「アンちゃんの日本が好きすぎてたまらんバイ!」発行/北九州市立大学准教授・アン・クレシーニさん
西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。
「男前」のアンちゃんが新刊の表紙に
甲木:おはようございます。西日本新聞社 ナビゲーターの甲木正子です。
梁:西日本新聞社の梁京燮です。
甲木:梁さん、今日、嬉しいですね。二度目のアンちゃん。
梁:嬉しいですね!僕は前回ナビゲーターではなかったので。
甲木:今日は梁さん初めてだからですね。ではお呼びします!日本が好きすぎるアメリカ人、言語学者で北九州市立大学准教授のアンクレシー二さんです。よろしくお願いします。
アン:よろしくお願いします。
梁:よろしくお願いしまーす。
甲木:今日もアンちゃんね、ちょっとパンクっぽいですね。
アン:毎日パンクっぽいです!毎日、毎日…。
甲木:(笑)
梁:めちゃカッコいいです!決まっていますよ。
アン:ありがとうございます。
甲木:アンちゃんの本の話ですけど、去年の大晦日に新刊が出たんですよね。で、その名もズバリ、「アンちゃんの日本が好きすぎてたまらんバイ!(ビックリマーク)」という…。
アン:真面目にタイトルを読めないんですよね。
甲木:(笑)そうなんです。しかもその表紙に載っている写真がすごくかっこよくて、羽織袴に刀を持っている侍スタイルで。
アン:そうなんです。男前ですよね。
梁:めちゃ男前ですよね。アンちゃん真顔ですしね。
甲木:坂本龍馬みたいな…。
アン:昔の日本が大好きで。伝統的なものとか。いま三味線も習っていますし、着付けも習っていますし、だからやっぱりこの写真しかないなと思うんですよね。
梁:なるほど。カッコイイです。
甲木:この本は、アンちゃんが西日本新聞くらし文化面に連載してくださっている「アンちゃんの日本GO!」からのものですけど、その連載が2018年の1月からスタートして、今4年目に入ったんですね。
アン:そうですね。ずっと書かせてもらっている西日本新聞に、すごく感謝の気持ちしかないなあ。いや、ありがとうございます。
甲木:私たちこそ感謝の気持ちです。
英訳できない「魔法の言葉」
甲木:アンちゃんの新刊は文章も面白いんだけど、書いている視点がすごく新鮮です。和製英語もまさにそうで、文化が違ったら言葉も変わる。「適当」とかそうですよね。
アン:やっぱり言葉は文化や、文化の下にある世界観から生まれてくるものだから、ある文化に概念がなかったら、当然その概念を表す言葉もないんですよ。日本では例えば上下関係を大事にするとか、曖昧を大事にするとか、そんな概念を表す言葉はとても多いんです。でも英語にはそれがない。「さすが」「一応」「適当」「おつかれさま」「よろしくお願いします」、これら全部ないんですよね。
甲木:私もそのことをあらためてこの本で読んで、韓国とのつながりを考えてみたんです。そしたら、韓国語にはあるんです。「さすが」も「適当」も、それから…
アン:「よろしくお願いします」はありますか?
