北九州でガツンと重い映画を撮りたい/映画監督・雑賀俊朗さん
西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。
映画公開の前に行っていること
甲木:おはようございます。西日本新聞社が素敵なゲストと一緒に北九州の歩き方をお話しする番組ファンファン北九州。ナビゲーターの甲木正子です。
横山:同じく、西日本新聞社の横山智徳です。
甲木:先週楽しかったですね。雑賀監督。もう映画観たくてたまらんやろ?
横山:ですよねー!いやー、いいなあと思って。公開は秋(※)ですよね?
甲木:はい、今年の秋(※)公開です。
※番組放送後、2022年12月9日、北九州市で先行上映、2023年2月に全国ロードショーが決定
甲木:はい。今日は先週に引き続き北九州市出身で映画「レッドシューズ」でメガホンを取られた監督、雑賀俊朗さんをゲストにお迎えしてお話を伺います。雑賀監督、本日もよろしくお願いいたします。
雑賀:よろしくお願いします。
甲木:先週は去年の夏にオール北九州ロケで撮影された「レッドシューズ」について、コロナ禍の中の撮影の苦労とか裏話とか、いろんなお話を伺いました。監督にとってはですね、いつか北九州で、北九州の本当の地名を出しながら、オール北九州ロケの映画を撮りたいっていうのが念願だったとお聞きしていますけれども、やっぱりこれまで撮影された作品とは違った感慨みたいなものがあったのでしょうか?
雑賀:そうですね。ずっと東京にいると、地元北九州の「MOZU」であったり、「相棒」とか、いろいろやっぱり地元の人から「エキストラ出たよ」とか、「こういう作品撮影したよ」とか言ってくるんですよ。で、「図書館戦争」も観に行きましたし、「MOZU」とか他の作品も見に行くんですけど、見終わった後に「あれ北九州で撮ったよ」って業界の人に言っても「え、そうなの?」っていう、いわゆる北九州市協力者の名前が、エンドロールには出るんですけど、全国の皆さんには、その認識が薄いと言うかあんまりなくて…。
甲木:そうですね。
雑賀:そこは忸怩たる思いがずっとあって。まあ、架空だったり、地名を隠したりせず、そのまま北九州にこのストーリーが生きていたみたいな作品を撮りたいなと思ってました。
甲木:はい、なのでまあね、そう、それが本当に叶って…。
雑賀:そうですね。
甲木:地元での撮影ということで。その「レッドシューズ」もですね。もう完成して後は公開を待つばかり、っていうことなんですよね?
雑賀:まあそうですね。公開を目指すと同時に、海外の映画祭に出すべく動きをしていまして。英語版も作って、今、海外の映画祭のディレクターというのですけど、その作品選ぶ方たちに見てもらっている最中です。やっぱりコロナの影響で、映画祭も開催時期がずれたりしているので、まだこう決定的にここに決まったっていうのはまだ発表できないんですけれども、まあ、どこかに引っかかるんじゃないかと思っています(※)。
※番組放送後、7月にカナダのモントリオール・ファンタジア国際映画祭に招待され、 ワールドプレミア上映を果たす
今後北九州で撮りたい映画は? 企画の募集も…!
甲木:なるほど。そしてあの、監督は、これが北九州の撮影の終わりではなくて、できればね、3部作を作りたいなあっておっしゃっていましたけれども、なんかそういう構想とかってあるんですか?
雑賀:まだはっきりは言えないんですけども、せっかくなら今までやってない形、例えばラブストーリーであるとか、ちょっとファンタジーが入っているとか、そういうこともトライしていきたいなと思っていますね。
甲木:なるほど。そうですね。ラブストーリーは初めてかもしれないですね。
雑賀:そうなんです。ヒューマンばっかり撮ってて、ラブストーリー撮れないんじゃないかと雑賀はと思われているかも知れませんが、若い頃はラブストーリーも一応ちゃんと撮っておりますので、はい。やれます。
甲木:そうですか(笑)楽しみになりました。
雑賀:北九州の街でラブストーリーはあんまり見てないなあと思って、逆に。
横山:ああ、見てないかも。
甲木:ロマンチックな場所がいっぱいあるってね、この前も大学生がこの番組のゲストに来てくれたときに、「皿倉山からの夜景は素晴らしい」って熱く語ってくれたので…。
雑賀:雑賀が映画でやるのであれば、やっぱりテレビで見れない作品の方がいいと思うので、ちょっとその深い作品にはなると思います。たとえばラブストーリーにしても愛するとはどういうことなの?というような、ちょっと深い作品にはしたいなと思っています。単純じゃなく。ええ、そういうところまで行きたいなあと思っています。
横山:テレビっぽくなくてということですね?
雑賀:はい。で、まだ発表出来ないのですが、次の作品をちょっと違う県で撮ろうとしていて、それは「コメディ色のあるダンス映画」みたいなものになると思います(※)。
※撮影後、次回作「レディ加賀」(仮)(主演:小芝風花)が全国に発表される
甲木:そうなんですか!?
