収蔵資料を誇り、生命の進化から人類の歴史までを体感できます。


今回の夏の特別展では、この充実した施設ならではのスケールで「空を飛ぶ生きもの」の世界を紹介します。

夏の特別展「とぶ 空を旅する生きものたちの大冒険」

今回の特別展のテーマは「飛ぶ」。鳥や昆虫だけではなく、翼竜やコウモリ、トビウオ、トビイカ、さらには風に乗って移動する植物まで、さまざまな“とぶ”生きものが集結しています。

生きものたちが長い進化の中で獲得した飛行能力や、壮大な渡りの秘密を、標本や映像を交えて分かりやすく紹介しています。

展示は、「出現!空をとぶ生きもの」「とぶのに適した形・飛び方」「空を旅する」の3章で構成。各章の見どころをポイントごとに見ていきます。

「出現!空をとぶ生きもの」進化の歴史をたどる

“空をとぶ能力”は、一度に誕生したものではありません。3億年以上前に昆虫が最初に空へ進出し、その後、翼竜や鳥類、コウモリなど、それぞれ異なる進化の道を歩みながら飛翔能力を獲得してきました。

「出現!空をとぶ生きもの」では、空を飛ぶ生きものたちの進化の歴史をたどります。

「地球上で最初に空を飛んだ動物」と聞いて、どんな生き物を思い浮かべるでしょうか。

実は3億年以上も前、まだ恐竜も出ていない時代に最初に飛んでいた動物は昆虫です。

ここには、はねを広げると70センチもあるという史上最大級の飛翔昆虫「メガニューラ」の生体復元模型を展示しています。

さらには、脊椎動物で初めて空へ羽ばたいたとされる翼竜たちの化石やそのレプリカも登場。翼竜は飛行能力を持った、恐竜と同じ時代を生きた爬虫類のグループです。

また、翼竜とは別に、恐竜も独自の進化を続けました。その中には羽毛を持つ種類も現れ、こうした恐竜が現在の鳥類の祖先につながったと考えられています。

印象的だったのは、コウモリの進化にまつわる話。中原さんによると、約5200万年前にはすでに現在の形に近い姿のコウモリが現れた一方で、それ以前の姿が分かる化石は見つかっていないそうです。

展示を通して、生きものの進化には今もなお多くの謎が残されていることを知ることができました。

体のつくりを楽しく学ぶ「空をとぶのに適した形・飛び方」

「空をとぶ」と一言でいっても、生きものによって飛び方はさまざまです。

羽ばたいて飛ぶ鳥や、膜を広げて滑空するコウモリ、ヒレを使って海面近くを滑空するトビウオなど、それぞれの体のつくりは飛び方とともに進化してきました。

続く2章「空をとぶのに適した形・飛び方」では、動画や標本を通して、生きものごとの飛び方の違い・共通性や、その体のつくりを楽しく学ぶことができます。

まず目に入ってくるのは、史上最大級の飛翔生物「ケツァルコアトルス」の生体復元模型です。

今回の目玉だといい、翼を広げると10メートルという非常に大きな実物大の模型は、今にも動きそうなほどリアルでした。

特に注目してほしいポイントは、翼を支えている指です。真下から見上げると、翼を支えるために特定の指が長く発達していたり、飛膜を動かすための特徴的な体のつくりをしていたりと、翼竜ならではの特徴を間近で観察できます。

ケツァルコアトルスは、その巨大さゆえに飛べなかったのではないかともいわれているそう。未だ解明されていない謎を考えながら展示を楽しむのも面白いですね。

また、鳥の羽ばたきについては、実際に胸骨の標本や飛び方の解説を見て学ぶことができます。

“飛べる鳥”と“飛べない鳥”の胸骨の違いも注目ポイントです。

私たちにもなじみのある「むね肉」や「ささみ」を例に解説してくれた中原さん。身近なものに例えながら説明してくれるので、飛ぶための体のつくりをより理解しやすく感じました。

鳥といえば「羽ばたく」姿を思い浮かべる人も多いですが、ハチドリの「ホバリング」や、哺乳類のモモンガの「滑空移動」など、展示を通してさまざまな“とび方”の違いに触れられます。


