赤ちゃんも働く、幸福でユニークな施設を経営/社会福祉法人もやい聖友会 理事長・権頭喜美惠さん
西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。
コロナの時期、面会OKでもしばらく感染者は出なかった
甲木:おはようございます。西日本新聞社ナビゲーターの甲木正子です。
井上:同じく、西日本新聞社の井上圭司です。
甲木:この番組って夢追塾の方が何人も出てもらっていますが、覚えていますか?
井上:覚えていますよ。
甲木:今日のゲストも夢追塾の方で、しかもこの塾の私の同期生でございます。それではさっそくお招きしましょう。八幡西区の社会福祉法人「もやい聖友会」の理事長・権頭喜美惠さんです。よろしくお願いします。
井上:よろしくお願いします。
権頭:よろしくお願いします。
甲木:ようこそいらっしゃいました。
権頭:お招き下さいまして、ありがとうございます。
甲木:まずは本業である「もやい聖友会」という社会福祉法人について、ご紹介して頂こうと思います。
権頭:はい、もやい聖友会は、まる12年経ったところですね。ですから、うさぎ年の2011年に出来ました。ちょうど一回りしたところでございます。どういった事業をしているかと言いますと、障害福祉事業と保育園とかの保育事業、そして高齢者の介護事業、プラスしていろんな方の生活を守るような生活支援の事業などもしております。後はコミュニティカフェなどを行っております。
甲木:本当に手広くやっていらっしゃって、しかも保育から高齢者の介護までだから世代も幅広いですよね。コロナの時期はすごく大変だったんじゃないですか?
権頭:そうですね。やはり従事しているスタッフたちはかなり気は使っていましたね。
甲木:そうですよね。日本全国でクラスターが発生したとか面会ができないとか、いろんなニュースが新聞紙面など賑わせていましたけれども、権頭さんの施設では面会はどうだったんですか?
権頭:OKだったんです。
甲木:コロナの最初からですか?
権頭:はい、緊急事態宣言が4月8日に出て、2カ月ぐらいは制限していたと思うんですけど、その後は面会はずっと変わらずして頂いております。
甲木:すごい決断をされましたね。
権頭:そうですね。私の友人が、認知症のおばあちゃんがいて施設に入ってたんですけど、結局コロナのことがあって会えないまま亡くなってしまったという悲しいことがあって、そういうことを聞く中で、やはりいつ亡くなってもおかしくないような方が入居されていらっしゃいますので、そういう方たちが会いたい人に会えない、言葉を交わせないとか、触れることも出来ないとか、あまりにも悲しすぎると思って、人として生きて行く中で、やはり人との繋がりがあって幸福感も高まりますから、会えないというようなことはしたくなかったんです。最初はスタッフから反対があったんです。
甲木:そうでしょうね。責任取れますか?とか、そういう話になりますよね。
権頭:はい。ですけどコロナの感染対策をきちっとすれば感染しないはずだと思い、面会をOKにしました。
甲木:それで、全然感染者が出なかったんですか?
権頭:そうなんです。去年の7月まで陽性者ゼロだったんです。
甲木:すごいですよね。デルタ株の時とかも、すごく患者数が増えていましたけど、そんな時も全然大丈夫だったんですか?
権頭:はい。大丈夫でした。
甲木:ご家族も入居者さんも喜ばれたでしょうね。
権頭:そうですね。私たちの仕事は、どれだけ長く生きられるかっていう長さよりも、どれだけ幸せに生活できて生きていくかということなので、私たちは幸せで笑顔で生きるお手伝いをさせて頂いています。そういった観点からも、面会は続けて良かったと思っています。
大活躍の赤ちゃん職員 職務内容は?
甲木:驚くべきことにコロナのさなか、面会だけではなくて、びっくりするような職員募集もされたんですよね。その募集についてご紹介を頂いてよろしいでしょうか。
権頭:はい。我が法人では「赤ちゃん職員」を採用しておりまして、こちらには今、60名を超える登録者がおります。
甲木:赤ちゃんというからには、何歳ぐらいの人のことを言うんでしょうか?
権頭:おおむね0歳から2歳までです。だから職員の平均年齢を計算したら、かなり若いですよ。
甲木:そうですね。当然ご自身では出勤できないので、保護者に付き添われて出勤してくるんですね。
権頭:はい、ママが抱っこして連れてきます。
甲木:その職務内容はどのようなものですか?
権頭:職務内容はですね、特別養護老人ホーム施設の中を散歩することなんです。ママが赤ちゃんを連れて公園を散歩しているのと同じ感じです。そうすると知らないうちに自然に、おじいちゃん、おばあちゃんが「あら、あら」と声かけるんですよ。そういう自然に交流して行くというのが目的なんです。
甲木:なるほど。「さあ、今から触れ合って下さい」じゃないということですね。
地域に開放した施設
甲木:赤ちゃんと高齢者という繋がり以外にも、地域の人に非常に開放された施設なんですよね。
権頭:はい、施設が5階建てになっておりまして、5階の部分と1階のカフェはレンタルスペースとして、日々フラダンス教室とかヨガ教室とかリトミックとか英会話教室とか体操教室とか、後は子どもの学習塾で珠算・書道とか入っていまして、そこのレンタルスペースに来られる方も出入りされます。カフェではコンサートがあり、毎月、第3土曜日にはマルシェをやっておりまして、「もやい通りマルシェ」と言いますけど、そのマルシェにはいろんな方が出店して下さり、地域の方、子どもたちがいっぱい集まってきます。
甲木:入居者だけじゃなくて、ご近所に住んでる人たちも来られるんですね。
権頭:そうなんです。
甲木:マルシェではどんな物を売ってるんですか?
権頭:出店者さんはいろんな方がいらっしゃって、団体個人いろいろですけど、団体で言うと、シルバー人材センターの方たちは色々編んだり縫ったりした、手作りの作品を持って来て下さって販売していらっしゃるんですけど、どちらかというと、子どもたちのお客さんが多いんです。子どもたちは、あんまりそういうの買いませんね(笑) でも、おばあちゃんたちは作った物を持ってこられるんです。見てるとおばあちゃんたちは、売れなくてもいいんですよ。ちょっとしたスペースなのに、7・8人来られて、ぎゅうぎゅうに座って、ずっと1日おしゃべりされています。
甲木:商売が目的ではないんですね。
権頭:みたいです。お話を聞くと、「こういう会える場所があって、ありがたい」と言われています。
甲木:なるほど。楽しいお話が尽きないんですけれども、今日はお時間が来ましたので、続きの話は来週ということにしたいと思います。井上さん、今日のお話、いかがでしたか?
井上:画期的ですね。赤ちゃん職員や施設がいろんな人の居場所になったりする例は、そのまま全世界で応用できるんじゃないかと思いました。すごく面白いお話でした。
権頭:ありがとうございます。
甲木:本日は、八幡西区で社会福祉法人「もやい聖友会」の理事長をなさっている、権頭喜美惠さんにお話を伺いました。ありがとうございました。
井上:ありがとうございました。
権頭:ありがとうございました。
〇ゲスト:権頭喜美惠さん(社会福祉法人・もやい聖友会の理事長)
〇出演:甲木正子(西日本新聞社北九州本社)、井上圭司(同)
(西日本新聞北九州本社)