さわらびガーデンモール八幡に憩いの場 駅前のシンボルを再活用した家具も登場
JR八幡駅前の国際通りにある商業施設「さわらびガーデンモール八幡」は、「一番街」「二番街」「三番街」から成るショッピングモールです。その「一番街」(北九州市八幡東区西本町4-1-1)の1階、東側入口付近に、憩いのスペース「GRÖNSKA(グランスカ)」が4月5日オープンしました。
このスペースには、「さわらびガーデンモール八幡」を管理運営している八幡駅前開発株式会社と共同で、北九州市立大学福田研究室の大学院生有志が65年以上八幡のまちを見守ってきたケヤキを再活用し、制作した家具も設置されています。
「GRÖNSKA」誕生の経緯やケヤキの再活用などについて、八幡駅前開発株式会社の代表取締役社長・井上龍子さんと、「GRÖNSKA」の名付け親であり、ロゴデザインを考えた企画部・吉竹夏穂さんに話を聞きました。
施設の外に広がる豊かな緑を施設内でも感じられる空間をつくりたい
八幡駅前の歩道にはケヤキ、道路の中心にはフェニックスの木があり、その先には皿倉山がそびえ立つという緑豊かな環境に位置する「さわらびガーデンモール八幡」。しかし、施設の中に一歩足を踏み入れると、緑を遮断したかのように無機質な空間が広がり、緑を感じられるような空間ではありませんでした。
「施設の前に広がっている緑とビルをつなげるような空間をつくることができないだろうか。それが当社の長年の課題でした」と井上さん。また、入口付近の店舗スペースが使いづらい形となっていたため、「改装して使い勝手のいいスペースへ変えたい」とも考えていたそうです。
そこで今回、スペースを改装し、利用する人たちがくつろげるような場所として誕生したのが「GRÖNSKA」。この憩いスペースに、「ケヤキを活用した家具の制作・設置」を行うことで、伐採後のケヤキに、新しいかたちで八幡のまちを見守ってもらうと共に、五感で八幡を感じることができるような新しい空間を目指したと言います。
65年以上八幡のまちを見守ってきたケヤキの存在を後世へ
今回、家具へと生まれ変わったケヤキは、戦後の戦災復興事業として植樹され、65年以上にわたって八幡のまちを見守ってきた、八幡駅前のシンボルだったもの。腐食や老朽による倒木等の危険性から、2018年9月に2本、2019年2月に3本の合計5本が伐採されました。
「八幡駅前を長きにわたって見守り、シンボルとして根付いてきたケヤキの木が伐採され、処分される姿を手放しで見過ごすのは惜しい」(井上さん)との強い想いから、八幡駅前開発株式会社では「何とかして新たな形で、八幡駅前を見守り、活かす方法はないだろうか」と考え、2018年5月に北九州市立大学の福田展淳教授(国際環境工学研究科環境工学専攻建築デザインコース)に協力を仰ぐことに。
そこから「八幡駅前の戦後復興から、現代の豊かな景観を作ったケヤキの存在を後世にも伝え、新たな形で八幡を支えてケヤキの価値を創出していくこと」を目的としたプロジェクトがスタートし、約3年にわたり、共同でケヤキの活用方法を検討してきたと言います。
そして、2019年2月伐採のケヤキ3本を使い、学生たちが制作した家具を「さわらびガーデンモール八幡」に設置することが決まりました。
北九州市立大学の大学院生有志がケヤキを再活用し、制作した家具を展示
家具の制作にあたったのは、福田研究室で学ぶ大学院生の有志たち。普段は、環境共生住宅や間伐材で作る分解可能な住宅、超高層住宅などをテーマに、熱負荷計算や実施設計、模型作りを通し、環境に配慮した建築設計を学んでいる彼らですが、家具を手掛けるのは今回が初めてとのことだったそう。