「高校時代の理想を詰め込んだ空間を自分の手で形に」藤白理那さん(「Study Cafe そよ風」代表)
3月20日(土)・27日(土)の2日間限定で、JR門司駅から徒歩約4分の場所に「Study Cafe そよ風」がオープンします。
カフェを運営するのは、3月1日に市内の高校を卒業したばかりで、4月からは大学生になる学生たち。代表の藤白理那さんが高校時代に「こんなお店があればいいのに。誰か作ってくれたらいいのに」とずっと願い続けていた理想を詰め込んだ空間、それを形にしたのが「Study Cafe そよ風」です。
藤白さんの理想は、「友達と気軽に来ることができて、勉強にも集中できて、気分転換もできて。でもあんまりお金は使わずに済む」お店。3月20日と迫りつつあるオープン初日に向け、場所選びからメニュー考案、ロゴ・チラシ作成、お金の計算など、大人の力を極力借りずに、自分たちの力で準備を進めています。
高校時代にほしかった“理想の場所”を後輩のために自分が作る
高校時代の藤白さんは、勉強しようと思っても家だと集中できずにだらけてしまい、友達と教えあいながら勉強するには図書館だとしゃべれないといった理由などから、勉強する場所としてカフェを利用することが多かったと言います。ただ、藤白さんはアルバイトをしていなかったため、お小遣いで通うにはドリンク代が1週間に1000円を超えてしまうと高く感じてしまい、もっと安く利用できる場所がないかと小倉の街を探し歩いたそう。高校3年間でいろいろ探したものの理想通りの場所を見つけることはできず、「自分が理想とするようなお店を誰かが作ってくれたらいいのに」とずっと思っていたと言います。
また、藤白さんは高校在学中に1歳上の先輩に誘われ、「学生食堂」の活動にボランティアスタッフとして参加。地域の大人が子どもに無料や安価で食事を提供する取り組み「子ども食堂」の対象を若者にし、低価格で温かい食事を提供する学生食堂の活動を手伝い、若者の悩みに対して大人がアドバイスする姿などを近くで見ているうちに、多世代交流の場・憩いの場となっている学生食堂の存在に感銘を受けたと言います。また、学生食堂の活動を通して、低栄養や栄養バランスの偏りなど“若者の栄養バランス問題”にも直面した藤白さんは、「管理栄養士」という夢を見つけました。
昨年12月、大学受験を無事に終え、4月からは管理栄養士を目指して大学で学ぶことが決まった藤白さん。進路が決まり、時間と心に余裕が生まれた今、自身の夢につながるようなことが何かできないかと考え、思い浮かんだのが“高校時代に自分がほしかった場所”のこと。「そんな場所がないのなら、自分で自分の理想を叶えよう」と決意し、高校時代の理想を詰め込んだカフェをオープンさせるべく動き始めました。
大人の力を極力借りずに、できるだけ学生だけの力で挑戦したい
“学生=勉強を頑張る”というイメージから、お店のコンセプトは“Study Cafe”に決定。「勉強してもいいし、しゃべってもいいし、くつろいでもいい、そんな隠れ家的な自由な空間にしたい」「学生が利用しやすいようにフードやドリンクは低料金に設定したい」など、自分の中で膨らむイメージを藤白さんが現実的に形に起こそうとし始めたのは、今年1月に入ってから。まずは学生食堂の活動に誘ってくれた先輩に相談し、そこから学生食堂の運営者を紹介してもらい、お店を開くにはどうすればいいのか、何を準備すればいいのかなど、教えてもらうことになりました。カフェを開く場所は、学生食堂の運営者から知人を紹介してもらい、門司区のレンタルスペース「Noco.4のこよん」を利用することに。また、カフェで提供する軽食メニューは、学生食堂で料理を手がけていた料理家が一緒に考えてくれることになりました。
カフェオープンに向け、ある程度の道筋が見えてきたところで、サポートしてくれていた大人たちから「『Study Cafe そよ風』は大人の力を極力借りずに、学生だけの力でやることが“新しい試み”になるだろう」と後押しされた藤白さんは、高校時代の友人4人と中学時代の友人1人に相談。「こんなことをやってみたいんだけど、手伝ってほしいんだ」と声をかけたところ、「よく分かんないけどやってみるよ」とみんな揃って快諾してくれ、学生6人で運営することになりました。
また、お店のロゴのデザインやチラシにあしらわれたイラスト・マップなどは、絵が得意な同級生に依頼。こちらも快く引き受けてくれ、藤白さんのイメージ以上のものへ仕上げてくれたと言います。ちなみにお店のロゴにあしらわれているモチーフは、「すずらん」と「青い鳥」。「すずらんの花言葉は『再び幸せが訪れる』、青い鳥は『幸運』を表します。来てくれた人があったかい気持ちになれるカフェを目指して、この2つを選びました」と藤白さん。
