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受賞後も書きたいことがたくさん/作家・町田そのこさん

(アイキャッチ画像:トークの様子)

西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。

受賞後、声をかけられる?

甲木:横山さん、先週は、町田さんがもう一度来てくださって本当に嬉しかったですね。今週も、京都(みやこ)郡在住の本屋大賞受賞作家・町田そのこさんをゲストにお迎えしてお話を伺います。町田さん、今日もよろしくお願いします。

町田:よろしくお願いします。

横山:よろしくお願いします。

甲木:先週は、町田さんが「52ヘルツのクジラたち」(中央公論新社)で本屋大賞を受賞されて、お仕事が増えたり、プレッシャーがあったりした話をお聞きしました。今週は、ちょっとプライベートの変化などについてもお話しを聞きたいと思います。町田さんはテレビや新聞への露出も増えたようですけど、ご近所の方から声をかけられたりとか、そんなことは増えたのでしょうか?

町田:一人だけですが、「あなたテレビに出てたよね。あなたの本を買ってきたので、サインちょうだい」と本を持ってこられた方がいました。それで嬉しくて「じゃあその本にサインを書きますので、ちょっと預かっていいですか?」と言うと、差し出されたものが全然違う他の作家さんの本だった、ということがあります。

甲木・横山:(笑い)

横山:そんなことがあるんですか?

町田:ありましたね。その作家さんは年齢も私と同じくらいで、主婦をしながら執筆している方だったので「ああ、こういうこともあるのか」と思い、「いや、これ私の作品ではありません」と返しました。作家さんは私の友達でもあったので、後日「こういうことがあったよ」と連絡しました。

甲木:なるほど(笑)

町田:本を持ってこられた方は、「主婦の作家で、歳も40代で」という大まかな括りで判断されていたのだと思います。だからテレビも見ていなかったのかもしれません。

甲木:テレビを見てたら、お顔を知っていますからね。

町田:それに、テレビには本も一緒に出るので。

甲木:顔が売れることが良いことかどうかですね。

町田:ただ、いろいろ書店などを歩いていても声をかけられたことは1度もありませんでした。

甲木:そうですか。

町田:ないです、ないです。

甲木:では、他の作家さんの本の上に自分の本を置くことを今でもできますね。

町田:今やるとクエストさんから怒られるのではないかと思います。「いい加減にしろ」と言われるかもしれません。

横山:「もう十分目立っているだろう」と言われますよね?

甲木:コーナーもありますしね。

町田:そうですね。今はやっていないんですけど、隠れてコソコソと各書店さんに行って、積まれているところを見て「こんなにいっぱい置いてある」と思ってニヤニヤしています。

甲木:私たちも、町田さんの本がたくさん置かれているのを見ると嬉しくなりますね。

横山:あちこちの書店に町田さんのサインがありますよね?

町田:サインもすごくたくさん書かせていただくようになりまして。「町田そのこ」は実はペンネームなんですけど、多分生まれてこれまで書いてきた本名よりたくさん書いていると思います。

甲木・横山:(笑い)

「星を掬う」は夫の協力で

甲木:受賞後に仕事が増えた中で、生活のリズムや執筆の時間とかは変わりましたか?

町田:基本的には変わっていなんですけど、新刊の「星を掬う」(中央公論新社)を書くにあたって、時間が全然取れなかったんですね。どうしようと言っている時に夫が会社を休職してくれまして、「自分が家のことを全部するから、その間、君は本を書きなさい」と言ってくれて、それで自主的にホテルで缶詰めになる生活を送っていました。缶詰めと言っても朝イチでホテルに行き、夕方に帰れるようにはしていました。子どももいますので、泊まりにはせず朝の8時には家を出て夜7時に帰ってくるようにしていました。

横山:会社員みたいな生活ですね。

甲木:ホテルへの通勤みたいなことをやっていたんですね?

