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「この1年、よさこいに賭ける」/森美沙希(よさこいサークル「灯炎」代表)

(画像提供:よさこいサークル灯炎)

北九州市立大学の「よさこいサークル灯炎(とうえん)」は、今年で設立14年を迎えました。今回は14代目代表として、新たな作品に取り組む森美沙希さん(北九州市立大学外国語学部英米学科2年)にお話を聞きました。

現在のメンバーは2、3年生で65名。女性が約8割を占めます。例年であれば新入生が加入したチームで活動を始めている時期ですが、今年はコロナ禍の影響もあり始動が遅れているそうです。

5月7日から大学の遠隔授業が始まったことを受け、新入生向けのオンライン説明会を行い、ようやく新しいメンバーを迎える準備ができたといいます。

森さんは小柄で、にこやかな笑顔と柔らかい物腰。とても大きな組織をまとめる代表には見えないやさしい声とたたずまい。ていねいに、しっかりとした口調でお話しをしてくれました。

画像提供:よさこいサークル灯炎

作品の独創性を競う「よさこい」

ー「よさこい」は高知県にルーツのある踊りですね。お祭りは踊りを競い合うものなんですか?
「よさこいは全国各地のお祭りで踊られていて、北九州でも盛んです。それぞれのお祭りが競技会となっていて、学生や社会人のチームが振り付けや衣装、楽曲、表現力などを4分半の中で競い合います」

―毎年、新しい作品を作るのですか?
「はい。毎年、それぞれの代で、新しい曲と衣装を用意して、振り付けを考えて、作品を作っています。同期の仲間で曲と衣装のイメージを話し合って、曲係と衣装係の担当者が意見をまとめます。それを作曲してくれる会社、衣装を制作してくれる会社にそれぞれ発注して、独創的な演舞を作っていきます。さまざまなジャンルの音楽を取り込んだオリジナル曲に振り付けを考えて、衣装や小道具も工夫しています」

「チームごとに楽曲や演舞のスタイルがあるのです。チームによってやりたいことが違っていて、競技会に熱心なチームもあれば、自分たちがやりたいことを優先するチーム、お客様に喜んでもらうことに力を入れるチームもあります」
―なるほど。チームによって、目指すものが違うのですね。

人の心を「さらう」

ースローガンがあるそうですが。
「『攫う(さらう)』は14代の年間のスローガンで、お客様の心に残る演舞をしていきたい、という願いをこめています。私たちの代が目指しているのは観客の心を『さらう』ことです。その結果として賞も『さらう』ことができれば、これよりうれしいことはありません」

「代によってはスローガンを作らないこともあります。同期の仲間から作りたいという声があがり、何人かが候補案をプレゼンして、このスローガンが決まりました。スローガンを目指して活動をしていく形が、自分たちの代には合っていると思います」

笑顔が素敵な森さん

演舞中は”別人”

―練習はいつしていますか?
「通常は、水曜と土曜の午後に集まって3時間ほど練習しています。今はコロナウイルスの影響で集まれないのが本当に残念です」

―森さんがどんな風に練習しているのか、あまり想像がつきません。
「普段とサークルの時とでは、まるで別の人格になっていると思います。演舞の時には大きな声で、荒々しくふるまいます」

画像提供:よさこいサークル灯炎

―動画を見ました。よさこいは踊りにキレがありますね。着物姿がりりしくて、まぶしく見えました。
「ありがとうございます! 全体のフォーメーションを変えたり、衣装の色を素早く変えたりするところも見所なんです。指先や立ち居振る舞い、視線にも気を配って、表現力を磨いています」

灯炎は自分を「積極的」に変えた

―代表をされていますが、昔から前に出るタイプなんですか?
「(代表になって)自分が一番、驚いているかもしれません。かなりの勇気を出して、代表に立候補しました。もともと、人前で意見を言うタイプではなかったのです。これまでは後ろから他の人がやることを見ていました」

「自分に代表が務まるのか、5か月ほど一人で考えました。ここまで一人で時間をかけて考えたのは、人生で初めての体験でした。チームの仲間や先輩方によく話を聞いてもらい、考えをまとめるのを助けてもらいました。私はいつも、周りの仲間に助けられているんです」

―どういったことを代表選で発表しましたか?
「メンバー全員、それぞれにとって居心地のよい場所をつくりたい、とお話ししました。客観的に状況をみて、周りの意見を尊重して、ベストな意見をまとめられる代表になりたいと思います」

先輩から引き継いだ想い

―そもそも、どんな理由で森さんはこのサークルに入ったのでしょうか?
「中学、高校の6年間は小規模な部活に所属していたので、大学では多くの出会いがある活動をしたいと考えていました。先輩方はとても面倒見がよく、やさしさとあたたかさを感じて、すぐに入ることを決めました。先輩方は緊張していた私たち新入生のことを気にかけて、たくさん話しかけてくれたので、すぐに打ち解けることができました」

