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北九州NPOが緊急CF「誰ひとり取り残さない社会を」コロナ困窮者に住居提供

画像提供:NPO抱樸(ほうぼく)

認定NPO法人抱樸(ほうぼく)は4月28日、新型コロナウイルスの影響で経済的な困窮者が増加する傾向にあることから、緊急支援のためのクラウドファンディングを開始しました。

北九州市八幡東区を拠点とするNPO抱樸の活動は、1988年、食料を持って路上生活者を訪ねることから始まりました。30年以上にわたり食料・住居・就業などの支援を続ける中で、3400人をホームレス状態から自立させ、現在は子ども、高齢者、障害者、失業者など2000人に包括的な支援を提供しています。

コロナ禍で増える失業者に家具付き住居を提供

NPO抱樸の理事長兼代表を務める奥田知志(おくだ・ともし)さんにお話しを聞きました。

奥田さんによると、今回のプロジェクトで集める寄付金は、主にコロナの影響で仕事を失い、住まいを失った人の住居関連の費用に充てる予定とのことです。支援の内容や規模は集まる金額によるとしつつ、北九州市内で住居約30室、困窮者が多い東京・大阪・名古屋を含めた9都市などで合計100〜150室を提供したい考えです。市外での活動は各地の支援団体と連携していく計画とのことで、寄付金は困窮者や対応するスタッフが使用するマスクや消毒薬などの衛生用品の購入にも充てられる予定です。今週から、クラウドファンディングとは別に寄付されたマスクなどを、各地の支援団体へ発送する作業も始まります。

用意する住居は、生活の基盤となる家具付きの部屋にする計画です。仮の住まいでは再就職や社会的な手続きをとることができません。北九州市内ではすでに空き家となっていたアパート25室を確保し、改修工事を始めているそうです。こうした住居に空き家を使うことで、地域の空き家対策や、治安の向上にも役立つといいます。

奥田さんは困窮者の自立を支援するには「お金と相談はセットにしないといけない」と主張します。自立には資金や住宅の援助だけでなく、話を聞き、仕事を見つけ、人と人との関係を築き、生活を見守る支援、つまり「”Home”をつくる支援」が必要だと訴えます。

画像提供:NPO抱樸(ほうぼく)

コロナ禍でひろがる命の危機

仕事を失い、住まいを失い、人とのつながりを失い、命の危機に直面する人が増えています。会社の寮を出されて、行き場のなくなった人からの相談も受けているそうです。

今回のコロナウイルスによる影響は2008年のリーマンショックの時を上回ると推測し、当時と同様に、不況が始まってから3カ月後の7月頃には、仕事を失い、住む場所を失う非正規雇用者などの弱い立場にいる人が深刻な事態になるとみており、今から備える必要があると説明します。

今、家からできる支援を ”Support From Home”

奥田さんは、家からできる支援を今、考えてほしいと訴えます。

「今、支えること。今、動くこと。それが新しい世界を創造します。離れていても、心は寄り添えます。誰ひとり取り残さない社会を一緒につくっていきましょう。共に前を向ける未来をつくるために、今、皆さまのご支援が必要です」。

家を無くすような脆弱な社会にはもう戻りません。だれ一人、ひとりにはしない支援をします、と強い決意をにじませます。
奥田さんは今のピンチは、社会をよりよく変えるチャンスになると考えています。

ポストコロナの時代は「人と人とが助け合う社会」になる

コロナ禍はマイナス面ばかりでなく、新しい社会、「人と人とが助け合う社会」に変わる機会だと捉えており、その兆しが表れてきているようです。「自分は給付金をもらえそうだが、明日、どうにもならない人を助けて欲しい」と10万円の封筒を持って事務所に来た方がおり、人の心は他者に向かって動き出していることを感じていると話します。

奥田さんは北九州市で「住む場のない人」「つながりを失った人」の支援に打ち込んできましたが、今回のプロジェクトでは、こうした活動をこれまで培ってきたノウハウを含め、各地に広げようとしています。

画像提供:NPO抱樸(ほうぼく)

人を救うのは「心配をする人」である

日本人の孤立率(人との関わりがまったくない、ほとんどない人)は15%を超え、OECD加盟国20ケ国中、もっとも高い割合になっています(出典:厚生労働省「生活困窮者・孤立者の現状」)。奥田さんはこうした社会的な孤立と貧困の問題を深刻に受け止めています。

孤立し、困窮した人が意欲を持って働き、生きるには、人と人との関係を取り戻すことが重要だといいます。奥田さんのいう「人と人との関係を取り戻す」ためには、臨時の住まいや物資を提供するだけの活動ではなく、心配事を聞き、いっしょに仕事を探し、ハローワークに行き、企業を訪問し、就職後も生活が安定するように見守り、精神的なつながりを築いていくような活動が不可欠です。

NPO抱樸が掲げる3つの使命は「ひとりの路上死も出さない」「ひとりでも多く、一日でも早く、路上からの脱出を」「ホームレスを生まない社会を創造する」。長年の経験に裏打ちされた「人はお金や物だけでは救えません。心配をしてくれる人が必要なのです」という言葉はとても印象的でした。

奥田さんが全身全霊をこめて行っている活動が周りの人をつき動かし、今ではボランティア活動に参加している人は1000人を超えています。電話でお話しを伺ったのは、夜の炊き出しの合間の時間でした。この日の炊き出しには野宿の人など50名以上が集まり、その後は各所を歩いて50名ほどにお弁当とマスクを手渡したそうです。奥田さんは今、この瞬間も、社会を変えようと動き続けています。

クラウドファンディングは7月27日まで

NPO抱樸が開始したクラウドファンディングの期限は7月27日まで。寄付は1000円から1000万円まで13種類が設定されています。目標額は1億円で、5月13日13時45分時点での達成率は16%(1680万円)。寄付者は1300人を超えています。

なお、抱樸は認定NPO法人のため、寄付金は「所得税控除」の対象になります。個人の場合、確定申告を行うことにより所得税の還付を受けることができます。

問い合わせは「抱樸」(電話093-653-0779)まで。

(北九州ノコト編集部)
※5月8日、電話による取材を行いました。

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