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【北Q散歩】画家・浜方コオ「僕にとって北九州は安心できる場所」

北Q散歩
“北九州の日常”のなかに見つけた素敵な「もの・こと」。ふと気になった、その「中の人」はどんな人なんだろう?
「中の人」を知ることで「もの・こと」の見え方は違ってくる。「地域」を知るには「中の人」を知るべきではないか。
北九州出身のひよっこライターが、あまり知られていない北九州の「もの・こと」を「中の人」を通して紹介していきます。

【今日のおさんぽ】
眺めていると、情景がくるくる変わる球体。描かれる絵の繊細さに魅了され、まるで森の中にいるような気分になりました。
描かれた絵に、人柄がにじみ出ているのではないか。だとすると、とても素敵な人なんじゃないか。そう思い「会ってみよう!」と工房を訪ねました。
(取材日:2020年1月30日)

 

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玉絵 コロコロアニメ 玉コロです。 #玉絵 #浜方コオ #北九州 #アート #タツノオトシゴ

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北九州市小倉北区到津の八幡神社の真裏。
「浜方工房」は、大通りからいたびつ川を渡り、坂を少し上がったところにあります。
出迎えてくれたのは、浜方コオさん(以下、浜方さん)。
体つきの良い方で一瞬圧倒されますが、とても穏やかで温厚な印象を受けました。

浜方さんと絵画

―裏手はすぐ山なんですね。車通りの多い道から少し入っただけなのに、すごく自然も豊かで良い場所です。浜方さんはここで生まれ育ったのですか?
「生まれも育ちも北九州市小倉北区です。父の仕事の関係で、幼いころから身近に画材があるような生活でした。絵を描こうと思って始めたわけではなく、気づけば絵を描くことが日常になっていたような感じです。中学生の頃はサッカー少年だったんですよ!ガリガリに痩せていていました(笑)
福岡県立戸畑高校に入学して、そこからは美術部。高校卒業後、東京・世田谷にある多摩美術大学芸術学科へ入学しましたが、中退してこっち(北九州)に戻ってきました」

―戻ってきたのは、北九州のほうが生活しやすかった・・・とか?
「中退したのは家庭の事情もあったのですが、都会は息苦しくて。
絵を描くことが嫌になったのではなく、絵を勉強し『正解』を求められることに疲れたのかもしれません。生まれ育ったこの場所(小倉北区到津)は、すぐそばに森があって…僕は“隠れ里”って呼んでるんですけど。戻ってきてすごく気持ちが落ち着きました。僕にとってここは、安心できる場所です」

縁が縁を結ぶ

―そこから浜方さんの画家生活が始まったんですか?
「ご縁があって、桑の実工房という障がい者福祉施設から『重度の障がいがある方を対象とした絵を描くレクレーションをやってくれないか』という話がありました。そこから、他の福祉施設などからも声がかかり、ワークショップをやることが増えましたね。あとは、モノレールのサンタ列車(※1)のデザインや、わっしょい百万夏祭り(※2)のポスター制作の依頼、病院や保育園、老人ホームなどに絵を置きたいというお話をもらうことが増えました。ご縁がご縁を呼んでくれていると思います」

※1 北九州モノレールが毎年クリスマスの時季に実施している企画。クリスマス仕様の車両や、サンタクロースが登場する「サンタ列車」が運行される。
※2 わっしょい百万夏祭り:小倉北区で毎年夏に行われる、北九州市を代表する祭り。例年150万人を超える観客が市内や県内外から訪れる。

―ワークショップは今も続いていますか?
「今も、障がい者福祉施設で週に1回は絵画支援を続けていますし、イベントに呼んでいただきワークショップをすることもあります。イベントでのワークショップは、対象年齢を設けずにやっていますが、お子さんが多いですね。夏休み期間中だと、夏休みの宿題の自由研究にもなるからって参加してくれる子が多いです。
子どもたちは素直だから、楽しくないことも伝わるし、楽しいこともしっかり伝わってきます。絵が苦手と思ってる子もいるけど、上手に描こうとするから苦手意識が出ちゃうのかな。苦手と思う必要はなくて、どれだけ楽しく描けるかが大事だということをワークショップを通じて体験してもらえたらと思っています」

ビー玉を使った『たまゆらアート』

―実は私も絵が苦手です。お手本があればなんとなく描けますが、自由に描いて!と言われると手が止まっちゃう。
「子どもたちに教える中で1つの“あること”に気がついたんです。
施設で『はい!絵を描いてー!』というと、キャラクターや得意な絵を描いて、はい!終わり!という子が多くて。背景を描く子ってあまりいないんですよ。どうすれば背景もできるかな?というところから生まれたのが“たまゆらアート”です」