雑賀:北九州でガッツンと重いものを撮ったら、次はこうちょっとこう楽しくやりたいな、と。心のバランスを取っております。
甲木:へえー!
雑賀:でもなんか北九州に戻るとですね。北九州をこう、軽く撮りたくないんです。なんか。なぜかわからないんですけど。
甲木:やっぱり歴史がある街ですしね。
雑賀:なんかそこに人間が生きてるみたいなものを撮りたくてしょうがなくなってしまうんですよ。単なる、男の子と女の子が出会って、「よかった~」みたいなことじゃなくて…。
横山:チャラチャラしたものじゃなくて…
雑賀:はい。やっぱり北九州は鉄の街だったりするのかもしれませんけど、あのガツンと重みのある、なんかこう「人間っていいよね」っとか、そういう作品にしてしまいたくなるんです。
甲木:やっぱりご自分が育った街だからですかね?
雑賀:あ、それもあるかもしれないですねー。自分が生まれ育った町だからこそ、力が入ってしまうのかも知れないですねえ。まあ「愛とは」みたいなことで、ちょっと重いですけど、映画祭では賞の舞台に立てるような作品になるかもなって感じですね。はい。ただ、あくまで構想なので、まだ決まった訳ではないので、どんどん企画を募集中です…。
甲木:あ、そうなんですか?企画募集なんですか?監督…。
雑賀:西日本新聞にどんどん送ってください。こんな企画北九州にあるけど面白いよ、とかね。
横山:「雑賀監督に撮ってほしい!」と。
雑賀:はい。あの実話を元にしても良いし、まあ原作でも良いし…。
甲木・横山:おおー!
雑賀:「えっ、北九州でこんな話があるんだ」とか、もしくは「こんないい話があったのね、みんな知らないのよねえ」とかいう物語があれば、皆さんに教えていただきたいです。映画のベースになる可能性もあります。実話・原作大歓迎です。よろしくお願いいたします。
甲木:なんかエピソードが寄せられるかもしれないですね。
雑賀:西日本新聞にボンボン送ってください。
甲木:はい。私、すぐ雑賀監督にお送りします。
すべてがうまくいく訳ではない世の中で…
甲木:はい。そしてその映画の中のテーマももちろん構想を練られたときはコロナなんて世の中になかったんでしょうけれども、でもやっぱり逆境にあっても立ち上がる姿とかいうのはすごい今のコロナの時代に苦しんでいる人に共感されると思うんですよね。
雑賀:企画を立ち上げた時は、コロナ禍というのは、まったく考えていなくて、「人生は、思うとおりに行かない。でも人は幸せを掴もうと必死で手を伸ばす」と言う作品を作りたかったです。やっぱり「次は…明日は…もっと良くなる、もっと光があるはずだ」っていう希望がないと人生がつまらなくなってしまいますし、明日を生きる勇気が出てこないですので、映画を見たお客さんが、明日は頑張ろうと思うような作品を作りたいと思って「レッドシューズ」を作りました。そしてキャスティングや映画の撮影が延びたりした結果、神の手じゃないですけど、世の中がコロナ禍になり、「人生が中々思うようにいかない閉塞感」が増え、時代が作品に追いつき、作品を見ると共感度が増すことになったのではないでしょうか。
甲木:はい、そうですね、はい。今監督がおっしゃったこと、多分映画をご覧になったら皆さんすごくよくわかる。と思うんですけど、うん、本当現実の世の中で起きていることっていうのは、そんな綺麗事じゃないですよね。
雑賀:そうなんですよね。映画の撮影ではたくさんの方々が携わる事になるので、トラブルとか、仲間同士バチバチになったとか、いろんなことがあるんです。雑賀も若い頃は、「今日は何もトラブルは起きないように」とか「仲間同士もっとスムーズにいかないのかな」と思ったりもしましたけど、年輪を重ねて、今ではもう朝ベッドから起きると「さあ、今日はどんなトラブルがあるのかな」「さあ、予想もつかないトラブル来てみろ!」みたいな。積極的と言うか、楽しんでいると言うか、トラブルバスター的な気持ちで1日を過ごせるようになりました。そして、何か起きると「そうか、今日はこのトラブルか」と余裕で対処できます。今そんな境地で撮影しております。
甲木:そう、なんですか。はあー。いや、どうもありがとうございます。今日はなんかすごい深い深いお話を聞かせていただいて…。
雑賀:すみません。熱く語ってしまいました。
甲木:いやいや、ありがとうございました。
横山:僕、監督にもまた会いたいんですけど、松下由樹さんにも本当は会いたいんですが…。
雑賀:あー、それはどうですかねー。
甲木:図々しいよ!横山さん(笑)
雑賀:あのまあ、「この人誰?」って言われそうですけど…。
甲木:はい、どうもありがとうございました。先週、今週と2週にわたり、北九州市出身の映画監督、雑賀俊朗さんにお話を伺いました。どうもありがとうございました。
雑賀:ありがとうございました。
〇ゲスト: 雑賀俊朗さん(映画監督)
〇出演:甲木正子(西日本新聞社北九州本社)、横山智徳(同)
(西日本新聞北九州本社)