「女性ならでは」が強みの建設会社 成功までの道のり/有限会社ゼムケンサービス代表取締役・籠田淳子さん
“女性のチャレンジ賞”受賞
甲木:次に、表彰されたお話をお伺いしたのですが、内閣府の女性のチャレンジ賞というのを2015年に受賞されたんですよね。
籠田:そうですね。女性技術者のワークシェアリングというのは、日本の中で多分、業界初の試みだったんですね。建設業界が女性のチャレンジ賞を受賞したということは、建設業界に女性がチャレンジしていいじゃないかっていう機運がこの2015年ぐらいに生まれてきたっていう感じですね。建設業界は圧倒的男性多数と言うところで、現場に女性はすごく少なくて、当時は現場の3%が女性でした。
甲木:そういう女性たちのために、女学校を立ち上げたっていうお話を、お聞きしたんですけど。
籠田:そうですね。1級建築士の資格取得の数字を調べると、女性の1級建築士はどんどん増えているんです。合格率はどんどん高くなっているにもかかわらず、定期講習というのをへて、1級建築士も更新していくんですね。1級建築士業務をやっていくには、定期講習を受けなさいっていうことになっていて、一応、更新する試験を受けていくんですけど、建築士の資格を取得しても約8割ぐらいが更新していないことに気付いたんですよ。
甲木:もったいないですね。
“けんちくけんせつ女学校”の設立
籠田:建設会社の男性の幹部の方に聞くと、女性は結婚するまでだから。子どもができた後、現場で仕事するのは、子どもがかわいそう、ということで続けられないんですよね。続けられるようにする仕組みとか改革に関しては出遅れてるんですが、世界中が女性の活躍が当たり前のことだと思うので、建設業界も変わっていこうとしているのは確かです。推定約2万人の女性1級建築士が、資格は持っているけれども、この業界で働いてないっていうことで、女性たちがもう1回この業界で仕事したいって思うならば、入れるようにマッチングするようにということで、現在の仕事の建築関連法令もどんどん変わってきています。そして現場の技術っていうのも新しい材料、新しい工法、新しい道具がどんどんできていて、女性や高齢者が、使いやすいように変わってきています。そういう職場の様子も知って頂きながら、もう1回学び直して、女性技術者、女性技能者を育てたいと思っている会社と、マッチングをするというような仕組みを作ろうと思い、けんちくけんせつ女学校というのを立ち上げました。
甲木:それは籠田さんの会社ではなく、業界のためにその学校を立ち上げたということですね?
籠田:そうです。
赤本(業界マニュアル)の作成
甲木:ところで、業界にはマニュアルが少なくて、赤本を作ったと聞きましたが?
籠田:そうですね。職人は自分の技術とか技能を、苦労して何年もかけて身に付けています。だから簡単に教えたくないんです。ちょっと意地悪いところが、職人の技術技能の魅力でもあるんです。それはいいと思うんですけど、でも私の会社は、ワークシェアリングをして行く時に、仕事を見える化して行かないといけなくて、私はよく喋ったんですよ。こういう場合はこうするとか、こういうことが起きたらこうだ、こういう天気の時はこういうふうにやっていくとか、喋ったことを弊社の女性の社員、スタッフはみんなメモを取ったんですね。そのメモがいっぱいになって、クリップでたくさん止めているのを、時間がある時にワードで作って、こんなになったのっていうので、二つ折りにして表紙を付けてみようと思って作ったのが、ゼムケン赤本っていうのなんです。自分が喋ってるんですけど、こんなに喋ってるのっていうぐらい面白ということで、残っていた全てのデータを、デジタル化にしてiPad(アイパッド)の中に入れて検索すると出てくるように、オリジナルの辞書のようなものを作りました。
甲木:そうですよね、みんなで共有する財産ですからね。
籠田:そうです。
甲木:こういうことが、ダイバーシティに奏功しているわけですね。
籠田:そうです。だれでも働き続けることができるようにということです。
副業の立ち上げ
甲木:それと、副業もOKされたと聞きましたが?
籠田:そうですね。何年か前にアイフォンを買い換えたときに、今までアイフォンをケーブルで繫いで充電をしていたのが、置くだけで充電ができるということが、画期的なことだと思ったんですね。こういう時代になると繋がなくていいということで、10年ぐらい前の構想で練っていたシステムを元に、ビジネスプランを作りまして、今年の1月27日にリリースします。“DIYフレンズ”っていうので、女性のデザイナーとか建築家とかファイナンシャルプランナーとか現場監督とか電気職人、クロス職人など、いろんなプロの女性のスペシャリストたちが、一同に何人も登録されていまして、自分で家を改装してみたいとか、お店をこういうふうにしみたいとか、会社に少しこういうカウンターを作りたいとか、自分たちで何かしようと思った時に、どんな材料が良いのか、見積もり金額はどういうふうに予算立てしたら良いのかなど、オンラインで全ての調整をするために、専門家の意見を聞くことができるいうようなプラットフォームを作りました。
甲木:何か求めている人も見ることができるし、それを提供できる能力がある人は、そこでお仕事が取れるということですね。
籠田:そうですね。
甲木:副業OKっていうことは、籠田さんの会社の誰かが、「私、これやれる」って言ったら、そこにアクセスするということですね。
籠田:そうです。弊社の社員も週休2日で、家でできることもたくさんありますので、収入を得られるようにと思ってますし、ほかの会社の副業もどんどん解禁されてくるでしょうから、そこで得た知識を本業の仕事のときに、お客様にお渡しすることもできると思います。
梁:素晴らしいですね。
甲木:今回は、北九州市で女性が活躍する建築会社、ゼムケンサービスを経営する籠田淳子さんにお話を伺いました。籠田さん、どうもありがとうございました。
梁:ありがとうございました。
籠田:ありがとうございました。
〇ゲスト:籠田淳子さん(建築会社・ゼムケンサービス社長)
〇出演:甲木正子(西日本新聞社北九州本社)、梁京燮(同)
(西日本新聞北九州本社)