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<北九州芸術劇場>が“誰もが楽しめる劇場”へ──「みえる・みえない」を越えて一緒に楽しむ取り組みとは?
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(アイキャッチ画像:ワークショップの様子)

演劇やダンス、音楽など、さまざまな舞台芸術と出会える「北九州芸術劇場」。

劇場では2026年度から、障害の有無や社会的立場を問わず、誰もがともに文化芸術を楽しみ、出会い、つながる機会を育む「インクルーシブな劇場推進プロジェクト」をスタートしています。

劇場を、より多くの人が訪れ、楽しみ、表現できる場所へ──。

その取り組みのひとつとして9月20日、視覚に障害のある人とその家族・友人・支援者を対象にした「みえてもみえなくても、一緒にダンスを楽しむワークショップ」が開催されました。

今回は、その様子を紹介します。

“自分の身体”と、“劇場という空間”を知る

「劇場」と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは、客席に座って演劇やダンスなどの舞台を鑑賞する光景ではないでしょうか。

しかし、劇場の楽しみ方はそれだけではありません。

9月20日のワークショップで講師を務めたのは、振付家・演出家・ダンサーの白神ももこさん。当日は視覚に障害のある方9人と、家族・友人・支援者5人の計14人が参加しました。

まずは自己紹介からスタート。その後、自分の身体を触りながらゆっくりとほぐしていきます。身体がほぐれていくのと一緒に、参加者の緊張も少しずつほどけていくようです。

続いて行われたのは、小劇場の壁に触れながら会場内を一周する「タッチツアー」。壁に手を当て、その質感を確かめながらゆっくりと歩いていきます。

今いる場所はどんな空間なのか、壁まではどれくらいの距離なのか。「見る」ことだけではない方法で劇場という空間を確かめていくと、その輪郭が少しずつ浮かび上がってきます。

手から手へ 身体の動きを伝えてみる

空間に慣れてきたところで、今度は参加者全員で輪になり、手をつなぎます。隣の人へ身体の動きを順番に伝えていくワークです。

相手の手をぎゅっと握るなど、シンプルな動きを手から手へとつないでいくと、言葉を使わなくても、「伝えた」「伝わった」と感じられる瞬間があります。

動きが無事に一周すると、参加者からは自然と拍手が起きました。会場の雰囲気も、最初とはずいぶん変わってきました。

小劇場の中に「森」が出現?

身体を動かすことにも慣れてきたころ、白神さんからこんな言葉が投げかけられました。

「みんなで森をつくってみましょう」

参加者は思い思いの「木」になり、小劇場の中に散らばります。

そこへ「風が吹いてきました」「動物が歩いています」といったシチュエーションが加えられると、アシスタント講師たちが「風」や「動物」になって、参加者がつくった森の中を駆け回ります。

それに呼応するように、参加者も身体を揺らしたり、動かしたりと自由に表現。目の前にあるものを見るのではなく、身体や音、周囲の気配を感じながら想像することで、小劇場の中にひとつの「森」が立ち上がっていきました。

音楽が聞こえなくなるほどの笑い声

ワークショップの最後には、参加者全員が舞台の中央へ。

満員電車のように肩を寄せ合うほどの距離に集まり、お互いの身体の温度や呼吸を感じながら、音楽に合わせて身体を動かしました。

最初は少し緊張していた参加者も、これまでのワークを重ねる中で身体も心も少しずつほぐれていった様子。やがて会場には、音楽が聞こえなくなるほどの笑い声が響きました。

「みえる」「みえない」に関係なく、同じ場所で、同じ時間を共有しながら身体を動かす──その温かい空気や楽しさが、小劇場いっぱいに広がっていました。

「人とのぬくもりを感じる時間になった」

ワークショップを終えた参加者からは、さまざまな感想が寄せられました。

「実際にホール内を移動して、舞台そでが気に入った」
「人のぬくもりを感じる時間でした」
「体を動かすことの楽しさを感じました」

また、これまで観劇で劇場を訪れたことがある参加者からも、「今回のような体験ができることは初めて知った」という声がありました。

ペアでのワークを通して「普段はリードされることが多く、自分が相手をリードすることがなかったので新鮮だった」といった気づきを得た参加者や、「音がよく聞こえる、響くのが良かった」という劇場空間ならではの発見も垣間見えました。

劇場という場所を、観客として客席から楽しむだけではなく、実際に歩き、触れ、人とつながりながら体験する──そんな新しい劇場との出会いにもなったようです。

劇場スタッフにとっても新たな「気づき」に

今回のワークショップは、参加者だけでなく劇場スタッフにとっても多くの発見があったといいます。

担当したスタッフは、普段の生活の中で自分たちがいかに「視覚」に頼って行動しているかを改めて意識したそうです。

例えば、会場の配置や段差、物の位置。普段なら目で確認すれば済むことでも、それを言葉だけで相手にわかりやすく伝えるとなると、簡単ではありません。

また、参加者によって必要なサポートも異なり、前を歩いて道筋を示すことで安心できる場合もあれば、周囲の状況を声で説明することが必要な場合もあります。

スタッフは今回の経験について、一つひとつが学びだったと振り返ります。

「困っている方に気付いたとき、そっと寄り添えるようなサポートが自然にできるよう、これからも経験を重ねていきたい」

“誰もが楽しめる劇場”をつくることは、設備やサービスを整えるだけで完成するものではないのかもしれません。

実際にさまざまな人が劇場に集まり、一緒に時間を過ごす。その経験を積み重ねながら、劇場そのものも少しずつ変わっていく──。

「インクルーシブな劇場推進プロジェクト」は、そのための取り組みでもあるのです。

12月には『石炭の走る街』で「鑑賞支援サービス」を実施

2026年12月5日(土)に中劇場で上演される「Re:北九州の記憶~未来へつなぐ物語『石炭の走る街』」では、視覚・聴覚に障害のある方に向けた鑑賞支援サービスを実施します。

みえない・みえにくい方に向けては、登場人物の動きや舞台セットの変化などをリアルタイムで伝える「音声ガイド」を貸出し。また、開演45分前から、公演内容や舞台配置などについて説明する事前説明会も行われます。

きこえない・きこえにくい方に向けては、お手元のスマートフォンやタブレットにセリフをリアルタイムで表示する「ポータブル字幕サービス」を実施。
※音声ガイドとポータブル字幕サービスは貸出台数に限りがあります。

このほか、座席までの誘導サポートや、劇場内は補助犬の同伴も可能です(要事前連絡)。

文化芸術を「一部の人のもの」ではなく、誰もがそれぞれの方法で楽しめるものへ。

北九州芸術劇場で始まった新しい取り組みをきっかけに、これまで劇場に足を運ぶ機会がなかった人も、一度その扉を開いてみてはいかがでしょうか。

<鑑賞支援サービス実施概要>
■対象公演:Re:北九州の記憶~未来へつなぐ物語「石炭の走る街」
■日時:2026年12月5日(土)午後2時開演
■会場:J:COM北九州芸術劇場 中劇場
■対象:みえない・みえにくい方/きこえない・きこえにくい方(※未就学児入場不可)
■利用料:無料(観劇には別途公演チケットが必要)
■申込締切:2026年11月18日(水)必着・先着順
「鑑賞支援サービス」の詳細はこちら

<提供:(公財)北九州市芸術文化振興財団 北九州芸術劇場 >

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