応援してくれる家族やファンの存在があってこそ/陽樹さん(社会人レスラー)
2011年、北九州パレスのリング上で満を持して「がむしゃらプロレス」からのデビューを果たした陽樹(ようじゅ)選手。デビューから11年経った今では「がむしゃらプロレス」きっての人気悪役レスラーとして活躍しています。
2003年に旗揚げし、北九州で活動を続けている社会人プロレス団体「がむしゃらプロレス」の選手インタビュー企画第3弾は、そんな一見強面な陽樹選手からお話しを聞くことができました。
憧れの選手からの一言が大きな転機に
ーまず最初に、がむしゃらプロレスに出会ったきっかけ、そして選手として参加することになった経緯を教えてください
昔からプロレスは好きだったんです。なので知り合いにがむしゃらプロレスの存在を教えてもらってから、すぐに試合を見に行きました。
ちょうどそれががむしゃらプロレスの選手と現役プロレスラーの方たちを交えた試合で、その時リングにあがっていたのが、プロレスラーの葛西純選手と佐々木貴選手でした。2人とも昔から憧れの選手だったので、当時はめちゃくちゃ興奮しましたね。
しかも幸運なことに、その日は試合後の打ち上げにも参加させてもらえたんです。その時に葛西選手たちに「そんなにいい体をしていて、こんなに恵まれた環境もあって、プロレスやるしかないだろ!?」って背中を押されちゃって、そんなのもう断る理由なんかないですよね(笑)
ーいい体と言われたってことは、元々何かスポーツをやっていたんですか?
子どもの頃から空手と合気道を習ってました。がむしゃらプロレスに参加する前は総合格闘技にも手を出してましたね。
その時点で毎日忙しく体を動かしていたので、プロレスもやろうかってなったときは、さすがに嫁に反対されたんですけど(笑)
なので総合格闘技はやめて、がむしゃらプロレスに転向しました。
今では嫁も社会人レスラーとしての活動を応援してくれているし、子どもたちを連れてほとんどの試合を観に来てくれます。
3児のパパは『わるものチャンピオン』
ー小さい頃からお父さんの勇姿を間近で見ることができるなんて素敵ですね。
そうですね。父親が戦う姿はもちろんなんですけど、負けている姿もあえて見てほしいと思ってます。試合に挑むまでの姿勢とかも、俺も頑張ってるからお前たちも頑張れよ!という喝になればいいなと。
昔は試合で負けると、子どもたちも泣いてしまったりしてたんですけど、それが今ではダメ出しをしてくるほど強くなっちゃって(笑)
家に帰ると「なんであそこでこうせんかったん?!」とか熱心に分析してくれてたりするんです。今や頼もしいセコンドですよ。
ーお子さんたちはそんなリング上での陽樹さんを見て、自分もプロレスをやってみたい!とか言わないんですか?
「自分もやりたい!」とは言われたことないんですけど、プロレス自体に興味は持っているようで、長男は夏休みの自由研究でメキシコについて調べてましたね。
メキシコはプロレスが盛んな上に、マスクマンの多さでも有名なんです。自分で覆面を作ってしまうくらいマスクマンが好きな彼にとって、メキシコは聖地なんでしょうね。
もちろん自分もメキシコには興味があるし、行ってみたい国の一つなんですけど、マスクマンにものすごい憧れを抱いている息子を傍から見ていると、マスクマンではない自分としては少し複雑だったりします(笑)
長年の犬猿の仲から生まれた強い絆
ーそんな家族に見守られながら、丸10年という長い期間がむしゃらプロレスの最前線で活躍している陽樹選手ですが、続けてきて良かったと思えることはありましたか?
