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誰かを笑顔にする仕事/米原将平(手ぬぐい社長)

現在37歳の米原将平さん。
21歳の時に親族の営む呉服屋「米七-komesich-i」に入社。
1998年ごろから経営難に陥っていたこの会社をどん底から立て直すため、第一線で戦い続けてきた。
挑戦と失敗を繰り返してきた米原さんのこれまでの道程を伺おうと思う。

会社の存続をかけて

ー入社当時から会社の経営状態は悪かったそうですね。
「ぼくが入社した当時(2004年)は、どれだけ売上を立てたとしても利益が出ないような企業体質でした。最大で市内に7店舗展開していて、その家賃や光熱費だけでも経営を圧迫していました。何としてもこの歴史ある会社を存続させる方法がないか考えました」

ーどのようにその危機を乗り越えたのでしょうか。
「入社から数年経った時に考えたのがインターネット事業部(以下ネット事業部)の立ち上げです。実店舗を持たずして販路を拡大することや、将来性を考えての戦略でした。しかし、当時はまだ今ほどインターネット販売は盛り上がってはいませんでしたから、社内から猛反発を受けてなかなか事業が前に進みませんでした。急にインターネットで商品を販売をするなんて言われても、
受け入れられないのは当たり前だったかもしれません。ただ、この事業を進めないことには会社が潰れてしまうと思ったので、社内の承認を得ることなく勝手に始めることにし、事後報告的に当時の社長に伝え、了承をせざるを得ない状況にもっていきました」

ーネット事業部はすぐに軌道に乗りましたか?
「すぐには結果は出ませんでした。2ヶ月間は売上ゼロで、3ヶ月目でやっと7万円。社内でも不穏な空気が流れ、『もうこの事業はうまくいかない』と囁かれていました。しかしその翌月に40万円の売上が出て、さらにその翌月には100万円を超えるほどの数字を叩き出し、気付いたら1年ほどで毎月400万円ほどは安定して売れるようになりました」

ーその後も順調に進んでいきましたか?
「5年ほどで月商2000万円になるまで成長させることができました。店舗での売上が月商1000万円ほどでしたから、社内でもネット事業部の発言力が強まりました。それをいいことに、社内ではやりたいと思ったことをスピード感を持って進めていき、利益の最大化を図りました」

「失敗を繰り返しながらも、一つ一つ課題をクリアしていくにつれて売上も上がっていき、どんどん結果を出していくぼくらの部署は社内でも信用を勝ち取ることができました。そうしてネット事業を立ち上げてから8年が経過した2016年に、ぼくは社長に就任することとなりました」

次なる手を打つ

ー社長に就任してからはどんな改革をしたのですか。
「これから10年先を想像した時に、競合他社の多い和服業界で果たして自社の商品が売れ続けるのかというのは疑問に思っていました。また、今と違った和服の使い方をしたり、形を変えたりすることをぼくはイメージができなかったんです。それまで主力商品であった和服の販売をやめることにしましたが、それには大変勇気が必要でした」

「和服に次いで2番目の人気商品だったのが『てぬぐい』です。単価は和服とは比べ物にはなりませんが、それ以上にてぬぐいの可能性を感じていました。若者でも手に取りたくなるようなデザインを加えたり、ご当地感や季節感を出していくことで、お土産としても手にとってもらえる。自分たちの企画次第で成長できる商品だと感じていました」

ーてぬぐいの販売に集中した結果はどうだったのでしょうか。
「とあるイベントに出店する機会があり、小倉城のデザインのてぬぐいを置いていたのですが、それが北橋市長の目にとまり、後日市長室までそれを持って行くことになりました。それがなんと市長室に飾ってもらえるとは思ってもいませんでした。その後も、ラグビーワールドカップ2019の日本代表にノベルティとして当社の手ぬぐいが選手たちに贈呈された影響もあり、売り上げは順調に伸びていって、社長就任3年後には14年ぶりに黒字転換することができました」

ー現在何種類ほどのデザインがあるのでしょう?
「数えてはいませんが100種類以上はあるはずです。北九州ならではのデザインはもちろん、地域のお店とのコラボ商品なんかもあります。『こんなのあったら楽しいね』となれば、なんでもデザインして商品化します。売れるか売れないかより、手に取ってくれた人が明るい気持ちになってくれることを意識しています」

将来に何をつなげるか

ー今後の展開を教えてください。
「一度、実店舗は全てたたんだのですが、改めて店舗展開をはじめたいと考えています。理想を言うと、古民家のような歴史や味のある物件を見つけて、当社の商品を並べられる場を作りたいですね。SNSを通して当社の手ぬぐいを知ってくださった方々が時々事務所にまで来てくれることがあるのですが、ただの事務所なのでゆっくり商品を見るような場所ではないんです。迎え入れるぼくらもなかなか自信を持って接客できていないことにモヤモヤし、これはどうにかしないといけないなと感じていました。せっかく来てくれたお客さんにとって楽しめる空間を作りたいですね」

「それから、利益をしっかりと出し続けられるよう、会社の健全化に努めたいです。そうすることでスタッフの給料を上げたり福利厚生をよくしたり、その他にもスタッフが働きやすい環境を更に整えていくつもりです。楽しみながら長く働いてもらえるような会社を目指したいと考えています」

はたらくを楽しく

インタビュー中でとても印象的だったのが、スタッフのみなさんがテキパキと仕事をしている中でも社長とのちょっとした会話を楽しみながら仕事に取り組んでいること。社長とスタッフの距離が近く、その物腰のやわらかさがきっとスタッフの笑顔を引き出すことにつながっているのだろう。

まるで一家の大黒柱のように家族を見守り、支え、そのひとりひとりの笑顔の為に米原さんは日々頑張っているのだろうと感じる。毎日着る服は奥さまが選んでいるとのことだが、そのチョイスもまた社長のお茶目なキャラクターを引き立てていて、社内を明るく彩っている。

近い将来に誕生するであろう新しい店舗も、きっと明るく楽しみに溢れた空間になるのだろう。完成する日が楽しみだ。

(北九州ノコト・西方俊宏)

◆米原将平さんプロフィール
株式会社米七代表取締役。社長就任から3年で、14年連続赤字だった同社を黒字化した。手ぬぐい社長(てぬぐいしゃちょー)としてYoutubeやSNSでの情報発信にも力を入れる。YouTubeのチャンネル登録数は2000人。

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