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「ものづくりで、自分らしく生きる」/綿瀬麻意子(ITOHEN代表)

全員「ママ」の職人チーム

想い出のある布を使用する「紬ジュエリー」(画像提供:ITOHEN)

―他のブランドについても教えてください。
「『72(nana-tsu)』は九州・沖縄各県の伝統織物を使ったピンバッチ、タイピン、カフスボタンです。九州8県に伝わる伝統染織物を使って、同じものは他にはない一点モノを制作しています。『紬(つむぐ)ジュエリー』はその方にとって大切な想い出のある布を使い、世界にただ一つのオートクチュールジュエリーを作っています。亡くなった母との想い出がこのブランドを作ったもとになっています」

―1つ1つの製品が少しずつ違っていて、見ていても楽しいです。どうやって作っているのですか?
「今は研究開発から参加している方を含めて10人ほどの職人さんに制作をお願いしています。みなさん、お子さんがいるママさんのチームなんです。2018年に地元の大手ロボット企業のノベルティを受注した際に、金属加工や塗装技術を身に着けましたので、現在ではこれを生かして製品開発をしているところです」

画像提供:ITOHEN

―使う布はどうやって用意しているのですか?
「各地の織元さんを回って端切れを分けてもらっていますが、織元さんのところで布を選ぶ楽しさもありますし、柄のどの場所を使うかを選ぶ楽しさもあります」

「九州にはさまざまな織物があり、小倉織、博多織、久留米絣など、それぞれに様々な色合いや柄があります。織物の加工方法もさまざまで、布の作られた歴史などを教えてもらって勉強することも大切なことだと思っています。ネットショップでは織元さんをご紹介しています。沖縄の布も現地で織元さんを回って端切れを集めてきました」

―どういったところで購入できるのでしょうか。
「今では東急ハンズなどの大手にも扱っていただき、九州、東京、沖縄の17店舗で販売していています。北九州市内では『TOTOミュージアムショップ』と『北九州おみやげ館』(門司港)での取り扱いから始まりましたが、今は『小倉城しろテラス』『うめね呉服店』『サロンドソルジェ はこさかそ』『オーダーボックス・サルトリアベリーニ魚町店』でも扱っていただいています」

「直近ではコロナの影響で委託先の店舗も臨時休業していますが、5月末にJR九州商事様のネット通販での取り扱いが始まりました」

画像提供:ITOHEN

家族とのすれ違いを乗り越えて

―ご家族は応援してくれていますか?
「夫には、『趣味なんだから、家事はちゃんとやってくれないか?』と言われ続けてよく喧嘩もしましたが、少しずつ理解してもらえるようになってきました。娘にも家事を手伝ってもらって助かっています」

「自分ではアクセサリー作りを仕事にしていこうと考えていた時に、周りからは『伝統織物のアクセサリーなんて需要がない』という声や、『伝統織物を扱うのにクオリティが低い』『ブランディングがなってない』『主婦感覚では難しい』という声も聞こえてきました。それでもこれを仕事にしたいと思い、これまで続けてきました」

―順風満帆でなくとも、情熱で困難を乗り越えてきたわけですね。
「厳しいこともありましたが、なんとかやってきました。家族にはなんでも話をして、何をしているのかわかってもらうようにしています。スケジュール管理が大変ですが、毎日がとても充実しています。(今が)これまでで一番自分らしく、楽しく生活しています」

「専業主婦だったころは自分に自信が持てず、自分のことが好きになれませんでした。今は自分がやりたいことを仕事にしているので、自信をもって今の自分が一番好きだといえます。仕事をしていく中で、さまざまな分野の方々とお会いし、自分の視野が大きく広がったと思います。女性起業家の友人も増えました」

―今後の展開は何か考えていますか?
「外部の方からは、これまでの生産体制は『家業』であって『事業』ではないと言われていましたが、ちょうど今、事業として継続できる体制づくりを構築する覚悟を決めたところです。これまで北九州市の支援や、商工会議所の方々のアドバイスを活用してきましたが、今後もこれまでお会いした方々とのご縁を大切にして、仕事を続けていきたいと思っています」

仕事を通じてまわりの人も幸せにしたい

綿瀬さんはお母様の突然の死を経験したことで、ご自身の人生について深く考え、自分らしい新しい生き方をご自身の力で選び取ってきました。

綿瀬さんは好きなことを仕事にして収入を得て、まわりで関わっている方々にも幸せになってもらう、そういう仕事をしていきたいと話しています。そのためにはまず、自分が幸せな起業家でいることが大切だときっぱりとした口調で言います。

これからも自分らしく生きる綿瀬さんを応援していきたくなりました。綿瀬さんの夢は全国の織物を使った製品を展開していくこと。新しいアイディアも次々に生まれているようです。次にどんな製品が生まれるのか、今から楽しみです。

画像提供:ITOHEN

(北九州ノコト編集部)
※3月3日、6月10日に取材を行いました。

■綿瀬麻意子さん(ITOHEN代表)プロフィール
山口県宇部市出身。2013年に北九州市の「チャレンジショップ」制度を利用し、ハンドメイドのアクセサリー制作・販売を開始。15年に「小倉織」を使ったアクセサリーの制作・販売を開始し、戸畑にて創業。「福岡デザインアワード」では第19回に入賞、第21回に銀賞を受賞。18年「北九州e-port みらいのビジネスコンテスト」で「オーディエンス賞」など3賞を受賞。18年「第12回北九州市女性活躍ワークライフバランス賞」受賞。20年「北九州女性支援ひなの会ビジネスプランコンテスト」優秀賞受賞。

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