町田:やっていましたね。そのおかげで、ちゃんと締め切りどおり「星を掬う」の原稿が仕上がったんです。

甲木:そうですか。でも普通、夫は会社を休んでくれませんよね。すごく良い夫さんですね。

町田:やっぱり有難かったです。

甲木:まだ小さいお子さんもいらっしゃるから、結構大変だったと思うんですよ。家の事は。

町田:夫は家事もしてくれて、私が家に帰ったらご飯の支度などもしてくれていたりして。至れり尽くせりでしたね。「こんなに協力してくれるんだ」と思いました。

横山:私の妻にはこの放送を聴かせられないですね。

甲木:横山家はもう聴いていると思います。

今後も書きたいことがたくさん

甲木:今後の作品について、お聞かせいただきたいんですけど。私たちが期待している続編が出るとか。

町田:2021年12月30日には、「コンビニ兄弟2」(新潮文庫)がもう出ています。1月刊行なんですけど、年末には店頭に並んでいるはずです。

甲木:嬉しい。(拍手)

横山:やったー。

甲木:北九州の人は待ちわびていますからね。

町田:だといいなと思うんですけど。

甲木:お仕事が随分増えてきていることで、追われて書くみたいなペースになるのではないかと、心配になるんですけど。自分の中から出て行くものがすごく多くて、吸収する量よりも出て行く方が多くなるんじゃないかとか、そういうご心配はないんですか?

町田:ないですね。

甲木:書きたいことがどんどん出てくる、ということでしょうか?

町田:どんどん出てきますし、他の作家さんの作品を読んでいるだけで、自分にない世界を描いておられることが刺激になります。そしてその世界をもっと知りたいと思い、その本に関わる資料を読むことによって、自分の世界もどんどん広がるという経験をしています。だから今のところ書きたいことには困っていないです。でも筆は遅いので、待たせているお仕事がいっぱいあって大変ですけど。

甲木:そうですか。でも私たちにとってはそんなに遅いとは思いません。「あ、『星を掬う』が出た」そしてその後「コンビニ兄弟の2が出るんだ」と、読者としてはいい感じのペースですけど。

町田:まあ、自分の書けるペースで、これからもゆっくり書いていけたらいいなと思います。

甲木:書きたいことが自分の中にたくさんあることは、すごくいいことですね。

町田:そうですね。「書きたいジャンル」もまだあります。ホラーも書いてみたいですし、あと純粋な恋愛小説とか、自分が書いたことがないジャンルがいっぱいあるので、どんどん挑戦していきたいと思います。その結果「あ、こんなものも書けるんだ」と思っていただいたら嬉しいです。

甲木:町田さん、前回ご出演いただいたときに、小説家の氷室冴子さんが亡くなって、「私は何をしていたのだろう。小説家になって、氷室さんに会いにいきたかったのに」と思ったとおっしゃっていましたね。町田さんは小説家デビューとしては遅咲きだったかもしれないですけど、その分溜めていたものが今一気にほとばしっているということでしょうか?

町田:はい。だいぶん溜めていたんだなと思います。伝えたいことや言いたいことがたくさんあるので、まだまだ大丈夫だと思います。

甲木:嬉しいです。これからも地元の作家としてご活躍いただきたいです。

町田:はい。頑張ります。

横山:2021年の放送も今回が最後になりますが、楽しかったですね。

甲木:自分たちのラジオに以前出ていただいた方が、こんなに大きな賞をとってここに戻ってきてくださって。こんなにいい一年の締めくくりはないですね。

横山:きっと僕、この回が放送される頃は「コンビニ兄弟2」を読みながら聴いています。

甲木:そうですね。先週、今週と2回にわたり、京都郡在住の作家・町田そのこさんにお話を伺いました。町田さん、どうもありがとうございました。

横山:ありがとうございました。

町田:ありがとうございました。

〇ゲスト:町田そのこさん(作家)

〇出演:甲木正子(西日本新聞社北九州本社)、横山智徳(同)

(西日本新聞北九州本社)

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