自身の意思がなくても飛ぶ生き物として、「風に乗る植物」が紹介されていました。身近な花粉などもその一つですね。


トビイカやトビウオなど、海にも“とぶ”生き物がいることに驚かされます。

展示は模型や標本だけでなく動画も交えて紹介されているので、小さな子どもでもイメージしやすく、親子で楽しめそうです。

他にも、飛んでいる時と泳いでいる時で翼の使い方を変える「水陸両用の鳥」の研究などに触れることができました。

飛べなくなるような進化を遂げている生き物もあり、進化の過程で必要がなくなったものや、オスとメスがつがいになるとお互いがはねを食べ合う昆虫など、その理由にも注目です。

自然界の大冒険「空を旅する」北九州に飛来する渡り鳥など

飛ぶ能力を身につけた生きものたちは、食べ物やすみかを求めて長距離を移動するようになりました。数千キロ、ときには数万キロにも及ぶ壮大な「渡り」は、まさに自然界の大冒険です。

最後の章「空を旅する」では、北九州に飛来する渡り鳥や、海を越えて移動するチョウなど、多彩な生きものたちの旅を紹介しています。

「渡り鳥」といえど、「夏鳥」「冬鳥」「旅鳥」などその区分は様々。ここでは、たくさんの渡り鳥が区分ごとに展示され、移動経路も一緒に展示されています。

渡り鳥の存在がまだ理解されていなかった時代、毎年同じ時期に現れる鳥を不思議に思った人々は「エボシガイ」というフジツボに近いなかまから鳥が生まれると信じていたそうです。

生きものの進化だけでなく、歴史的なエピソードに触れられるのも本展の魅力です。

九州北部にも多数の渡り鳥が飛来しているといい、特に北九州は「渡りの十字路」と呼ばれ、たくさんの渡り鳥のルートになっているのだそうです。

カブトガニで知られる小倉南区の「曽根干潟」は、現在もシギ・チドリの渡りの重要な中継地。春と秋に干潟に現れ、ゴカイやカニなどを食べて次の旅に備えるそう。

また、スグロカモメやクロツラヘラサギ、ツクシガモ、ダイシャクシギなどにとっても、越冬地として重要な場所です。スグロカモメは、春〜夏にかけて顔周りがまるで目出し帽をかぶったように真っ黒になるというエピソードも聞くことができました。

また、北九州市上空は様々なタカの渡り経路にもなっているのだそう。

門司区の風師山、小倉北区の足立山、若松区の高塔山、八幡東区の皿倉山が観察地として有名で、詳しい説明とともに、実際に観察した人の動画も上映しています。実際の映像を交えた展示なので、タカの渡りの迫力やスケールをよりリアルに実感できますよ。

世界中を旅する渡り鳥。その経路なども掲示されており、かなり広範囲を飛行していることを実感できます。

渡り鳥の経路調査に使われる「足環(あしわ)」などの展示もありました。最近では、小型のGPSを取り付けて調査する研究も進められているそうで、渡り鳥の研究方法についても知ることができます。

楽しみながら新たな発見を

1章から3章までの展示を通して、“とぶ”生きものの種類だけでなく、飛び方の違いや歴史、進化など、さまざまな視点からその魅力に触れることができました。

身近な昆虫や植物、北九州で見られる鳥なども紹介されているので、大人から子どもまで楽しみながら新たな発見ができそうです。

学芸員に聞く「この特別展で一番伝えたいこと」

展示をより深く楽しむために、担当学芸員の中原さんに今回の特別展の見どころや注目してほしいポイントを伺いました。企画に込めた思いや、普段は気付きにくい展示の魅力など、学芸員ならではの視点から紹介します。

