【ファンファン北九州#38】焼酎プロデューサー 黒瀬暢子さん<後編>
西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。
東京で仕事をしていた黒瀬さん。何で焼酎プロデューサーに?
甲木:先週、面白かったですね。焼酎を見る目が変わりましたね。
梁:焼酎が甘いものに合うなんて想像もしなかったですよね。びっくりしました。
甲木:それと、素材を組み合わせたほうがいい話もね。
梁:あと、郷土料理にやっぱり合うようになっている。
甲木:そうそう。やっぱり地元のものなんだなって。
梁:焼酎の奥深さを知りましたね。
甲木:今日はもっと奥深い話をしましょう! ということで、先週に引き続き、焼酎プロデューサー 黒瀬暢子さんをゲストにお招きしお話を伺います。よろしくお願いします。
黒瀬:よろしくお願いします。
甲木:先週、黒瀬さんの出身地を紹介するのを忘れてたんですが、芦屋町のご出身で、なんと私の東筑高校の後輩でございます。元々は、全然ラジオ云々ではなくて、東筑高校の後輩なんですって言ってうちの会社に遊びに来てくださったんですよね。
黒瀬:そうですね。
甲木:そこで「何の仕事してるんですか?」って聞いて、名刺を見て「何ですか?これは!」って。
梁:焼酎プロデューサーとは何かと。(笑)
甲木:そうそう。(笑)「東筑高校の後輩だよね。どうして今こういうお仕事をしているの?」って聞いたら、東京の大学に進学して会社にお勤めしてたんですが、なぜか辞めてこっちに帰ってきて焼酎プロデューサーとしてお仕事をされている。なので、今日はそのあたりからお話を伺おうと思います。
梁:今のところ謎だらけですけど。(笑)
私って黒瀬杜氏の血を引いているの!?
甲木:何で安定した職場を辞めて、この道に入られたんですか?
黒瀬:今から3年ぐらい前になりますが、突然、自分の名前「黒瀬」というお店がないかネットで調べたくなって。
梁:居酒屋とかバーとか?
黒瀬:そうです。調べたら渋谷に「焼酎バー『黒瀬』」というお店があるのがわかったので、行こうと思って行ったんですね。それをSNSでアップしたら、大学の後輩が「黒瀬さんって名門の出ですね」ってコメントがきて。「名門って何?」と思って調べると、「黒瀬杜氏」という焼酎文化を創ってきたお酒づくりのプロフェッショナルの血を引いていることを知りまして。もっと言うと、「黒瀬杜氏」というのは黒瀬という名前の人ではなくて、鹿児島の南さつま市に笠沙町というところがあって、そこに黒瀬集落というのがあるんですね。そこ出身の杜氏さんのことを「黒瀬杜氏」というんです。
甲木:地名?
黒瀬:地名です。黒瀬っていう場所あるんです。なので、黒瀬さんじゃなくても「黒瀬杜氏」。大体が「黒瀬さん」ですけど、他には「久保(くぼ)さん」とか「宿里(やどり)さん」とか「神渡(かみわたり)さん」とか。私の曾祖父が、そこの集落の庄屋さんだったところまで分かってびっくりして。
甲木:えっ!?それで名門!
梁:なるほど!
黒瀬:それで、自分の家系図を作ったんですね。江戸時代まで遡って調べて。たまたま、叔父が昔の家系図を持っていて、それを私が書き換えて、そこに登場した方のところに突然会いに行って。
甲木:鹿児島まで会いに?
黒瀬:はい。話を聞いたらまた家系図に書き足したり。それで100人ぐらいになって。
甲木:それ、自分のファミリーヒストリーみたいな感じ。
梁:面白い!
黒瀬:この歴史の中に私がいると思うと感無量になったんですね。
私じゃなくて誰がやる!もうやるしかないだろ!
黒瀬:もっと言うと、実は私、今実家に仏壇が置いてあるんですが、それは父の実家から移したものなんです。その仏壇に仏像があるんですけど、それは祖父が黒瀬杜氏集落から持ってきたものなんですね。その仏壇と後輩からのコメントで、「そういうことか!もうやるしかないだろう!」みたいな。(笑)
甲木:杜氏の末裔として何かせねばならないと。(笑)
黒瀬:そうですね。小さい頃からルーツを辿るのが好きで、史跡やお城巡りも。リカちゃん人形とかではほぼ遊んでない。(笑)あと前の仕事で、東南アジアや中国に半年ぐらい現地の職人さんと一緒に物作りの仕事をしていたんですが、海外の方とお仕事することで、日本の職人さんの一歩踏み込んだ優しさや気遣いの素晴らしさに気がついて。元々、そういうのを後世に残したいという思いがあったので、「これだ!私が伝えなくて誰が伝える」みたいな。
甲木:すごい思い込みですよね。これは。(笑)だって、それで食べていけるかどうかわかんないじゃないですか。
黒瀬:何も考えないで何とかなるわって。(笑)
梁:焼酎は好きだったんですか?
黒瀬:飲んだことなかったですね。
甲木:だってお酒もそんなに強くないって言ってたじゃん。
梁:だからですよ!
黒瀬:そこから毎日いろんな銘柄を飲みました。
焼酎の文化や歴史を文章に残していきたい
甲木:これからもっと焼酎プロデューサーとして、挑戦していきたいことってありますか?
黒瀬:私の今の夢は、コラムとか文章として焼酎の歴史などを残して行きたいたいですね。鹿児島・宮崎は芋焼酎、熊本は米焼酎、福岡・大分・長崎・佐賀は麦焼酎でそれぞれ発展している。焼酎文化が違うので、福岡の焼酎の歴史などを文章に書き残していきたいというのがあります。例えば、福岡は日本酒イメージが強いという方がいらっしゃいますが、実は、焼酎の方が生産量多いんですよ。
甲木:え!?そうなんですか?
黒瀬:そういうのって意外と皆さん知らない。
甲木:知らない。
黒瀬:あと、福岡は今は麦焼酎ですけど、昔は粕取り焼酎が主だったとか。そういう福岡の焼酎の現状とか文化とか歴史をちゃんと残していきたいなと思っています。お酒からですけど、そういう地域の歴史って見えてくると思っていて、こういう時代だからこそ、自分が住んでいる地域を愛することってすごく大切なんじゃないかなと思っています。そういう象徴としてやっていきたいなと思っています。
甲木:いや~、黒瀬さんに帰ってきてもらった甲斐がありましたね。
梁:本当、出会いに感謝ですね。
黒瀬:ありがとうございます。
〇ゲスト:黒瀬暢子さん(焼酎女子会enjoy!主宰 焼酎プロデューサー)
〇出演:甲木正子(西日本新聞社北九州本社)、梁京燮(同)
(西日本新聞社北九州本社)