署名1万7千筆「樋口さんがいるところが昭和館です」/小倉昭和館株式会社代表取締役社長・館主 樋口智巳さん
西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。
4月の旦過火災の後の8月 「まさか?」
甲木:おはようございます。西日本新聞社 ナビゲーターの甲木正子です。
梁:同じく、西日本新聞社の梁京燮です。
甲木:梁さん、今日は、去年の8月に燃えてしまった小倉昭和館のお話です。結構通いましたね。
梁:本当に、よく映画を見に行きました。
甲木:今日はですね。その小倉昭和館の館主であり、今は小倉昭和館株式会社の社長になっておられる、樋口智巳さんをゲストにお招きしています。樋口さん、よろしくお願い致します。
梁:よろしくお願い致します。
樋口:よろしくお願い致します。
甲木:本当にようこそいらっしゃいました。
樋口:ありがとうございます。
甲木:昨年の8月の火災以降、心配していらっしゃるリスナーの方も全国にたくさんいらっしゃると思います。こうしてお元気でスタジオにいらして頂いて、再建に向けてのお話が聞けるというのは、本当に嬉しく思っています。ようこそおいで下さいました。
樋口:ありがとうございます。いつも応援して頂いて、本当に心よりお礼申し上げます。
甲木:悲しい振り返りになるかもしれないんですけれども、去年の8月の火事の時に、私たちもニュース映像で、樋口さんが泣き崩れて、息子の直樹さんに肩を抱かれてる映像が目に焼き付いて離れないんですけど、嘘でしょっていう感じでしたよね。
樋口:そうですね。4月も火災がありましたから、まさか同じ場所で、すぐ近くの場所が火事なんてと思いました。最初はあのニュースを見てる方々も、4月の火災の映像だと思われたのではと思うんですよね。ところがやはり昭和館に火が入った段階で、皆様「あっ、これ今の火事なんだ」と思ってたみたいですね。
火事にはすごく気をつけていた
甲木:4月の時は昭和館は無事で、でも8月のニュースで昭和館に火の手が回って、「あっ、これ嘘のニュースじゃないんだ」っていうのをみんな思われて、本当に樋口さんは、私が前からお聞きしてたんですけど、ものすごく火事に気を付けていらして、漏電とか絶対させてはいけないと言われていましたが、あのような巻き込まれ方で燃えてしまって、樋口さんご自身とか、そのご家族の落胆もそうですけど、あの時の街の人たちの落胆ぶりが凄かったですよね。
樋口:本当に悔しい思いもありましたけれども、それよりも皆様に申し訳ないという気持ちで、私はいっぱいだったんですね。閉館することを決めて、それから準備をして皆様にご提示していくのではなく、皆様が憩いの場として下さっている映画館を失ってしまったということ、明日行こうと思ってたお客様が突然行けなくなったということは本当に申し訳なかったですね。
甲木:でも、樋口さんの過失では全然ないので、樋口さんが申し訳ないと言うことが、私たちには申し訳ない気持ちですけど。栗原小巻さんとか、光石研さんとか、そういう著名な方からも、ずいぶんいろんな励ましの言葉が来ましたね。
樋口:はい。次の日ぐらいから、たくさん直接お電話を下さったり、メールを頂いたり、本当に心配していただきました。ありがたいことだと思います。
1万7千筆の書名は47都道府県すべてから
甲木:市民からはどんどん再建を望む声が高まっていましたけども、署名がどれぐらい集まったんでしょうか?
樋口:1万7千筆を超えました。ご協力頂いた皆様、どうもありがとうございました。
甲木:それだけ愛されてるってことですよね。
樋口:短期間に、しかも47都道府県全てからです。
甲木:そうなんですね。私は宮崎県の方には頼みました。
樋口:ありがとうございます。
甲木:あの署名は、まさにその小倉昭和館の再建をサポートしたいと、再び昭和館をっていう、そういう意志のある人たちの署名でしたけど、樋口さんとしては、ありがたいことである一方、やっぱり重たかったんじゃないかなと思いますが。再建するとなれば当然ものすごい資金もかかるわけですし、しかもいくら昭和館が愛されてた映画館とは言え、このご時世ネットフリックスなどがあって、映画館というご商売がこれから、ものすごく発展するかなって言うこともあるし、樋口さんが決断なさっても、昭和館の土地は、もともと地主さんがいらして、樋口さんが建てられるものじゃなかったんですよね?
樋口:そうなんです。実は今度の火災で皆様が「えっ、そうだったの」って初めて知った方もいらっしゃると思うんですが、昭和館は土地も建物も昭和館のものではなかったんですね。ですから、家賃を毎月家主さんにお支払いして営業してたんです。焼けてしまったら、権利もなければ、営業権というものも無くなります。家主さんも単に昭和館のためにというよりも、この街の文化とか、旦過市場とか、いろんなことを考えていて、昭和館のためだけにやっているわけでは絶対にないんですね。そこを大きな目で見て下さったんだと思うんです。本当にありがたいことだと思います。
甲木:地域のためとか、文化振興のためということですね。それで2月1日に小倉昭和館株式会社を立ち上げられて、樋口さんが社長になられたということですね。
樋口:はい。最初に“代表取締役社長”と記載された名刺を作ったんですけど、すぐ作り直しました。これは絶対無理と思い、代表取締役・館主にしたんですね。やっぱりこの館主というのが一番ぴったりくるし、本当はその横にもう一つ、“売り子”って付けたかったんですけど(笑)
甲木・梁:(笑)
甲木:その新会社を設立していよいよ今、再建に向けて動き出してるんですけど、残念ながら今日はお時間が来てしまったので、来週はその楽しい再建計画について、いろいろお話を伺いたいと思います。梁さん、樋口さんと久しぶりにお話をしていかがでしたか?
梁:すごく明るい前向きな樋口さんに会えて、とても嬉しいなあっていうのが一番の印象です。甲木さんからずっと詳しい話は聞いていて、命があって良かったねっていうのが、本当に良かったなと思います。
樋口:ありがとうございます。
梁:逆にありがとうございます。
小倉昭和館の軌跡をまとめた冊子
甲木:そして最後に一つ宣伝をしなければいけないことがあります。樋口さんが何もかも焼けてしまったっておっしゃったんですけど、樋口さんのお仕事はですね、西日本新聞が作ったこの冊子に詰め込まれています。“復活の夢を一緒に”という小倉昭和館の軌跡をまとめたカラー冊子を作ったんですけれども、2013年の5月から10年間、樋口さんが館主として、どのようなお仕事をされたかっていう記事を、全部まとめた冊子になっております。これは西日本新聞にお越し頂いても差し上げることができますし、小倉井筒屋さんや湖月堂さん、北九州銀行さんのロビーなどで無料で配布しておりますので、読んでみたいと思われる方は、ぜひお手にお取りになって下さい。そして裏表紙には小倉昭和館復興義援金口座の番号が付いておりますので、皆様のお気持ちもお待ちしております。
樋口:ありがとうございます。
〇ゲスト:樋口智巳さん(小倉昭和館株式会社代表取締役社長・館主)
〇出演:甲木正子(西日本新聞社北九州本社)、梁京燮(同)
(西日本新聞北九州本社)