―代表になることが決まってからは、どんなことがありましたか?
「昨年10月に先代が引退し、代表になりました。まず先輩に一人だけで担当する仕事について教えてもらったのですが、作業量が多いことがわかりました。外部の方々とのコミュニケーションの方法や、礼儀作法、言葉遣いなども教えてもらいました。精神面についても、チーム全体のモチベーションの保ち方や、心のゆるみの締め方なども指導いただきました。先輩方からは、このサークルに対する情熱や想いも引き継いだと思います」

―しっかりとした引き継ぎがあったようですね。代表にはどんな仕事があるのですか?
「第1に、チームの士気をあげること、モチベーションを保つこと。第2に、これが一番重要な仕事で、企業や団体から依頼された演舞の手配をすることです。打ち合わせやスケジュール管理、交通手配などを行います。今年2月には『北九州マラソン』で15人が演舞をしました。外部の方々との会議に参加して、当日のスケジュールなどを同期でよく話し合い、直前までさまざまな調整作業を行いました」

画像提供:よさこいサークル灯炎


―華やかなイベントのかげで、いろいろとご苦労があったのですね。代表のほかに、どんな役職がありますか?

「副代表と、踊りを指導するインストラクター、庶務、会計、救護、レクレーション、IT、曲、衣装、灯火、夜警、外交、があります。各グループはライングループをつくって打ち合わせて、その後で全体で話し合っています」

「前向き」に変われる場に

―森さんはチームのコミュニケーションを大切にするリーダーのようですね。
「そうだと思います。私はいつも相手に自分の考えがきちんと伝わるように、ていねいに話をするように心がけています。そして、チーム全員が話しやすい環境をつくっていきたいと思っています」

―森さんにとって、灯炎とはどんな存在でしょうか?
「灯炎は、自分を変えたい人が変われる場所です。活動を通して新しい自分がみつかるかな、と思っています。引っ込み思案だった人が積極的になって、小さな声だった人が大きな声を出すようになりました。話すことが苦手だった人が、今では場を盛り上げてくれています」

―14代のみなさんが新しく始めたことはありますか?
「演舞の最初と最後に大きな声であいさつをしています。だんだんと定着して、私たちの特色になりました。それと、全員が笑顔で観客のみなさまにご挨拶をして、礼儀正しいふるまいを心がけています。チームのみんなが楽しんで、観客の笑顔もつくれるようになっていきたいです」

新作へ挑む

―新型コロナウイルスの影響はどうですか?
「実は、半年をかけて準備してきた舞台がキャンセルになったのです。これはチームにとってはかなりつらい、残念なことでした。練習は3カ月、できていません」

―それはたいへんでしたね。夏祭りも中止が発表されています。これからウイルスが収まれば、新しい振り付けの練習を始められますか?
「まだいつから練習ができるかはわかりませんが、ウイルスが収まりましたら新しい演舞を練習し、作品を発表していきたいです。先行して、5月16日に公式SNSでオリジナルの新曲「天攫み(あまつかみ)」を動画で発表しました。神様の兄妹の物語をイメージしたものです」

ーお祭りのほかにも演舞をすることがありますか?
「依頼があれば、地域や企業のイベントや、老人ホームでも演舞をしています。老人ホームを訪問すると、みなさん、楽しみにして待っていてくれます。お客さんと一緒に踊る”総踊り曲” というものがあるのですが、みなさん、たいへん楽しまれて、特に盛り上がります。時には、私たちの演舞に感激して、涙を流すおじいさん、おばあさんもいらっしゃいます。こうした方々は本当にありがたく、お一人おひとりとお話しをするのも、たいへん励みになります。自分たちの踊りがこんなにも人の心を動かすことができるのだと、一番、実感できる瞬間です」

街を元気にする「よさこい」

灯炎は、よさこいで老人ホームのみなさんを元気にするなど、地域貢献活動の担い手にもなっています。サークルでありながら “趣味”の域をはるかに超えた真剣な活動をしているのだと感じます。大学生として充実した生活を送り、責任感を持ってチームを運営し、向上心を持って活動していく姿を応援したくなりました。

14代の新作のお披露目が今から待ち遠しいところ。こんな時だからこそパワフルな踊りで街を元気づけてもらいたいものです。

「灯炎」公式Twitter 
「灯炎」公式Facebook

★2019年「よさこいサークル灯炎」受賞歴
太宰府門前真舞祭【Eブロック特別賞】
黒崎よさこい祭り2019【Cブロック3位】
さのよいファイヤーカーニバル【Dブロック サテライト賞】
わっしょいYOSAKOI北九州【アンダーイレブン 第3位】

★北九州市立大学
1946(昭和21)年7月創立の小倉外事専門学校が前身。5学部1学群(外国語学部・経済学部・文学部・法学部・地域創生学群・国際環境工学部)。学部生・大学院生6714名、教員数261名。

(北九州ノコト編集部)
3月16日、6月1日に取材を行いました。

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