【ファンファン北九州 #02】小倉昭和館館主・樋口智巳さん<後編>
西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。
祖父の代から続く映画館をついだ本当の理由
甲木:先週に引き続き、北九州市小倉北区魚町の映画館「小倉昭和館」の館主 樋口智巳さんをゲストにお招きしています。さて、今回は、おじい様の代から続く映画館を、樋口さんが継ごうと決心したところのお話からお聞きしたいんですけれども。
樋口:2011年に戻って参りました。やっと10年になろうかとしておりますが、もともと戻ってきたのは…この映画館を閉めるためだったんですね。
梁:へぇー。
樋口:本当に何十年と赤字が続いていて、そろそろ限界だろうと思っていました。初代は何もないところから(映画館を)作って、そして2代目の父は、映画の一番良い時から斜陽まで、自分の手で1館ずつ閉めながら続けてきました。ですから、その父の代で閉めさせたくなかったんです。「2代目はあんなに頑張ったのに3代目がつまらなかったから、昭和館なくなったね」という役目を引き受けようと思って帰って参りました。
甲木:樋口さんが、かぶってあげるつもりで…。帰ってこられたということですね…。
父親の反対と樋口さんの覚悟
樋口:そうですね…。やっぱり閉めるというのは、とてもつらいことでもありますし。そう思って戻ってきて、最初は、映画館に立っていたんです。ですが、お客様と触れ合ううちに「いやーどうせ閉めるなら、まだやれることがあるんじゃないか!」と思って、いろいろやり始めました。
甲木:そこには、樋口さんの覚悟も感じるんですけど。だって「樋口さん」って本名じゃないんですよ、実は。
梁:えぇ?
甲木:樋口さんは、結婚して別の姓があるんですけど。家業を継ぐから、旧姓をあえて名乗ってらっしゃるんですよ。
樋口:そうなんです。樋口の家が3代この映画館を守ってきたという思いで「樋口」を名乗っています。
甲木:お父様はね、やっぱり娘が継いでくれて嬉しかったんじゃないかなーと思うんですけど。親子でどんな会話をされて?
樋口:いいえ、戻ってくることに大反対でした。ですから、私は押しかけなんです。戻ってきたときに「一切何もしてくれるな」って言われました。イベントもするな。ただお飾りのようにじゃないですけど。可愛くないお飾りですけど。(笑)
梁:いやいやいや。
樋口:ですが、そういうわけにはいかなくなったんですね。私、生まれたときから映画館の娘なんです。生まれたときには、家から歩いて1分以内のところに2館映画館があって、毎日映画館に通っていたので、やっぱりその血が騒ぐわけですよ。
甲木:実際に樋口さんが継がれてから、お客様で満席になった瞬間が何度もあり。やっぱり、お父様にとってはね、すごく娘を誇らしかったんじゃないかと思うんですよ。
樋口:いやいや~、そんなことは。それは口に出しません、昭和の男ですね。褒められたことは1度もありません。
食べながら飲みながら楽しんで♪オールナイト上映イベント
樋口:年に一度のオールナイト上映をやっていて、皆さまに喜んでいただいて、オープニングトークには、いろんな方に来ていただきました。秋吉久美子さん。
梁:5時間しゃべるリリーさんも。(笑)
樋口:そう。鮎川誠さんにも来ていただきましたし、シーナ&ロケッツのですね。まずオープニングトーク、そして4本の映画を朝までかけて、そして合間に生演奏。ロビーでおでんの屋台、もあって、飲みながら食べながら朝まで。朝までいてくださった方には、昭和館が誇る焙煎世界大会優勝者が作った、昭和館ブレンドをモーニングコーヒーとして。そして!!一番大切なのはここですよ!
梁:はい。
樋口:西日本新聞さんの朝刊をお配りするんです!!
梁:いつもお世話になっております!!
樋口:いえいえ。本当に素晴らしい!! 皆さんが喜ばれるんですけど、オープニングトークの様子を、次の日の朝には記事になってるんですよ!