甲木:あります。「잘 부탁드리겠습니다(チャㇽ プッタッドゥリゲッスㇺニダ)」。
アン:カッコいいな~!韓国語。
甲木:ちゃんとあるんですよ~。アンちゃんが言うように、文化とか、概念ですよ。
アン:そうですね。ところで「おつかれさまです」は魔法の言葉ですよね。私がPTAをやっていた頃、人間関係でいろいろうまくいかないことがありまして、そしたら私のマネージャーが、「あなたは多分、『おつかれさま』って言っていないでしょう?ちょっと言ってみて」と言われたので、その後会議に入った時に「おつかれさまでーす」と私が言ったら、パッと雰囲気が変わったんです。それから4カ月、「おつかれさまです」だけでうまくいったんですよ。「何という魔法の言葉だ」と思いましたね。PTAやっていてよかったと思いました。文化の勉強になりましたね。人間関係をどうやって円滑にするか、とか。
甲木:でもそのPTAでたくさん苦労もされたとこの本に書かれていますね。これは新聞の連載ではなかった部分ですよね。
アン:新聞の連載では日本をすごく褒めている内容が多いんです。タイトルのように日本が好きすぎてたまらんバイ!という思いがあるからで、もちろん私は本当に日本が大好きですけど。でもどんな国でもどんな文化でも理解できないとか、納得いかないところがありますよね?だから客観的に見えるために、バランスをとるために、PTAでの経験を入れた方がいいかなと思ったんです。結構エグいけど。
甲木:いや~。結構エグかったですね。読んでても。
梁:エグさはなかなかでしたね。
甲木:これもアンちゃんが本に書いているけど、現状は学校によりけり、地域によりけりだったりで、みんなが良くないPTAではないと思うけど、でもやっぱりこういう側面は絶対ある。くじ引きは本当にどこでもあるし。
アン:そうですよね。くじ引きもあったりとか。あと、PTAは任意団体なのに強制ですよね。忙しくても絶対やらないといけなくて、忙しいことが何の言い訳にもならない。今の日本のママたちとかパパたちもめちゃくちゃ忙しいから、PTAは日本の社会にはあってないなと思うところはありますね。でも一番ダメなのは、やっぱり「いじめ」。結構いじめられたから。ずっと子どもにいじめはダメなんて言っている大人がお互いをいじめるなんてどういうこと?すごく悪い日本になっていると思います。いじめが大人の社会にある限り、子どもの間にもなくならない問題だなと思いました。だから私たち大人の生き方も見直さなきゃいけないなってすごく考えましたね。正直、あのPTAの経験があって、しばらく私の大好きな日本が嫌になったんです。でも、しばらく時間が経って、これが日本、ではなく、ひとつの地域の中学校の経験だけなんだったと思い、ちょっと冷静に客観的に見えるようになりました。でも改革は必要だとすごく感じますね。
甲木:確かにPTA改革には時間がかかるかもしれないけど、アンちゃんからのこういう発言がいい方向の起爆剤になったらいいなと思いますね。
客観的視点の大切さ
アン:そうですね。最近外国人が日本を褒めたたえるようなテレビ番組がありますよね。それはすごくいいと私は思うんですけど、やっぱり外国人が日本に来て、日本のいいところばかり話してて、正直ちょっと気持ち悪いよね。それは現実じゃないからね。テレビでマスクしていないアメリカ人を見たら、私もテレビに向かって「なんであの外国人マスクしないの?意味がわからん!」と言いながら「あ、そうか、私もアメリカ人なんだ」とか…。だから客観的に物事を見ることってすごく大事だなあと思います。
甲木:そうですね。だからいいところも教えてほしいし、「直したほうがいいよ」とか「おかしくない」というところも指摘してほしいですね。私も韓国にいる時に指摘したら感謝されたことがあったんです。
アン:感謝された!? 外国人だから口出すなよとか言われなかった?
甲木:はい。フィギュアスケートで浅田真央さんとキム・ヨナさんがメダルをとった時、私は「日本人だから当然、キム・ヨナが負ければいいと思っているだろう」みたいに言われて、「いや、そんなことないよ、アジアの二人が一位と二位の表彰台に上がることが誇らしいのであって、元々西洋の人たちがずっとチャンピオンだったスポーツの表彰台に東洋人二人が一度に行くってそっちが凄くないですか?」とコラムに書いたら、とても閲覧数が増えたんです。
アン:素晴らしい!
甲木:釜山日報の記者からすごくいい視点をもらったとか言って褒められたんです。
アン:日本でも多くの人が外国人の視点からいろんな物事を聞きたいと思っているけど、「言われたくない」という人もいて。でもほとんどの人は応援をしてくれているから、すごく感謝していますね。
甲木・梁:うん、うん。
アン:私もどんどん発信しますので、応援してください
甲木:もちろんです!ということで、今日はアンちゃんこと、言語学者で北九州市立大学准教授のアン・クレシーニさんをお招きしてお送りしました。アンちゃん、ありがとうございました。
アン:ありがとうございました。
〇ゲスト:アン・クレシーニさん(北九州市立大学准教授)
〇出演:甲木正子(西日本新聞社北九州本社)、梁京燮(同)
(西日本新聞北九州本社)