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小さなお弁当屋さんがまるでギャラリーに? 黒田征太郎のアートが彩る田代商店【北九州市門司区】

(アイキャッチ画像:「田代商店」店内レジ前の様子)

黒田征太郎さんを知っていますか?

ニューヨークなどで世界的に活動している有名なイラストレーターで、独創性と美しさで多くの人々を魅了してきました。そんな黒田さんは2009年から門司港に拠点を移して活動しています。

門司港駅の裏手にそびえ立ち、その壁一面にアートが描かれたビルを見たことがある人も多くいるのではないでしょうか。その建物こそ、黒田さんのアトリエです。

黒田征太郎さんのアトリエ

そんな黒田さんのアトリエの向かいにある小さな商店「田代商店」に黒田さんの作品が何十点も飾られているとの情報を得て、早速取材に向かいました。

通りを一本挟んだところにある田代商店

所狭しと並ぶ黒田征太郎作品 その数100点近く

今回お話を伺ったのは田代美奈子さん。先代から受け継いだという田代商店の現店主です。柔らかなお人柄が印象的です。

田代さんに案内され、早速お店の内外にある黒田さんの作品を見て回ることに。

田代さんによれば、店内外の作品を全て合わせると100点近くにも及ぶのだと言います。黒田さんが絵を持って買い物に来るようになったのがきっかけで、どんどん作品が飾られていくようになったのだとか。

小さな店内に所狭しと作品が並べられています。

田代さんは黒田さんの作品をテーマごとに分類し、それぞれにタイトルをつけています。その光景はまさにギャラリー。

レジ上に飾ってある絵は全て花が描かれており、「花畑」というタイトルがつけられています。

田代さんのお気に入りは「幸わせを運ぶ船」

田代さんのお気に入りの絵には、「幸わせを運ぶ船」というオリジナルタイトルをつけたそうです。元々縦長の冷蔵庫が置かれていた部分の壁に描かれたといいます。黒田さんが絵を描けば、どんな場所もキャンバスになってしまいます。

黒田さんが絵を描きながら「これは幸せを運ぶんだよ」とおっしゃったことから、それを絵のタイトルとして書き出して貼ったのだそう。

また、店の外壁にも作品があります。門司港をイメージして作られた作品です。

この絵が描かれた時にはテレビ局の取材も受けたそうです。田代さん自身が描いた箇所も少しあります。

きっかけは1枚の船の絵

黒田さんと田代商店との交流は「船の絵」をきっかけに始まったのだそう。田代さんは当初、黒田さんがお店に訪れた際、隣に黒田さんがアトリエを構えられることは知っていたものの、黒田さん本人とは認識していませんでした。

黒田さんだと気がついたのは1枚の船の絵をプレゼントされたことがきっかけ。元々レジ後ろに飾られていた絵本作家のポストカードをみて、黒田さんが「一緒に飾ってください」と船の絵を渡してきたのだそう。そこで初めて黒田さんだと気づいたのだと笑う田代さん。

田代さんはすぐにこの絵を気に入り、ポストカードのすぐ隣に大切に飾りました。

それをきっかけに、黒田さんは次から次にポストカードを持ってこられるようになったのだそう。初めのうちは4〜5枚を一気に持ってこられることも多く、船の絵がどんどんと溜まっていったのだとか。

たしかに船の絵が特に多いことに気がつきます。黒田さん自身は元々、米軍軍用船乗務員など船に関する仕事を経験しており、門司港でも船の絵をたくさん描いていたのだそう。そして長年門司港で暮らし、船が大好きな田代さんの好みが一致したことから、店内には船の絵が増えていきました。

お正月にも船の絵を持ってきたという黒田さん。「黄金の船」だと黒田さんが言ったので、招き猫の代わりになると店先に貼ったそうです。

変わらない店を照らすアート

田代商店はかつてタバコ屋として賑わったのだそう。しかし、門司港が港として衰退していったことがきっかけで釣具屋に。そして現在はお弁当屋として営業しています。

近くの海上関係の公務員の方を中心に、地域の人たちに愛されている田代商店。黒田さんとの交流から、メディア関係などの取材も増えていったといいます。

門司港に根付き変わらない様子と、黒田さんのアートが相まって店は独特の雰囲気に。それが世間には新しく写り、注目を浴びているのかもしれません。

気になった人はぜひ田代商店を訪れてみてください。

※2024年5月10日現在の情報です

(北九州ノコト編集部)

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