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【ファンファン北九州#19】ゼンリンミュージアム館長 佐藤渉さん<前編>

ゼンリンミュージアム館長 佐藤渉さん(写真中央)

西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。

「ゼンリンミュージアム」2020年オープン

甲木:おはようございます!西日本新聞社 ナビゲーターの甲木正子です。

横山:西日本新聞社の横山智徳です。

甲木:横山さん、お気づきかもしれませんが、私は地図が読めない女で…。

横山:地図が読めない女なんですね。(笑)

甲木:横山さんは地図は得意ですか?

横山:僕も超がつく方向音痴なんですよ。

甲木・横山:(笑い)

甲木:今回は、地図の専門家をお呼びしていますので、早速ご紹介したいと思います。北九州市小倉北区にありますゼンリンミュージアム館長 佐藤渉さんです。よろしくお願いします!

佐藤:よろしくお願いします。

甲木:さっきから地図の話をしていますが、ゼンリンミュージアムは住宅地図大手のゼンリンさんが、リバーウォークに昨年オープンした地図の博物館ですよね。

佐藤:そうですね。元々は、2003年から地図の資料館という施設はあったんですが、内容・コンセプトを一新しまして、主に16~19世紀にかけての西洋や日本で作られた日本図を中心に展示する「地図の博物館」です。資料館時代のような、ゼンリンの歴史などの企業色は一切排した博物館となっております。

甲木:そうですね。私と横山さんも行ったことありますが、全然、企業の紹介ということではなくて、ひたすら日本の地図がありますよね。

佐藤:純粋に地図に描かれた日本の姿がどのように変遷していったのか、ご紹介する博物館になっております。

これって本当に日本列島? 鎖国中、日本の地図は崩れていく?

甲木:全然、日本の形が違いますよね?

佐藤:そうですね。最初のころは、情報があまりない時代に描かれていますので、想像の中で描かれているものから徐々に情報が入り始めて、少しずつ日本が形作られていく。そのあと鎖国になって、また情報が途絶えてしまって日本の形が崩れていってしまうんですね。そういった日本の歴史と共に、日本がどのような描かれ方をしていったのかということをご覧頂けるようになっています。

甲木:私は2回行ったんですが、それぞれ2時間ずつ観てもまだ時間が足りないくらい。

佐藤:そうですね。普通の博物館だと、ガラス越しに地図が展示されていますが、ゼンリンミュージアムでは、間近で地図を見ていただけるように額縁に入れて展示させて頂いております。さらに、美術品を見るのと違って、感性で見るというよりは内容を確認しながら見ていただくものですので、説明文も各作品一つ一つにそれなりの分量が書いてあり、どうしても見学時間がかかってしまいます。

甲木:すごく詳しく説明してくださるのでどんどん引き込まれて、地図にある文字とか一生懸命追いたくなりますよね。

佐藤:そうですね。虫眼鏡もご用意しております。

甲木:そうでした!

地図作りには理由がある。背景や作者の思いを読み解く

横山:僕も案内して頂きましたが、最初は見るだけじゃ正直分からないところもあって、「へぇー、古い地図だな」ってくらいだったんですよ。ところが、副館長に案内していただくと、日本がとても僕らの考える日本じゃないところから始まるんですよね。

佐藤: そうですね。地図には必ず、地図が作られた理由、歴史的な背景、作者の思いというのがあるんですね。それは今の地図も同じです。なので、そういったものが説明文の中に多少なりとも書かれていますので、一緒に見て頂けると地図そのものを見るのに加えて、地図が作られた歴史的背景もご理解頂けるんじゃないかなと思っております。

甲木:なるほどですね。「見る」じゃなくて「読む」って感じですもんね。

佐藤:はい。地図は「読み物」です。

横山:「読み物」なんですね。

甲木:なんか深い。あそこに展示されている地図は、天文学とか歴史とかそういうことも感じられますよね。

佐藤:そうですね。伊能図も、元々は国を守る海防・国防のために作られているんですね。今もそうですが、軍事的な意味合いで地図って使われることが多いですよね。なので、そういった政治的なところも大きく地図の制作に関わっている。明治時代、日本の地図を作っていたのは陸軍、海の地図は海軍が作っていました。

地図を持ち出すのは罪ってどういうこと? 詳しい地図は平和の証

甲木:だから、持ち出した人が処罰された云々っていう展示があるんですよね。

佐藤:はい、そうです。

甲木:いや怖いですよね。地図を持ち出したら処刑されるなんて。

佐藤:これだけ詳しい地図を作れるっていうのは、珍しい国の一つじゃないかなと思います。

横山:そうなんですか!?

甲木:誰でも地図が見れますし、平和な国ってことですか?

佐藤:そうですね。平和でないと地図はやっぱり作ることができないものだと思います。

地図文化を継承したい

甲木:そもそも、ゼンリンさんって一地図会社じゃないですか。そこがなぜ、このような地図のミュージアムを作ろうと思ったんですか?

佐藤:今の時代は、ネットでも簡単にタダで誰でも見られる時代になって、より身近になってきています。逆にいうと、あまり地図に興味がない人も増えてきてるんじゃないかと思うんです。目的地に着きさえすれば、それで地図の役割がおそらく終わってしまう。

誘導されるがままに目的地に行くというだけで、地図そのものまで興味を持たれる方ってそんなにいないのではという気がしまして。なので、「地図が読めない」っていう方が結構いらっしゃるのかなと。

甲木:すみません。(笑)

佐藤:地図の役割として、目的地に辿り着くというのは重要な一つの機能ではありますが、地図を作った意図・目的・作者の思いっていうのが必ず地図の裏側には潜んでいます。

そういうことを知って頂くことで、少しでも地図に興味を持って頂けるような施設、また地図文化を継承するための施設として、ゼンリンミュージアムをオープンいたしました。

〇ゲスト:佐藤渉さん(ゼンリンミュージアム館長 学芸員)
■施設名/ゼンリンミュージアム
■住所/北九州市小倉北区室町1-1-1リバーウォーク北九州14F
■問い合わせ/TEL093-592-9082
■開館時間/10:00~17:00
■休館日/月曜(ただし祝日の場合は翌平日) ※年末年始等、臨時休館あり
■入館料/1000円(保護者同伴の小学生以下は無料)

〇出演:甲木正子(西日本新聞社北九州本社)、横山智徳(同)

(西日本新聞社北九州本社)

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