「弁財天上陸の場」~水の女神 市杵島姫の命~【北九州市若松区】
とある日、若松南海岸通りを散策していると、旧ごんぞう小屋のすぐそばに、ふと気になる石碑が。
よく見てみると石碑には「弁財天上陸の場(べざいてんじょうりくば)」と記されています。
「弁財天上陸の場」から程近い場所には「厳島神社」
なんと!昨年の神在月、出雲大社に参拝して以来、日本神話や古事記など、日本の歴史や神話を学ぶ機会が増えていたところ。
気になって調べてみると、洞海湾の守護神として「宗像大社辺津宮」の御祭神「市杵島姫の命」の分霊を祀ったのが起源とのこと。「市杵島姫の命」については、先日参加した、宗像歴史観光ボランティアの会主催の宗像大社歴史ツアーで学んだばかり!
「弁財天上陸の場」から程近く、横断歩道を渡った先に「市杵島姫の命」を祀った「厳島神社」があります。
「市杵島姫の命」とは
「市杵島姫の命」とは日本神話に登場する女神で、宗像三女神の一柱。有名な話としては天照大神と須佐之男命の誓約にして生まれた水の女神。弁才天と同一と考えられています(日本神話では1つの神様にいくつもの名前があったり、同じ読みでも漢字が異なっていたりと、まだまだ謎が多いのも魅力)。
「市杵島姫の命」をお祀りしている代表的な神社としては、宗像市にある「宗像大社辺津宮」、広島県にある「厳島神社」があげられます。宗像大社は日本神話に登場する日本最古の神社の1つでもあるとされていて、歴史を学べば学ぶほど、その時代はどんな世界だったのだろう…と、想いを馳せてわくわくが止まらない筆者でありました。
さらに深めると、弁財天はインド神話では河川の女神、インドの神聖な川「サラスヴァティー」に由来したヒンドゥー教の女神とされ、音・弁舌・財福・智慧の徳があり、琵琶を弾く天女の姿がよく知られています。
「サラスヴァティー」の漢訳は「弁才天」あるいは「辯才天」でありますが、日本では財宝神としての信仰が集まり、「辨財天」と書かれるようになったという説も(辯の訓読みは「とく」「かたる」「言葉巧み」、辨の訓読みは「わける」「わきまえる」「区別する」となっていて、同じ者に対してそれぞれの解釈があるのがまた面白い)。
そんな歴史的な神社がこの北九州、若松にひっそりと祀られているとは、水のまち北九州ならではなのかもしれませんね。
若戸大橋を望む風景
門司もじっこ、筆者の「海の風景」といえば、関門橋を臨むダイナミックな関門海峡の風景ですが、「弁財天上陸の場」から望む風景は、洞海湾に映える若戸大橋と、遠くに見える皿倉山。波も穏やかで、同じ北九州でも海の或る風景はこんなに違うのだなと感動。広島の尾道を思い起こしました。
遠くに行かずとも、ちょっと足を延ばせば最高の風景に出逢える。それも北九州の魅了なのだと再認識しました。
若松南海岸の魅力
「弁財天上陸の場」の周辺には素晴らしい風景とあわせて、美味しい食べ物や、歴史的建造物も楽しむことができます。
すぐ傍には、クロワッサンで人気の「三日月屋」。
クロワッサンラスクが添えられたソフトクリームをテイクアウトし、潮風を感じながら楽しみました。
若松渡場の方へ少し進むと「旧古河鉱業若松ビル」。そのまた少し先には洞海湾の風景を楽しみながらくつろげるカフェ「キッサネコノジ」も。
「弁財天上陸の場」から山手に登った場所にある「高塔山公園」ではこの時期、約7万4300株のアジサイが公園内を彩ります。6月18日は若松渡場から無料シャトルバスが運行されるそうです。
幾年の年を経てなお、海の安全を見守ってきた女神「市杵島姫の命」、今回ふとしたきっかけで知ることができ、北九州にはまだまだ魅力的な場所があるのだなぁと、好奇心を掻き立てられるショートトリップでした。
【弁才天上陸場/厳島神社】
■住所/若松区本町1-14-16付近
※2023年6月16日現在の情報です
(ライター・kohalu.7)