フード・ドリンクメニューは同級生にリサーチ
「Study Cafe そよ風」で提供されるフードメニューは、2種類のオープンサンド「えびとクリームチーズの洋風オープンサンド」「甘辛オリオンリングの和風オープンサンド」(各300円)と、「濃厚ガトーショコラ」(230円)。看板メニューのオープンサンドはパンも生地から手作りしているというこだわりようです。これに加え、ドリンク5種類(各120円)などを用意しているとのこと。学生が注文しやすい金額にしたいという藤白さんの強い思いもあり、手頃な価格に設定されています。
フードメニューは、「自分がやりたいもの・食べたいもの」「自分で作れるものではなくて、お店に行かないと食べることができないもの」をリストアップ。友人たちにも「思いついたものでいいので食べたいものを教えて」とアンケートをとり、20~30個のメニューをリストアップして、料理家の人に相談し、「これはできる、これはできない」と判断してもらいました。その結果、メニューとしてハンバーガーに決まりかけましたが、料理家から「こんなのもあるよ」と教えてもらったのが“オープンサンド”。その時、初めてオープンサンドを知った藤白さんたちは、食べやすさや見た目の美しさなどを考え、ハンバーガーではなく、オープンサンドをメニューとして採用することに決めたと言います。
また、オープンサンドの具材に関しては、複数案を出して、また友人にアンケートを取ることに。しかし、みんなが選んだ回答がバラけてしまったため、比較的人気の高かった案の中から「多分これとこれを組み合わせればおいしいだろう」と藤白さんが自分なりに組み合わせて、和風・洋風のオープンサンドを作ることになりました。それから試作に入り、1回目は学生たちに作り方を教えながら料理家が作り、2回目は学生たちが本番と同じように作ってみました。「料理家の方はささっと作っていたのですが、実際に自分たちがやってみると、時間もすごくかかるし、全然同じようにできないんです。オープンまでにもっと早く上手に作れるよう練習しなきゃと思いました」と藤白さんも苦笑い。学生たちが料理の練習を重ねる中で、オープンサンドの具材に合うよう、料理家がソースを考えてくれたりなど、本格的な料理へとブラッシュアップさせてくれたそうです。
ドリンクメニューについても、まずは周りの友達にリサーチ。何が飲みたいのか、学校でアンケートを取った結果、人気の高かった「アップルジュース」「オレンジジュース」「カフェオレ」「アイスティー(ストレート or ミルク)」に決まりました。「カフェだけどコーヒーはないの?」と質問すると、「コーヒーとカフェオレのどっちがいいか、周りに聞いたらカフェオレ派が多かったので、コーヒーはやめました(笑)」という学生らしい答えが返ってきました。
力を貸してくれたすべての人に感謝し、自分たちのできる範囲で頑張りたい
「Study Cafe そよ風」オープンに向け、着々と準備が進みつつありますが、4月から6人は別々の学校へ進学し、それぞれの道を歩み始めるとのこと。大学に入ったらどのような生活になるのか、今の段階では全く分からないため、「Study Cafe そよ風」の活動が継続できるかは未定だと言いますが、できることならば続けていきたいそうです。
今回は2日間限定でのオープンとなりますが、その経験や改善点などもすべて次回以降へつなげていくために全力で頑張りたいと話す藤白さんですが、ここにたどり着くまで、場所探しから、お金のこと、メニューのことなどまで、大変なことがたくさんあり、さすがに途中でくじけそうになったことがあったと振り返ります。
それでもあきらめなかった理由について尋ねると、「相談に乗ってくれた人、料理を一緒に考えてくれた人、場所を貸してくれた人など、大人の人にもたくさん助けてもらいました。友人たちにはアルバイト代も払えないのですが、私がやりたいことならばと手伝ってくれています。力を貸してくれたすべての人に感謝しています。特に両親には『飲食店の方たちでも大変な思いをしているのにこんな時期にカフェをオープンするなんて』と心配と迷惑をかけています。ただ、経済面や気持ちの面で一番支えてくれているのも両親です。そんな人たちのためにも、途中でやめたらもったいない。カフェをオープンさせてお客さんに喜んでもらう瞬間がきっと一番嬉しいんだと思うんです。だから自分たちのできる範囲で精一杯頑張ってみます」と、まっすぐ前を見て自分の言葉で話してくれました。
◆Study Cafe そよ風
場所:「Noco.4のこよん」(北九州市門司区柳町2-4-6 2F)
営業日:3月20日・27日の土曜、正午~午後3時
Instagram:https://www.instagram.com/studycafe_soyokaze/
(北九州ノコト編集部)