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「小倉城 竹あかり」の灯篭をお香に? 創業103年・老舗仏壇屋の挑戦【北九州市小倉北区】

(アイキャッチ画像:「野上神仏具店」)

試行錯誤の連続 日本初への挑戦と苦悩

試行錯誤していた3年間ですが、その開発は一筋縄ではいかなかったと語る野上さん。当初は、竹灯籠を使ったお香を簡単に作れると考えていたそうです。

しかし、お香を作っている業者に持ち掛けたところ、ことごとく不可能だと言われてしまいます。原因は竹の繊維でした。お香は練り物ですが、竹の繊維が邪魔をしてお香の形成を阻害していたというのです。唯一、知り合いの工場から声を掛けられ挑戦するも、結局はお香にできず、一度開発を中断しました。

諦めかけていたある日、知り合いの工場から「お香にする方法を見つけた」と連絡が来ました。その方法とは、竹灯籠を細かく砕き、原料に混ぜ入れるというものでした。早速、知り合いを伝って得た竹の粉末を混ぜて試作品を作り、ようやく第1弾の試作品が完成。竹を粉砕することでお香が作れると証明しました。

竹の繊維の問題をクリアした野上さんは、いよいよ本格的な開発に取り組むことに。まずは、竹灯籠を粉砕できる工場探しから始まりました。街の力でお香を作りたいとの思いから、北九州の中で工場を探したところ、日本でもトップクラスの粉砕技術を持つ工場を若松で発見。その工場も野上さんの取組に賛同し、試作品開発に取り組むことに。そうして第2弾の試作品が完成し、廃材からお香をつくるということに初めて成功しました。

その後、安定生産と調香に取り組んだ野上さん。特に、調香については、お香である以上妥協はできないことから、100種類以上のサンプルを制作したそうです。ポイントは、「清涼感」「苦み」「水っぽさ」、そして「お香っぽさ」。竹のイメージとお香の香りをうまく調合させるのに苦労したのだそう。

最終検討まで残った香りのサンプルを嗅がせてもらいましたが、香りの差はごくわずかで、編集部員は見分けがつきませんでした。それほど考え抜かれて香りが作られています。

中身だけではなく外観も こだわりを追及

「小倉竹の香」の特徴的な外観である、竹を使ったお香ケースにもこだわりが詰まっています。

当初、ケースについては現在のような竹の筒に入れて販売するのではなく、一般的な紙製の箱に入れて販売する予定だったのだそう。しかし、それでは面白みがないと思った野上さん。思案に暮れていたところ、竹をケースとして使う事を思いつきました。

しかし、ここでも多くの問題があったといいます。特に、竹の「乾燥しにくい」という特徴には手を焼いたそうです。竹には、内側に水分を貯めるという性質があり、さらに外側は油分でおおわれています。湿気が外に逃げづらい仕組みで、竹の内部の湿気は90%ほどになるそう。練り物であるお香に湿気は大敵。悪戦苦闘した末に、竹を煮ることで油を飛ばし、乾燥させることに成功したのだとか。

また、割れやすい竹を長持ちさせる工夫も怠りません。竹筒に特殊なニスを塗ることで、1年ほど割れずに持たせることが出来るようになりました。

様々な技術や先人の知恵、そして野上さんの熱意が合わさって、「小倉竹の香」が生まれたのです。

竹の街・北九州 竹あかりで繋がる小さなたけのこたち

何度も壁にぶつかりながら開発に取り組んだ「小倉竹の香」。売れ行きも好調とのことで、現在は小倉の新しいお土産として認めてもらえるよう、様々な場所で奮闘しています。

同時に、野上さんは現在「竹の街プロジェクト」という活動にも力を入れています。これは「小倉城 竹あかり」を中心として、街の様々な場所と「竹」を通じて繋がる土壌をつくるという企画です。

銀天街で100年以上商売をやってきた「野上神仏具店」として、北九州を盛り上げたいという思いが動機になっているそう。地域と繋がり続け、これからも地域に根付いて商売をしていくからこそ、「北九州を盛り上げたい」との思いもひとしお。

そして、北九州を盛り上げるためには、大きな企業や団体が行う事業も大切だけれど、小さな組織や存在が当事者意識を持ち、相互に繋がることが大切で、そのためにも「小倉城 竹あかり」という母体が重要なのだと野上さんは語ります。

「小倉竹の香」も繋がりを生んでいます。例えば、こちらの万華鏡。

竹のケースをつくるときに余った端材を利用し作られています。「小倉城 竹あかり」でワークショップを開き、製作したそうです。

野上さんの今後の目標は「竹あかりブランド」を確立していくこと。毎年行われる「小倉城 竹あかり」を中心として、様々な場所と繋がり、1つの大きいブランドとして確立したい。そして、そのブランドで小さな場所や組織を活性化させ、北九州をもっと魅力ある街にしたい。その心意気に、編集部員も圧倒されました。

ユニークなお香を作る人に話を聞きに行ったら、北九州のことをもっと好きになりました。

※2023年12月30日現在の情報です

(北九州ノコト編集部)

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