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人生を豊かにする『食』 感謝の心を忘れずに/「ボンファム」オーナーシェフ・岩田信示さん

(アイキャッチ画像:岩田さん親子)

西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。

「ペリゴール」と「ボンファム」の相互効果

甲木:先週は、シェフに小倉の老舗フレンチの歴史についてお話を伺いました。

梁:勉強になりました。

甲木:伝統を守りながら少しずつお料理は変わっているというお話でした。今、ボンファムの隣に新しいお店があるんですけれども、今日はそのお話を聞いてみたいと思っています。先週に引き続き、北九州市小倉北区のフレンチレストラン「ボンファム」オーナーシェフ 岩田信示さんをゲストにお招きしお話を伺います。よろしくお願いします。

岩田:よろしくお願いします。

甲木:38年続いたボンファムの横に、今「ペリゴール」というカジュアルなお店がありますよね。こちらをオープンするきっかけは?

岩田:たまたま隣の喫茶店だったところが、何かの事情で明け方いなくなっちゃって。

甲木・梁:明け方いなくなった!?

岩田:それで、何か使えないかってことで。ちょうどその頃、ワインブームがきてまして、博多ではワインバーが。

甲木:ありましたね。

岩田:その中で一番売れていた「クッキー」というお店があって。そこがたまたま僕の知り合いだったので、それに似たようなお店を作ろうと。ボンファムはフランス料理の専門店。そのボンファムのオーナーがすぐ隣でやるので、やっぱりフランス的なカジュアルなもので、ワインを中心にやろうと思ったのがきっかけです。

甲木:そうなんですね。お店の中の調度品や家具とかも(ボンファムと)全然違いますし、ちょっと気軽に構えずに行ける感じですよね。

梁:ボンファムと全然雰囲気違うんですか?

甲木:わいわいワインを飲める感じですね。

岩田: そうなんですよ。もちろん、わいわいワイン飲むのも目的なんですが、インテリアの方にすると、ボンファムは石造りのガチっとした造りだから、あんまり崩したらおかしいよと。色は違うんですが友人に立派な石を張りつけてもらって、多くの皆さんに来て頂きたいなと思っていたんですが、出来上がってみるとちょっと敷居が高いじゃないかっていう。(笑)

甲木・梁:(笑い)

岩田:表の玄関の雰囲気が。

甲木:玄関は確かに。

岩田:でも、ボンファムを知っててワインを楽しみたい方に集まってくださって、結果オーライだったんですけど。

甲木:黒板メニューがあって、今日仕入れたお魚でメニューが書いてあるので、みんなで楽しく選んで。

息子がフランス料理を志した時 親子であり、師弟であり、ライバルでも

甲木:今、そのペリゴールは、主に息子さんご夫婦に任せていらっしゃるんですよね?

岩田:この息子が今年で40過ぎですけど、自分と同じようにフランス料理の道を志した時に、やめとけよと。朝は早いし。

甲木:そうですね。仕入れが。

岩田:クリスマスといっても家にいない。親父は、お客さんのためにクリスマスディナーを作っている。ちょっと寂しい思いをしたと後で聞きましたけど…。「どうするか?」って聞いた時に、「どうしてもやりたい」と。ならば、やっぱり自分のことを理解してもらうには、自分の師匠の井上の元で修業させなきゃいけないと思い、修業に出しました。

甲木:そうですか。じゃあ、今は、親子であり、師弟であり、職員同士としての人生を歩んでいらっしゃるんですね。でも、頼もしくなってこられましたよね。私が言うのもなんですが。(笑)

岩田:そうですね。お客さんとペリゴールの話になると、僕が息子の代わりパスタ作ったりすると、「息子さんの方が美味しいよ」って。

甲木・梁:(笑い)

岩田:それはそうだろうって。(笑)

甲木:そうですよね。ボンファムはフレンチなので、パスタは作りませんからね。

岩田:ピザもうちの息子が仕込んで、ローマ風じゃなく北イタリア風のパリパリしたものを作るんですが、

お客さん)「岩田さん、息子さんが作った方が美味しい」

岩田)「何で?」

お客さん)「量が違う」

岩田)「何の量が違う?」

お客さん)「松茸の量が違う。息子さん、溢れるほど載せるよ」

って言うんですよ。

甲木:お客さんとしては有難いけど。(笑)

嚥下食ってご存じですか?

甲木:あと、岩田さんは、ご自身のお店のお料理だけではなく、学校の給食も。特別支援学校の給食を作っていらっしゃる方に、アドバイスをなさったりもされてましたよね?

岩田:常連のお客さんで牟田園さんという方が、北九州市の特別支援学校の先生をされていて。縁があったのは約20数年前に、彼女の要請で学校にデザートを持って行った事があって。特別支援学校の食事時間にお伺いした時、いろんな障害のある生徒さんがいらっしゃって、そういう光景を初めて見ました。その方からアドバイスを受けた時に、フレンチのムースが喉越しが良いので、嚥下食(えんげしょく)の応用範囲に入るんじゃないかって。嚥下食というのは、飲み込みや飲み違え、硬いものが食べられない方の食事のことですね。それで、嚥下食のコンクールがあるんですが、間近になって、盛り付けの指導をということで。

甲木:ご指導をして。

岩田:こういう方がスポットライトを浴びて、嚥下食という分野がもっともっと広まればと。

「食」は人生を豊かにする 感謝の気持ちを忘れずに

岩田:そういった食を通して、新たに考えさせられることがありますね。まず、食事というのは、我々日本人はご飯を食べる前に「いただきます」と言いますよね。自分が小さい時は、親父の関係で「いただきます」の前に、家族兄弟みんな目をつぶって「食物はみな、天地の神様が作ったものだ。何を飲むのも、何を食べるのも有難いという気持ちを忘れちゃいかんよ」と祈りで示すというのがあったんです。なので、食事というのは、僕の中ではもちろん「いただきます」も大事ですが、その前に、そういった言葉をずっと唱えていたので、それが根底にありますね。それで、フランス料理に恵まれて、今日があるんじゃないかな。

甲木:そうなんですね。そして、その食というお仕事を通して、いろんな意味で幸せな物を運んでいらっしゃる。

梁:人生を豊かにしますよね。

岩田:そうですね。一回きりの人生ですから。

甲木:やっぱり何を食べたか、誰と食べたか、どんな空間で食べたかというのはすごく大事になりますからね。

梁:本当ですね。

甲木:これからも、(ボンファムという)良い場所で良いお食事をずっと提供して頂きたいです。

岩田:ありがとうございます。

 

〇ゲスト:岩田信示さん(ボンファム オーナーシェフ)

〇出演:甲木正子(西日本新聞社北九州本社)、梁京燮(同)

(西日本新聞社北九州本社)

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