同じがむしゃらプロレスの選手に鉄生ってやつがいるんですけど、がむしゃらプロレスに参加した当初からなんか馬が合わないというか気に食わなくて(笑)
まだ俺も鉄生も新人だった頃にトーナメントの1戦目で対戦したことがあったんです。そしたら試合中にいつの間にか本気の喧嘩になっちゃって。お互いに「お前には負けねぇ!」っていう感情が高ぶりすぎて、もう自分たちじゃ収まりがつかない状態になってたんですよね。
結局その時はその場にいたプロの選手にぶん殴られて我に返ったんですけど、本当にそうでもしないと止まらなかったんですよ。
おかげでそこからは練習中だろうがプライベートだろうが全く会話もしなくなりました。移動も別だし、控室さえ別にしてもらってたくらいで。
ー同じがむしゃらプロレスに所属してるのに、そんなことがあるんですね。
基本みんな仲はいいですよ。ここまでひどかったのは俺と鉄生くらいじゃないかな(笑) でもその後も彼と対戦を重ねるうちに、いがみ合いというよりも、お互いを高め合えるような関係性に変わっていったんですよね。
気がつけばお客さんも『陽樹vs鉄生』という対戦を求めてくれるようになっていたし、自分自身も彼のことをただの喧嘩相手じゃなくて、良きライバルと思えるようになってました。そこにたどり着くまでに7年くらいかかってるんですけど(笑)
そんなときに、がむしゃらプロレス前代表の矢野さんが、プロの選手vsがむしゃらプロレスの対戦の話を持ってきてくれて。さらにそこに出場するメンバーとして、陽樹と鉄生!って指名されて、いきなり因縁の2人で組まされたんです。
しかも相手は激しい試合をすることで有名な葛西純選手と竹田誠志選手というカリスマ軍団。凶器なんでもありのハードコアマッチっていうルールだったので、それはもう流血しまくりのとんでもない試合でした。
ーがむしゃらプロレスの試合でもそんなルールがあるんですか!?
いや、いつもはないですよ(笑) でも葛西選手って本当に悪のカリスマなんです。お客さんももうそれを期待してるのか、痛々しくなればなるほど盛り上がるんですよね。
結局試合自体は負けちゃったんですけど、この時にふと「鉄生がいてくれて良かったな」って思ったんです。鉄生と7年間やりあってきたからこそ強くなれたし、やり合い続けることでお互いに名も売れたし。
ーそれが後に続くRezard誕生秘話ですね?
そうですね。その試合をきっかけに「鉄生と組んでみたらもっと面白くなるんじゃないか」っていう期待すら生まれてたんです。
彼の気持ちも同じだったようで、今までいがみ合ってた2人が、「俺たちががむしゃらプロレスを叩き直す!!」っていうテーマを掲げて同じ方向に走り出すと、まさに向かうところ敵なしで。
結成した次の年にはGWA6人タッグ初代王者のベルトも獲得することができました。まぁ相変わらず会話は少ないんですけどね(笑)
一度落ちてしまえば這い上がるのみという精神で
ーでは最後に、陽樹選手のこれからの夢、または目標を教えてください!
まずは目先の目標で、さっき話に出てたGWA6人タッグ王者のベルトと、もう一つ個人で獲ってたGWAヘビー級王者のベルトを取り返す!ってところですね。実は去年2つとも一気に失ってしまって、まさに今どん底ってやつで(笑)
4年前に後楽園ホールでプロレスリングFREEDOMSの杉浦透選手とシングルマッチをさせてもらったことがあったんですけど、その時も本当に全く歯が立たなくて。
それまでは、「リングに上がればプロもアマも関係ない!」と思ってたんです。だけど蓋を開けてみればそれはとんでもなくて。やっぱりプロって凄いんだなと、身を持って思い知らされた試合でした。
でもだからといって怖気づきたくはないんです。相手はプロなんだからしょうがないとか、諦めるつもりもないんです。
気がつけば自分ももう40歳になるんですけど、体が許す限りは最前線で戦っていきたいし、プロの選手たちとももっとやり合っていきたいし、まだまだ俺は強くなれる!とさえ思ってます。
そして自分のこの踏ん張りが、誰かの明日の活力になってくれたらいいなと。それこそが俺の本望であり、理想のレスラー像ですね。
親しみやすい選手が多いからこそ応援したくなる「がむしゃらプロレス」
今回は初めての悪役レスラーへの取材ということで、ちゃんとインタビューができるのか、ただただ不安しかなかった筆者なのですが、陽樹選手とお話を始めてすぐにその心配は吹き飛びました。
いつも物々しい雰囲気な陽樹選手からは想像もできないほどの、アットホームで優しいパパな一面や、実は誰よりも仲間思いで気さくな一面。そしてそんな裏の顔を知れば知るほど生まれる親近感。
悪役でありながらも圧倒的人気な彼の秘密、ファンの人たちみんなが彼を応援したくなる理由は、ここにもあるのかもしれません。
そんな陽樹選手と他5人の選手たちで現チャンピオンへの挑戦権を賭けたトーナメント戦が、10月2日(日)に門司赤煉瓦プレイスで開催されます。
陽樹選手悲願のベルト奪還まで繋ぐことはできるのか…! これは見逃せない試合になりそうです!
試合やイベントに関しての最新情報は、「がむしゃらプロレス」公式Twitterで確認できます。
※2022年9月24日現在の情報です
(ライター・Kanae N.)