出光興産創業地・門司港に開館!世界に誇る宝物に出会える場所 出光美術館・門司副館長/高橋一壽さん
西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。今回ゲストは、出光美術館・門司の副館長、高橋一壽さんです。
北九州市都市景観賞を受賞した美術館
甲木:おはようございます。西日本新聞社 ナビゲーターの甲木正子です。
野口:同じく、西日本新聞社 野口喜久子です。
甲木:野口さんは去年の夏に北九州に転勤して来られて、門司港は行かれましたか?
野口:出光美術館さんに伺うために3回行きました。最初は自分だけで行き、その後友人、家族とそれぞれ伺いました。
甲木:ということで、今日は出光美術館からゲストをお招きしております。門司港にあります、出光美術館門司の副館長、高橋一壽さんです。よろしくお願いします。
野口:よろしくお願いします。
高橋:よろしくお願いします。
甲木:出光美術館は、高橋さんが副館長を務めていらっしゃるわけですけれども、どういう美術館なのか、お聞きしたいと思います。
高橋:出光美術館門司は、当時の北九州市長より創業の地である門司港への大変ご熱心な誘致を受けて、2000年に開館致しました。
甲木:末吉市長時代ですね。
高橋:そうですね。とても積極的に「お出で頂かないですか」とお誘いを頂いたと聞いています。その後、2016年に美術館を全面改築しましたが、理由として、その前にありました東日本大震災の影響がございます。その当時、美術館の耐震構造が非常に弱かったのと、海に近い美術館ですので、東日本大震災の時に1階に例えば展覧室とか、地下に収蔵庫を持っている美術館やいろいろな施設が津波の被害を受けてしまったんです。その教訓を生かして当館展示室は2階、3階に設えています。
甲木:それで2階以上が美術品を置いているところなんですね。
高橋:そうなんです。メインの展示室は2階にありまして、年4、5回行う展覧会の会場として使っておりますが、3階にはやや小さい展示室がありまして、そこでは昨年から「出光佐三のコレクション」と題して、出光興産創業者である出光佐三が愛した美術品を展示しております。
甲木:なるほど。
高橋:会館当初は、倉庫の外観を残した美術館として、レトロチックの雰囲気にマッチして大変人気があったんです。新しくなった美術館もレンガ調を残しながらもモダンな外観となっていまして、2019年には第8回北九州市都市景観賞を頂いています。
甲木:私も記憶にありますけど、開館当初の門司の倉庫街に合っていて、雰囲気すごく良かったんですよね。
高橋:はい、ありがとうございます。
日本と中国の古美術を中心に層の厚いコレクション
甲木:その出光美術館の特徴なんですけれども、どんなコレクションが得意など、そういうのはどうなってますでしょうか?
高橋:出光美術館は国宝が2点で、「伴大納言絵巻」と古筆手鑑「見努世友」という作品を持っております。重要文化財は54点ありまして、それらをはじめとして、約1万5千点の美術品を所蔵しております。そのコレクションの中身は、東洋の陶磁器で、例えば古唐津、古九谷、京焼、板谷波山(陶芸家)。そして中国陶磁器などから書画、例えば博多の有名な“仙厓さん”ですとか、琳派、肉筆浮世絵、文人画、大和絵、墨跡などです。そして西洋画では“ルオー”を所有し、日本と中国の古美術を中心に大変幅広く層が厚いコレクションとなっております。
甲木:本当に、幅広いですよね。
高橋:そうですね。中国、日本の古美術については非常に多くのコレクションを持っています。
甲木:去年、私は、“唐三彩”を見せて頂いて、あのように時代によってとか唐三彩がどう変わったかとか、ペルシャの影響を受けたり、人の顔がこうなんだよというのを高橋さんにご案内頂きましたが、ものすごく勉強になり、私の知ってる唐三彩は、ほんの一部しか知らなかったんだなって言うのが、凄く分かる展覧会でした。
高橋:ありがとうございます。
甲木:本当に層が厚いと思いますし、先ほどおっしゃった古唐津や古九谷など、そういう素晴らしい焼き物が門司で見られるという感じですよね。
仙厓義梵の作品「指月布袋」
甲木:仙厓さんの作品について、今日スタジオにかわいい物をお持ち頂いております。
高橋:仙厓のコレクションは約1000点ありますけれども、一番最初に出光佐三が買い求めたコレクションと言われている仙厓の作品「指月布袋」です。博多の聖福寺という古いお寺の住職でもありました仙厓和尚さん、正式な名前は仙厓義梵(せんがい・ぎぼん)といいますが、この「指月布袋」は、佐三がお父さんにねだって買ってもらったもので、1000点ものコレクションの一番最初と言われています。
甲木:佐三が何歳の時ですか?
高橋:高校生だそうです。
甲木:高校生でこの絵を?!
高橋:明治時代の話ですので、こういった仙厓さんの絵も、かなり多く出回っていたのかもしれません。その中でこの作品は特に可愛いなって私も思うんですけど、佐三もやっぱり目に止まったのかなと思います。
甲木:明治時代なので、もちろん漫画などないからですね。この布袋さんと坊やが、お月様を指差している絵で、可愛いですね。
「陶磁の東西交流展」と題した陶磁器の展覧会
甲木:今、次の展覧会があっていると聞いていますけれども。
高橋:そうなんです。1月12日から3月24日までの予定で、「陶磁の東西交流展」と題した展覧会を催しております(※編集部注:現在は終了)。陶磁器は、古くから珍しい形や異国情緒あふれるデザインで、その土地の人々の生活を豊かにして参りました。それらは、地域の文化や風土に根差すだけではなくて、例えば、中央アジアを通るシルクロードやアラビア半島からインド洋をへて中国南海に至る海のシルクロードを通ってアジアとヨーロッパが交流を重ね、互いに美しい装飾や技術に惹かれあうことで、大変魅力的な文化を創造してきたんです。
甲木:お話は尽きないんですけれども、残念ながらお時間となってしまいました。来週は、出光佐三さんについて詳しくお伺いするとともに、高橋さんご自身のこと、なぜ今この美術館の副館長をなさっているのかなど、そういったお話もぜひ伺いたいと思っています。本日は門司港にあります、出光美術館・門司の副館長、高橋一壽さんをゲストにお迎えしてお話を伺いました。高橋さん、どうもありがとうございました。
野口:ありがとうございました。
高橋:ありがとうございました。
〇ゲスト:高橋一壽さん(出光美術館 副館長)
〇出演:甲木正子、野口喜久子(西日本新聞社北九州本社)