甲木:そうなんですよ!
樋口・甲木:ねぇー!
甲木:みんなが映画を観ている間に、うちの記者が記事を書き!
梁:なるほど、なるほど!
甲木:印刷してもらって!
梁:なるほど、なるほど!
甲木:届くんですよね、映画館に。
樋口:そうなんです。お客様喜ばれます!
コロナ禍で産まれた「光石研シート」とシネマパスポート
甲木:これからますます、昭和館が発展していくなと思っていた矢先にコロナ。しばらく休館もされてたんでしたねぇ…。
樋口:はい…。2号館は2ヶ月、1号館は40日。戦時中でもそんなに閉めなかった映画館が。開業以来初めてです。こんなに長く休んだのは…。
甲木:それで、樋口さんが思いつかれたのが!
樋口:シネマパスポート!再開後6ヶ月映画見放題。1ヶ月間に上映作品が8作品ぐらいあるんですけど、それを何回でも観ていただける。
甲木:すごいでしょう!
樋口:コロナの厳しい時に(映画を)観れなかった方々に、やっぱり楽しみにしていただきたかったんですね。希望としていただきたかった。
甲木:私もパスポートで通っています!見放題です!ありがとうございます!
樋口:いいえ、こちらこそありがとうございます。コロナがあったからということではないんですが、その対策も兼ねて、ペアシートをつくりました。ソーシャルディスタンスを必要としないご家族が(映画館に)来ても、分かれなきゃいけないんですよ。「それはなぜ?」って言われていたので、テーブル付きのソファのペアシート、その名も「光石研シート」です!北九州ご出身の光石研さんがご寄付してくださったんです。
甲木:ちゃんと書いてあるんですよね。
樋口・甲木:「光石研シート」って。
甲木:光石研さんはじめ、地元の皆さんの昭和館への愛。
樋口:有難いです。
映画プラスアルファの魅力を届けていきたい
甲木:これからも、ずっといい映画を上映して、映画の楽しみを私たちに与えてくれる場所であって欲しいなと思うんですけど。樋口さんの抱負・やってみたいこととか、まだまだおありだと思うんですけど。
樋口:たくさんあります!映画プラスαの楽しみということで、もっと違う形で出来ることがあるのではないか。改めて可能性も感じているんですね。オンラインで東京の有名な方たちにトークしていただく。
甲木:スクリーンに映して?
樋口:そうなんです。スクリーンに映せるので、もっと気安く、いろんな方にオンライントークをしていただく。
梁:なるほど!なるほど!
樋口:それと、どんどん貸館としても使っていただきたいんです。お父様、お母様の金婚式のイベントとして使われた方もいらっしゃいますし、いろいろ、ご相談いただければと思っています。それが、この街で81年、昭和館を大切に皆さまが守ってくださったことへの、当館からのお礼の気持ちでもあるんです。コロナの中いろんなことありました。辛いこともたくさんありました。ですが、皆さまの昭和館に対する想い、それをこんなに感じたことはなかったです。ですから、コロナがあって、悪いことばかりじゃなかったと。皆さまの温かいお気持ちを改めて感じましたので、それに応えていける、お応えできる映画館でありたいと思っています。
甲木:これからの昭和館、ますます期待です!
梁:本当ですね!大期待です!
樋口:はい!ぜひ!売り子もやっておりますので(笑)
梁:ご自身が?(笑)
樋口:どうぞ皆さま、気軽にお声掛けください!(笑)
〇ゲスト:樋口智巳さん(小倉昭和館館主)
〇小倉昭和館ホームページはこちら→http://kokura-showakan.com/
〇出演:甲木正子(西日本新聞社北九州本社)、梁京燮(同)
〇ファンファン北九州は、毎週木曜10時47分~57分、クロスFMほかPodcastやSpotifyで放送中!
〇ファンファン北九州へのメッセージはこちら→fanfun.kitakyushu@nishinippon-np.jp
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(西日本新聞社北九州本社)