52歳のおぢさんがロンドンでインターンシップ? 北九州市立大学教授・眞鍋和博さん
西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。今回のゲストは、サステナブル北九州代表・SDGsコンサルティングで、北九州市立大学地域創成学群教授の眞鍋和博さんです。
ロンドンでインターンシップを体験
甲木:おはようございます。西日本新聞社、ナビゲーターの甲木正子です。
野口:同じく、西日本新聞社の野口喜久子です。
甲木:野口さん、先週のお話とても面白かったですよね。
野口:50歳過ぎてイギリスに留学されて、毎週パブに通って楽しい生活をしていらっしゃるだろうなと想像してたんですが、実際は猛勉強して受験生以上にすごい努力をされたということを聞いて、そう思っていた自分を反省しました(笑)
甲木:私たちなら毎晩パブに通ったかもしれませんけれども(笑) 先週も学びのお話をいろいろお聞きしましたが、今日もその続きについて深掘りして行きたいと思っています。先週に引き続き、北九州市立大学教授で2022年から一年間、英国の大学院に留学なさった眞鍋和博さんをお迎えしてお話を伺います。眞鍋さん、今日もよろしくお願いします。
野口:よろしくお願いします。
眞鍋:よろしくお願いします。
甲木:先週は52歳で“おぢさん留学 in UK”ということで、イギリスのウィンチェスター大学の大学院でMBAを取得されたというお話を聞きましたが、そのウィンチェスター大学の大学院の近くにある寮生活から、途中でロンドンに引っ越されたんですよね。
眞鍋:そうですね。実際、9月に授業が始まって、授業が終わるのが翌年の6月ぐらいなんです。そこから9月末までに修士論文を書き上げて提出します。修士論文は先生と1対1でしますので、毎日会うわけじゃないんです。ウィンチェスターからロンドンまで1時間ぐらいかかりますが、ロンドンにも住みたかったので、一旦ウィンチェスターの寮を出て、ロンドンの学生寮に引っ越しました。そこでやりたかったことがインターンシップなんです。実際、企業で働きたかったので、インターンシップをしながら修士論文を書くということで、最後の2ヶ月ぐらいを過ごした感じですね。
インターンシップでの仕事は「サステナビリティ情報の開示提案」
甲木:どのような会社でインターンシップをされたんでしょうか?
眞鍋:日系の企業なんですが、ヨーロッパの現地法人企業で、世界的には2兆円ぐらい売上のある結構大きな企業の欧州本社のサステナビリティ部門でお仕事をさせて頂ました。
去年の7月末にEUは企業のサステナビリティ情報の開示基準というのを法制化しました。だいたい250名以上の企業は開示しなければならないということになり、いろいろ細かい基準が決まったことがEUから発表されたんです。私が勤務していたインターンシップの会社の中での私の仕事は、その基準に沿って何をどう開示しなければならないかということを部長に提案するということだったんです。
甲木:難しそうなお仕事ですね。
眞鍋:しかも相当複雑なんですよ。その欧州本社はロンドンに本社がありましたが、ご存じのとおりイギリスはブレグジット(離脱)していますので、EUではありません。だから正確にいうとその基準を守らなくていいけれども、いろんな例外事項と特別事項があり、例えば、子会社であってもこのぐらいの規模があったら開示しなければならないという基準があるんです。私が勤務していた企業は、ヨーロッパ各国に支店がたくさんあるんです。その基準も守るところと守らなくていいところもあり、また本社の役割としてここまでやらなければいけないということも細かく決まっています。それを一つずつ紐解きながら提案するという仕事です。
ヨーロッパは「サステナビリティ」の先進地
甲木:仕事の内容は具体的にいうと、どのような内容でしょうか?
眞鍋:例えば人権という面では、移民や貧困層にちゃんと仕事を提供できているのかを開示しなさいとか、男女やジェンダーによって賃金などの格差がないか、昇進に格差がないか、そのようなことに対して基準が決まっていて、企業はそれを報告しなければいけないんです。
甲木:大学院で一方的に学ぶだけではなくて、実際に実地で試せたということですね。
眞鍋:そうですね。私がヨーロッパを選んだ理由は、やはりサステナビリティの先進地だと思っていたからです。ヨーロッパの企業はすごく進んでいるんだろうと思い、インターンシップでそれを学びたかったんです。しかし意外と向こうの人たちも、戦々恐々としていて「EUがこんなこと決めやがって」みたいな感覚です。でも、守らないと投資が受けられなくなります。それからレピュテーション、つまり企業の評判が悪くなるということです。だから取り込まざるを得ないです。それで皆さん必死になってコストをかけて取り組んでいるということが分かって、先駆的といっても意外ともそうでもないんだと思いました。
甲木:皆さん心から納得してやっているわけではないんですね。でもEUはその方針をズバッと決めて、一斉にやりましょうという決断がすごいですよね。
眞鍋:かなりドラスティックだと思います。彼らは規範を作りたいわけです。ヨーロッパの人たちは、世界の中で戦えるのは頭脳だと思っています。だからルールを作って、それで世界の経済を回していくという自負を持っていますので、そこに日本が戦いを挑むのはかなり難しいのではないかと感じました。ヨーロッパの人たちは、自分たちのEU、アメリカ、中国、この3局で世界の経済が動いていると思っています。次にインドとアフリカの波が来ると。
日本はどうですか?と聞くと、一つは決断が遅いということです。何回もやり取りしてようやく契約が成立しても、取引が来年度からということになったりします。また、国際舞台に日本人が少ないということを聞きました。例えば交渉の場など、日本人が今、本当に少なくなっているらしくて、日本の産業が国内型になってきつつあるのではないでしょうか。だからもっと世界に打って出るような、チャレンジ精神のある若者たちを育てなければと強く感じているところです。
サステナビリティに貢献できる若者を育てたい
甲木:先生は大学で、留学の体験として学生にお話なさっているんですね。
眞鍋:そうですね。話もしますし、実際、学生と一緒に海外に行きます。今後はアントレプレナーシップ(起業家精神)の教育などに取り組んでいきたいと今考えているところです。
甲木:先生としては、次にチャレンジしたいことはありますか?
眞鍋:そうですね。今は目の前のタスクがいっぱいあって、長期的なビジョンを持っていないんですけれども、やはり地域社会や企業などの持続可能性ということと、それに貢献する若者を育てる教育という、この2つの軸はぶれないだろうと思っています。教育に関してはもちろん大学教育もそうですけど、高等学校から小・中学校まで、幅広く若者とらえることができたらと思っていますし、内容もサステナビリティだけではなくて、アントレプレナーシップなども含めていければと思います。
甲木:野口さん、今日のお話いかがでしたでしょうか?
野口:そうですね。先日、消滅してしまう自治体が九州にもたくさんあげられていました。ぜひ先生と一緒にいろんなことをご一緒して、地域がサスティナブルであるように、私たちもご一緒できたらと思いましたので、よろしくお願いします。
眞鍋:よろしくお願いします。
甲木:先週、今週の2回に渡り、北九州市立大学教授の眞鍋和博さんにお話を伺いました。眞鍋さんありがとうございました。
野口:ありがとうございました。
眞鍋:ありがとうございました。
〇ゲスト:眞鍋和博さん (北九州市立大学地域創成学群教授)
〇出演:甲木正子、野口喜久子(西日本新聞社北九州本社)