珈琲のある街/リベルタコーヒー「人それぞれコーヒーとの付き合い方が違う」

今や日本を席巻するコーヒーの一大ムーブメント。自宅で過ごす時間が長い今だからこそ、スペシャルティコーヒーを豆から煎れるスロ-ライフを楽しんでみませんか。スペシャルティコーヒーとは、国際審査員の評価で80点以上の点数がつけられた特別なコーヒー豆のこと。そんな豆を北九州で自家焙煎して販売、通信販売もされるコーヒー豆店のストーリーをご紹介します。

#01 リベルタコーヒー「人それぞれコーヒーとの付き合い方が違う」
#02 焙煎屋 森山珈琲「それほどスターバックスが圧倒的だった」
#03 珈琲ごゝろ 夜宮珈琲倶楽部「女性焙煎士として生きる」
#04 自家焙煎珈琲工房ロッシュ「幻の珈琲の味を求めて」
#05 ハニー珈琲小倉店「スペシャルティを根付かせたパイオニア」

店名の由来は「自由」/リベルタコーヒー(八幡西区)

店頭に立つ店主の元梅洋和さん(写真提供・リベルタコーヒー)

店名の由来は「自由」を意味するイタリア語「liberta」。焙煎や豆へのこだわりが時に不自由を生むという矛盾を軽やかに飛び越えて、北九州市八幡西区則松にあるリベルタコーヒーのオーナーである元梅洋和さんはおっしゃいます。

「おいしいコーヒーとは、お客さまがおいしいと思うコーヒー」。

独学で学んだ自由な焙煎スタイル

―お店の歴史を教えてください。
2012年に30歳で独立したので、おかげさまで今年で8年目になります。元はコーヒーを飲むことが好きな普通のサラリーマンでしたが、スペシャルティコーヒーに出会って「おいしいコーヒーってこんなにも違うんだ」と感動したのがこの世界に入ったきっかけです。

―初めから喫茶店やカフェなど、コーヒーに携わっていたわけではなかったんですね。
勤めていた会社を辞めて、専門店で2年ほど修業して独立しました。ただ修業中に1度もコーヒーの焙煎をせずに専門店を辞めたんですよ。それから1人で焙煎機を買って、色んな本を読んで書いてある通りに焙煎してもおいしくない。自分の焙煎したコーヒーがおいしいか、おいしくないかは分かりましたから、やっぱり専門店で焙煎せずに独立して良かったなと思いました。変な先入観や癖をつけずに自由にできたので。ただその時に200kgほど豆をダメにしてしまったのは、コーヒー農家さんには本当に申し訳ないですね。

―どんな時も次のステップへの迷いがないんですね。
1つのことを深く掘り下げて行くのが好きな性格で、コーヒー豆をどうやったらおいしく焙煎できるかあれこれ考える珈琲焙煎士という仕事が向いているんだと思います。焙煎士がおいしい豆を販売すればお客さまに喜んでいただける。それが何よりうれしいですね。

付き合い方は人それぞれでいい

真剣なテイスティング風景(写真提供・リベルタコーヒー)

-HPで「おいしいコーヒーとはお客さまがおいしいと思うコーヒー」という部分が印象的でしたが、それはどういう意味のコーヒーですか?
お客さまにおいしく飲んでいただくために、うちでは焙煎するたびに必ずテイスティングをします。焼きあがったコーヒーの個性を引き出せているかを確かめるためです。コーヒーを焼くという作業の繰り返しでしか、リベルタコーヒーの味を作り上げていくことはできないと思っています。「目覚めるためにはコーヒー」「休憩する時にはコーヒー」と、人それぞれコーヒーとの付き合い方が違います。どんな場合でも、コーヒーを新鮮なおいしさで味わっていただくために、真面目に焙煎に取り組んでいきたいと考えています。

―ではリベルタコーヒーさんのこだわりとはなんでしょうか?
しいて言うなら、流行に左右されない、まろやかで酸味も苦みも程よい焙煎具合のスペシャルティコーヒーを、色んな味わいでご用意することを意識していることでしょうか。コーヒーを買いにいらっしゃったお客さまと一言、二言の言葉を交わす。そういったかかわりあいの中で、お客さまに本当に好きなコーヒーを見つけていただき、長く親しんでいただけたらいいなと思っています。

2度目の来店が鍵となるわけ

―例えばどんなお話をされるんですか?
最初は「おすすめをください」とおっしゃるお客さまがやはり多いので、お客さまがどんな味が好きか必ず聞くようにしています。「あっさりが好き」「酸味控えめがいい」「苦みがある方がいい」など色んなお客さまがいらっしゃるので、それをうかがった上でおすすめしたコーヒーをご自宅で飲んでいただき、ぜひまたご来店いただいてどんな感想を持ったか聞かせてほしいとお伝えしています。ですので、2回目にご来店いただいて感想をお聞きしてからおすすめするコーヒーの方が、よりお客さまの好みに近いご提案になると思います。

―確かに飽きのこない、長く付き合えるコーヒーが見つかりそうですね
そんなやり取りでコーヒー選びに積極的になられるお客さまと、逆に面倒くさそうにされるお客さまとがいらっしゃるんですよ。コミュニケーションは難しいですね。でもそこでコーヒーが生活に対してどのくらいのウェイトをしめているのか、お客さまとコーヒーの付き合い方が見えてくる気がします。もちろん、そんなに分析チックにやっているわけではなくて、常連のお客さまとは「雨の日はコーヒーがおいしい」とか他愛ない話もしますよ。勘とかノリなんですが、焙煎士として少しでもお客さまのお好みの味をおすすめできたらいいなと思っています。

コロナ禍で見えた本物のつながり

―購入する側の立場からすると、話を聞いてくださる焙煎士さんって親しみやすくてうれしいですね。では最後に、今、避けて通れない話題としてコロナウィルス感染予防対策はされていますか?
まだ悩みながらですが、衛生管理に気をつけて通常通り営業しています。福岡県のウィルス関連のニュースが巷をにぎわせましたが、心配して遠方からお電話をくださったお客さまもいました。大変ありがたいことです。

―お客さまとのつながりを大切にされるリベルタコーヒーさんらしいエピソードですね。どうぞお体に気をつけて、今後も変わらずに頑張ってください。ありがとうござました。

街の珈琲屋さんという最大の魅力

笑顔があふれる店内(写真提供・リベルタコーヒー)

お客さまとのふれあいの中からリベルタコーヒーは生まれます。街の珈琲豆屋さんという気負いのない風情がリベルタコーヒーの最大の魅力なのではないでしょうか。今回のお話しを通して幾度となくでてきた感謝の言葉。お客さまそれぞれにコーヒーとの付き合い方を委ね、日々、真摯に焙煎に取り組む元梅さんのお店からは癒しのコーヒーの香りがします。

(編・北九州ノコト編集部)
※4月28日に電話取材を行いました。

■リベルタコーヒーの焙煎度   中浅煎り~中煎り
■人気の豆 リベルタブレンド。夏は水出しコーヒーも人気。麦茶感覚で手軽に作れます。

#01 リベルタコーヒー「人それぞれコーヒーとの付き合い方が違う」
#02 焙煎屋 森山珈琲「それほどスターバックスが圧倒的だった」
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