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「ストリートピアノがある街」で、私たちができること【北九州市】

(アイキャッチ画像はイメージ<写真AC提供>)

ここ数年で筆者が気になっていた、街での素敵なことの一つに、「ストリートピアノ」の存在があります。

街に「ストリートピアノがある」、こんな素敵な文化を根付かせてくれた人にぜひお会いしてみたい!

そこで今回は、2019年よりストリートピアノを置いて現在10台、一般社団法人ストリートピアノドネーションズの代表の本山晴子さんにお話をうかがいました。

知っていますか? 街に点在する「ストリートピアノ」

理事3人・監事1人の計4人で活動するストリートピアノドネーションズ。同団体が設置したストリートピアノは、北九州市内に7台、おとなり行橋駅と太宰府駅(西鉄)、県外は滋賀県草津市に各1台の計10台です。市内1番目は4年前、JR黒崎駅の改札内に設置されました。

昨秋には北九州市役所にも置かれ(写真上)、手作り竹楽器とのコラボで話題を集めたことも記憶に新しいのではないでしょうか。

ちなみに黒崎駅(写真下)と行橋駅には、先日、人気YouTuberよみぃさんが訪れており、企画名「ヤンキーに扮した有名YouTuberがストリートピアノ弾いて気付かれるまで帰れま10 in 北九州 by よみぃ」を筆者一家で観て沸きました。

ストリートピアノは誰でも弾ける素敵なもの。通りかかりの人がふと立ち止まり、置いてあるピアノを弾き出し、名前も知らない人が弾くピアノに誘われ、観る人はその音色に癒やされる…。そんな音楽とのふれあいは人の心を穏やかに、そして健康にしてくれます。演奏が終わり誰からともなく起こる拍手喝采。それに包まれ、会釈をして立ち去る演奏者…。「束の間の時間であっても奇跡的で感動的な交流は、人々の心を優しく豊かにしてくれるのだなぁ」と筆者はそう実感しています。

「ストリートピアノを置くことが目的じゃない」 これからの社会へ願いをこめて

「ピアノを置くことが目的じゃないんです」。そう語る本山さんの紆余曲折の人生なくして、現在のストリートピアノの存在は語れません。

幼い頃からピアノに親しんできたという本山さんは、熊本県出身。大学進学を機に福岡県に来て、卒業後はそのまま県内で就職し、IT関連に携わります。が、ある時、その会社が解散してしまうのです。前向きな本山さんは、それまでの経験や知識を活かして起業を決意。シェアオフィスの運営や、コーチングを学び起業支援や、SDGsに関するコンサルティングを手掛けるようになります。

そんな中、「ピアノを活用してほしい」という人に出会います。そのピアノをどうするか。その問いに『下取り業者に出す』あるいは『どこかの施設へ寄付する』…本山さんはどちらも選ばず、音楽の循環型社会の実現へ向けて、公共の場所に設置することを選びました。

初の設置のアップライトピアノはYAMAHA製で、司会業の代表・加藤昌子さんが昭和45年に購入したもの。まずはJR黒崎駅への設置が叶いました。

SDGsとストリートピアノ

ストリートピアノ、皆さんはどのような印象を持たれているでしょうか。先述のよみぃさんのような、特別に弾く技術のある人のための特別な場所、というイメージを持たれている人もいるかもしれません。

本山さんは、この事業に、音楽を通じて持続可能な循環型社会の実現を願い、活動しています。持続可能な循環型社会…つまりSDGsにあてはめることができます。たとえばSDGs17の目標のうち、「3/すべての人に健康と福祉を」は、音楽を通じて心癒やされ健やかな過ごしを期待できます。「4/質の高い教育をみんなに」では子どもたちも公平に弾くことができるという環境を提供できます。「8/働きがいも経済成長も」ピアノを磨く仕事「ピカピアノ」を障がい福祉サービス事業所とともに展開されています。「11/住み続けられる街づくり」は、弾く人、聞く人、支える人…その交流は街の文化、素敵なことだと筆者は感心した次第です。

ひらめいた「就労支援」は発展の味方に

2019年から活動を行ってきたストリートピアノドネーションズの皆さんですが、ある時、困ったことが起こりました。これまで不要になったピアノを設置先へ直接移動してきた活動でしたが、困ったことというのは、そのA場所からB場所への間で一時保管する場所が必要になったことでした。

迎え入れの先で、すぐには受け入れられないことになり、かといってピアノも出発をしないといけない、そんな窮地にたたされた時のことです。本山さんはひらめきました。お付き合いの長い就労支援団体「NPO法人わくわーく」へお仕事をお願いすることにしたのです。「新たな場所へ行くその間に、ピアノ磨きという仕事をしてもらう」。このお仕事は就労支援団体の作業所で行うので、場所の確保になることはもちろん、勤めるスタッフの人たちへ「磨き」の仕事の提供し、調律師への軽減に貢献する(それまで調律師が調律の後にピアノ磨きをしてくれていました)ことに。心で願うSDGsな社会づくりのスピリットが、このひらめきへ導いてくれたのではないでしょうか。

オリジナルカレンダーの絵と俳句は北九州市在住のよしもち きくこさん

音楽を通じて人々の心を豊かにしてくれるストリートピアノは、公共の場所で、誰でも弾けるのが魅力ですが、そのためには調律をはじめメンテナンスも必要です。運搬が発生すればそれも費用がかかります。弾く・観る以外で、寄付も大きな助け、応援となるとのこと。また、毎年制作されるオリジナルカレンダーは、購入金額の50%が活動資金になるそうです。

2023年カレンダー(1200円、送料別)は、世界の音楽家の誕生日が入っているユニークさが光ります。北九州市在住のよしもち きくこさんが描いた絵と俳句は独特なタッチの絵画も楽しいですよ。わずかですが在庫もあるそうです。

そのほか、ピアノを磨いてほしい人(お仕事の機会を増やす)や、ストリートピアノの設置場所も探しているとのこと。ピアノの寄贈の申し出も随時受け付けしているそうです。どの立場になってもみんなが幸せを感じられたら、それは最高の街づくりですね!

最新情報は「一般社団法人ストリートピアノドネーションズ」Facebookで確認できます。

※2023年1月14日現在の情報です

(ライター・しまだじゅんこ)

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