企画に込めた思い〜注目してほしいポイント〜

中原さんが特に注目してほしいと話していたのが、鳥たちの渡りルートを紹介したパネルです。

鳥によって通るルートはそれぞれ異なり、「この鳥はこんな場所を通るのか」「この2種類は同じルートをたどるんだ」といった、さまざまな発見があるといいます。

また、研究が進んだことで、想像以上に広い範囲を移動していたことや、遠くまで渡っていることも判明。そうした渡り鳥の意外な生態にも注目してほしいとのことです。

渡りルートの解明には、足環を使った長年の調査に加え、近年はGPSを活用した研究も進んでいます。これまでの調査で積み重ねられたデータにより、鳥たちがどのようなルートをたどっているのかが、より詳しく分かるようになってきたそうです。

会場に飛んでいる<28の生き物>

もう一つ見逃せないのは、会場上部に展示された28点にわたる飛ぶ生きものの標本です。

普段はとまっている姿でしか目にすることのない生きものを、今回は羽を広げて飛んでいる姿で展示しており、大きさはもちろん、翼の違いなども確認できます。

入り口近くにある「ケツァルコアトルス」の生体復元模型にも目を惹かれましたが、翼を広げると2.7メートルもの巨大な大きさになる「クロハゲワシ」の剥製はその大きさと色、羽のつき方などに魅了されます。

さらに、会場に用意された双眼鏡を使って細部まで観察できるのも見どころです。

双眼鏡の使い方もイラストを用いて詳細に書かれているので、誰でも利用できますよ。

展示がより楽しくなる<フォトスポット>

どのような順路で見ても楽しめるのは、いのちのたび博物館ならではの展示といえます。

今回は標本の近くに映像も用意されており、実際に飛ぶ様子をその場で確認できます。標本だけでは分かりにくい羽の動きや飛び方も映像と見比べることで、より理解が深まりそうです。

小さな子どもも楽しめる特別展限定のフォトスポットも登場。風師山の猛禽類たちと写真が撮れます。

子ども用の羽をモチーフにしたちょっとした仮装道具もあるので、生き物になりきって楽しく撮影ができますね。

来場する皆さんへ〜担当学芸員中原さんからのメッセージ〜

最後に、中原さんにメッセージを伺いました。

中原さんは、「まずはこんなにも多くの“とぶ”生きものがいることを実感してほしい」と話します。その上で、生きものごとの飛び方の違いや体のつくりを見比べることで、それぞれが空で生きるなかで生じた適応や進化にも注目してほしいと期待します。

また、大人にも楽しんでほしいポイントとして挙げたのが、渡り鳥の追跡調査など最新の研究成果を紹介していること。図鑑で知っている内容だけでなく、現在の研究で分かってきたことにも触れられるのが、この展示ならではの魅力だといいます。

さらに、北九州市は渡り鳥が行き交う「渡りの十字路」。地元の自然の豊かさを改めて知るきっかけにもなりそうです。

今回案内していただいた中原さんの等身大パネルもどこかに隠れていますよ。ぜひ探してみてくださいね。

夏休みは「空を旅する生きもの」の世界へ

夏の特別展「とぶ 空を旅する生きものたちの大冒険」には、巨大翼竜の迫力ある復元模型や貴重な標本、映像展示など、大人も子どもも夢中になれる内容が詰まっていました。

生きものたちの飛び方や進化の過程はもちろん、世界を旅する渡り鳥の生態や、北九州市が「渡りの十字路」と呼ばれる理由など、身近な自然への新たな発見にもつながります。

夏休みの思い出づくりはもちろん、自由研究のテーマ探しにもぴったり。生きものたちが空を飛ぶ秘密を、ぜひ会場で体感してみてはいかがでしょうか。

「とぶ 空を旅する生きものたちの大冒険」開催概要

■期間/2026年7月18日(土)~9月23日(水・祝)※会期中無休
■開館時間/9:00~17:00(最終入館16:30)
■会場/北九州市立自然史・歴史博物館(いのちのたび博物館)北九州市八幡東区東田2-4-1
■料金/大人1000円、高大生600円、小中生500円 ※常設展とのセット券あり

詳細は夏の特別展 「とぶ 空を旅する生きものたちの大冒険」特設ページから確認できます。

<提供:北九州市立自然史・歴史博物館(いのちのたび博物館)

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