八幡の街を見守ってきたケヤキを家具へ再活用/北九州市立大学福田研究室・大学院生有志
丸太と合板の接合部には、ゆるかやな段を設けることで、樹木の“枝張り・根張り”を表現したんだそう。また、段を作り、深く丸太をはめ込むことで、家具としての強度も高めていると言います。また、作業には産業用ロボットを使用したとのことで、少しでも寸法に誤差が出るとうまくいかないため、苦戦したと春田さん。普段は住宅という大きなものを考えているため、今回のプロジェクトを通して、小さなものを作る場合の寸法感覚が身につき、勉強になったと話してくれました。
今回、唯一登場したハンガーラックについては、「買い物した後、休憩する時に荷物があると、テーブルの上に置くのか、床に置くのかなど、荷物の置き場に困りますよね。僕自身そういった経験をしたことがあったので、荷物をかけられるようハンガーラックも作ってみました」とのこと。商業施設内にある休憩スペースに設置された家具だからこそ、利用者により便利に使ってもらえるよう、工夫が凝らされていました。
「45 degrees」(内藤卓郎さん)
作品タイトル「45 degrees」の通り、細部まで「45°」という角度にこだわって設計し、内藤さんが作り上げた家具はテーブルです。
最大幅30センチほどのスライスされた不整型板材を組み立て直し、再構築されたテーブルは、木目の美しさに目を奪われます。「素材となるケヤキ自体が比較的濃いストーリーを持っているので、ただ組み立て直すことにしました。ケヤキの板を見た時に、木目がきれいだなと感じたので、この木目を生かしたいと思った」と、正面や斜めなど、どこからテーブルを見ても木目が美しく見えるように組み立てたと言います。
ケヤキはかたく、反りやすいため、組み立てには苦戦したと言う内藤さん。不整型の板材を使っているため、いざ組み立て始めると、内藤さんが設計した寸法に足らず、別の板材を追加しなければいけないといったこともあったそうです。また、街路樹として長く使われてきたケヤキの内部には、釘が埋まっていることもあり、作業には慎重さも必要だったと言います。
そういった工程を経て完成した家具が「GRÖNSKA」に設置された姿を見た内藤さんは、「実寸大のものを実際に制作する機会は滅多にないので、今回のプロジェクトで貴重な機会を与えてもらったことに感謝しています」と語りました。
八幡の地図を模したテーブルや、利用者が育てていく椅子も
今回、話を聞くことができた2人の作品に加え、「GRÖNSKA」にはお披露目式に出席できなかった2人の作品も設置されています。竹安信二さんによる「『なでる。さする。こする。』ための椅子」と、西田秀平さんが手掛けた「地図卓」です。
竹安さんの「『なでる。さする。こする。』ための椅子」は、内藤さんのテーブル「45 degrees」と一緒に設置されています。その特徴は、椅子のひじ掛け部分に使われたケヤキが波打っていること。「街を飾るケヤキを愛おしむようになで、役目を終えたケヤキを労わるようにさすり、ケヤキの肌ざわりを感じながら、より艶のあるケヤキになるように、たくさんこすって楽しんでもらいたい」という想いを込め、デザインされています。
西田さんの「地図卓」は、八幡の駅前をモチーフにした机で、よく見ると、八幡駅と環状交差点の尾倉ロータリーを結んでいる「国際通り」を表す部分にケヤキが使用されています。机の脚部分にもケヤキを使用。「地図を眺め、過去と未来に思いを馳せてほしい」という願いがデザインされた机です。
プロジェクトは彼らの後輩たちに引き継がれ、残りのケヤキを再活用した新しい家具の制作がこれからスタートするとのこと。次は学生たちのどのような想いが込められた家具が誕生するのか、今から完成が楽しみです。
※2021年4月13日現在の情報です
(北九州ノコト編集部)