小倉北区米町に出現した巨大トマト 正体はロボット?
小倉方面から門司方面へ向け、勝山通りを走る西鉄バスに乗車中、「米町」バス停の真ん前に突如現れた巨大なトマト。バスの車内から見て「あれは何だ?」と気になったのですが、その日はそのまま通り過ぎてしまったため、別の日に改めて現地へ確認に行きました。
バス停の目の前にあるビルの1階にあったのは、IoTによるビジネス変革を推進する会社でこのビルに本社を構える「株式会社YE DIGITAL」のショールーム。ショーウインドーに貼られた「RO=BUDDY 九州工業大学発!トマト農園×ロボット=食べごろトマトをかしこく収穫!」という文字の向こうに、巨大なトマトのバルーンがありました。どうやら、この巨大トマトは、トマトの左側に置かれているロボットをPRしているようです。
巨大トマトがあるのは「YE DIGITAL」ショールームの中
ショールームは通常一般開放していないとのことですが、今回は取材のため特別に見学させてもらえることに。
ショールームの中には、ロボットだけでなく、「YE DIGITAL」が2017年頃から西鉄グループと共同で取り組んでいる「スマートバス停」など、さまざまな技術が展示されていました。
巨大なトマトがPRしていたロボットを目掛けて奥に進むと、このロボットの正体は「九州工業大学」(北九州市戸畑区)が研究を進める“トマト収穫ロボット(2017年版)”だということが説明書きから判明しました。
現在、国内では農業従事者が減少する一方で、その平均年齢は上昇。野菜の栽培にかかる労働の負荷を比較すると、トマトの栽培は野菜の中でも負荷が高いと言われているそうです。九州工業大学ではこの点に着目し、トマト収穫ロボットを用いた課題解決に2014年から取り組み、実証を繰り返しながら、ロボットアームや収穫ハンドの改良、トマト検出向上に向けたセンシングシステムの向上など、ハードウェアとソフトウエアの両面から、アプローチを続けていると言います。
また、巨大トマトが置かれている場所だけでなく、ショールームの他の場所でも、“トマト収穫ロボット”の変遷や、収穫ハンド部分の実物展示・解説など、九州工業大学が開発を進める“トマト収穫ロボット”にまつわる技術や取り組みが分かりやすく説明されています。
九州工業大学の“トマト収穫ロボット”がなぜここに?
巨大トマトとロボットの正体は判明しましたが、なぜYE DIGITALのショールームに、九州工業大学の“トマト収穫ロボット”が展示されているのか、気になるところです。
実は、YE DIGITALは、2020年7月に九州工業大学と北九州市を含む三者間で「オープンイノベーション人材育成等に関する協定」を締結しており、相互の強みを活かしながら人材育成に向けて積極的に活動することで、「地域産業の活性化」「地域課題の解決」に寄与する取り組みを推進しているとのこと。その協定の中で、同社のショールームを北九州の素晴らしい技術や取り組みを紹介する情報発信基地と位置付け、2020年7月のショールームオープン時から九州工業大学が3年連続世界一を獲得している超小型衛星の紹介をしてきたそうです。
九州工業大学の社会ロボット具現化センターの取り組みに共感したYE DIGITALは、その数ある取り組みの中から、今回は北九州市内で実証が進められているトマト収穫ロボットの取り組みをショールームで紹介することにしたと言います。「最新の技術や取り組みを一般の人が目にすることで、特に子どもたちに工学・情報技術に興味関心を持つ、次世代の技術者が育つ土壌づくりに貢献したいと考えたから」と、興味関心を持ってもらえるようなきっかけづくりのために巨大トマトを展示したと言います。
社会と共に働くロボット「RO=BUDDY」
今回、トマト収穫ロボットの取り組みについてショールームでの展示を検討するのにあたり、YE DIGITALと九州工業大学は、「社会で共に働くロボット」をもっと身近に感じてもらえるよう、愛称を決めて発信していくことに。YE DIGITAL従業員と、九州工業大学の学生・教職員を対象に、昨年11月にネーミング募集を行い、「RO=BUDDY(ロバディ)」という名前に決定。「RO=BUDDY」という名前には、“社会で人と共に働く相棒”という思いが込められているそうです。
「ロボットの街北九州市から、社会と共に働くロボット『RO=BUDDY』を発信し、ロボットと支えあう生活が当たり前になる世の中の実現に向けて、取り組んでまいります」と、YE DIGITAL、九州工業大学の両者。
なお、巨大トマトは今後約半年間にわたり、展示される予定とのことです。
◆株式会社YE DIGITALショールーム 北九州市小倉北区米町2-1-21 APエルテージ米町ビル1階
(北九州ノコト編集部)