―『たまゆらアート』というのは?
「僕が勝手につけた名称ですけど、ビー玉と箱と絵の具を使ったアートです。箱の中にビー玉を大小5~6個入れて、その中のひとつに少量の絵の具をつけます。
そして、箱の中でコロコロ…また絵の具をつけてコロコロ…を繰り返すと、絵を描かなくても、ビー玉が散りばめてくれた絵の具で背景を演出してくれます」

―絵が苦手でもできそうな気がします!
「ちょっとやってみますか?簡単にできますよ!
まず、好きな色の絵の具でも良いし、ラメ入りののりも使えます。少しだけビー玉につけて、箱の中で繰り返し転がしてください。色を重ねていくことで立体感が出てきます。
ビー玉以外にも、ゴルフボールやペット用のボールを使ってみたこともありますね。これ使ったらおもしろそう!って思ったら、とりあえずなんでも使ってみます」

―(コロコロしながら)音がいいですね。どんな感じになるかは転がさないとわからないので、「何かを描く」と身構えなくてよく、気持ちが楽です!
「これが大人数でやると、すごい音になるんですよ。あそこは何をやってるんだ?という目で見られることもあります(笑)」
「さあ、あとはメインの絵を入れて、さらにビー玉を転がしてもいい味がでますよ!おお!…いいじゃないですか!」

―背景ができてる!実は私も背景を描けないタイプなんです。これだったら苦手意識あっても楽しく描けますね!
「そうでしょう?楽しむことは本当に大事!」

唯一無二の「油紙絵」

工房内の壁に、CDサイズの球体がたくさん並べられていました。

―これはInstagramで公開している球体ですね!
「玉絵ちゃんです。かわいいでしょう?これはね、元は球体の発泡スチロールなんです。その上に油紙(※)を球体に切り貼りし、絵を描きます。油紙と絵の具の相性がとても良いんですよ」
※油紙(あぶらかみ・ゆし):包装用、医療用などに多く使われた、紙の表面に薄く油を引いて乾燥させたもの。2000年代になり使われることは少なくなっているが、薬局などで購入が可能。

―球体に油紙を貼ったり、曲線上に直線引いたりって、素人目で見ても難しいと思うのですが…
「正直難しいです。油紙を貼る作業は、凸凹にならないように気を付けます。フリーハンドの直線は、絵画の基本なので嫌というほど練習をしました。それが球体になるととても集中力を使います。それでも球体に絵を描こうと思ったのは、平らなキャンパスは、一面しか楽しめない。球体だったら毎日少しずつ動かすことで、ひとつの作品だけど違った楽しみ方ができます。ひとつひとつの玉絵にストーリーがあるので、物語として想像してもらえるとさらに楽しいかもしれません」

浜方さんの挑戦

―Instagramで毎日更新している「#日々絵2020」。こちらは、本当に毎日更新するんですか?疑っているわけじゃないんですが、率直に大変だなという印象です。
「そうですね。よく考えたら2020年って366日(今年はうるう年)あるんですよね(笑)無謀かなと自分でも思います。元々目標立てたりするのが苦手なんですよ。だけど年末に『来年は目標を立てて何かしたい』と考えていて。今のところ年中無休で頑張っています」

―更新しなきゃという使命感に駆られませんか?
「今のところ大丈夫です。心が折れそうになったら“隠れ里”に行ってリフレッシュします。でも、5月くらいからちょっと苦しくなってくるかもしれない(笑)」

―他に、2020年にやりたいことってありますか?
「工房に、たくさんの人を招待できるようにしたいです。交通の便が悪い場所ですが、散歩ついでに寄ってもらえるような場所にできたらと思います」

産まれ育った北九州に戻り、活動を続けたからこそ生まれた”浜方アート”。毎日投稿される作品からは、強いエネルギーと柔らかい心が伝わってきます。
人柄と、育った環境がそのまま出ていて、緑の中に飛び込んだ気持ちになりました。童心に帰るとはまさにこのことかと。
浜方さんは、幼少期の心を忘れず、作品に想いを込め、北九州市内でたくさんの人々を楽しませてくれている方でした。浜方さんの挑戦は、まだまだ続きます。
(北九州ノコト・大畠あずさ)

浜方コオさん アーティスト、画家、たまゆらアート、油紙絵
HP:https://koo578.wixsite.com/hamakata-art
工房でのワークショップ体験、見学をご希望の方は、公式サイトのContact、またはInstagram(hamahama1968)のメッセージからお問い合わせください。
浜方工房:福岡県北九州市小倉北区上到津1-10-10

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